曲線と直線・直角。美しく知的で軽やかな、アルフレックスジャパンの新作家具に注目を。
デザイン・ジャーナル 2014.06.05
アルフレックスショップ東京で、今日から6月10日(火)まで行われているArflex Japan(アルフレックスジャパン)の新作発表会。優雅で軽快なソファやチェア、テーブルなど、アルフレックスブランドの新製品8アイテム他が目にできます。なかでも気になったチェアを、今回は紹介しましょう。
藤森泰司さんデザインの「RUNE(ルネ)」とドイツ生まれのコンスタンチン・グルチッチによるデザイン「DAHLEM(ダーレム)」です。

「RUNE(ルネ)」。テーブル「FIORD(フィヨルド)」も藤森さんデザイン。Photo: Courtesy of Arflex Japan

藤森泰司さん。主宰する藤森泰司アトリエでは家具デザインを中心に、建築家とのコラボレーションやインテリア・プロダクトデザインを手がけています。Photo: Courtesy of Arflex Japan
藤森さんが着想を得たのは馬蹄形のクラシカルなチェア。無垢材を丁寧に削りだし組みあわせることで生み出される、美しいフレームのラインが特色です。
背の曲線やシートのゆったりとした広さもあって、なんともいえないかけ心地。ダイニングチェアとして食事をする時間はもちろん、くつろいだ時間のための一脚となること、まちがいなし。
ダークオーク色、グレーオーク色、ビアンコオーク色......美しい表情にも注目ください。

「RUNE」154,000〜234,000円。シートのカバーを交換できるカバーリングシステムを採用。フレームとシートの色を好みでコーディネートする楽しみも。Photo: Courtesy of Arflex Japan
そして、世界中の熱い視線が寄せられているデザイナー、コンスタンチン・グルチッチのデザインによるチェア。先日のミラノサローネでももちろん、彼の新作が話題になっていました。その彼が、初めて(!)日本の家具メーカーと協働した一脚が、次の写真の「DAHLEM(ダーレム)」です。
「自分のキャリアのごく初期からモダニストの多大な影響を受けてきた」というコンスタンチン。「今回の椅子も、合理的で、自分なりに表現したモダニズムなのです。直角、つまり90°という角度を多くとりいれました。椅子を組みたてるということだけでなく、座るための空間をつくるためにもそうしています」

コンスタンチン・グルチッチ。1965年ミュンヘン生まれ。ジャスパー・モリソンの事務所を経て、1991年にコンスタンチン・グルチッチ・インダストリアルデザインを設立。

「DAHLEM(ダーレム)」。無垢材の風合いも美しい。91,000〜147,000円。Photo: Courtesy of Arflex Japan
線と面の構成という潔いフォルムがまず気になります。さらによく見ていくと、この細い部材でどうやって構造を成立させているのか、接している部材はどう接がれているのか、気になってしかたがありません。
アルフレックスジャパンの広報、保科 啓さんや長谷川恵里香さんの説明によると、たとえばわずか2mmの深さで他の部材と巧みに組み合わせることで、しっかりとした構造を実現している箇所があることを知りました。2mm!? ......同社の木工技術の粋が随所に結集されているのです。デザイナーの個性あふれるデザインを、日本の高い技術力で実現している。そのことにも感激です。

8色展開。ベージュ、グレートーンのカラーバリエーションも美しい。Photo: Courtesy of Arflex Japan
完成したチェアについて、コンスタンチンはこんな感想を述べています。
「家具職人としてキャリアをスタートした私にとって、この椅子は自分のルーツを見直すことができ、本質に立ち戻ったチェアです。大変簡素なデザインでありながら、時間をかけて細部にまでこだわりを持って精密につくられ、座る人を抱きかかえるような上質な座り心地を実現しています」

Photo: Courtesy of Arflex Japan
手にとってみると軽く、そのことにもはっとさせられます。モダニズムのデザインをイメージの源におき、いさぎよく木の素材だけで構成しながら、現代的で知的な一脚にまとめあげている手腕はさすが! コンスタンチンとアルフレックスジャパンの快挙に、思わず拍手を送りたくなりました。
藤森さんの「曲線」とコンスタンチンの「直角」。空間に躍動感やリズムを加えるたたずまいの美しさはもちろん、座っていただくことで、その魅力をより感じとっていただけるチェアです。
arflex 2014 ニューモデル発表会
6月5日(木)〜6月10日 (火)アルフレックスショップ東京
http://news.arflex.co.jp/archives/post_48.html
東京に続き、名古屋、大阪、福岡、札幌でも開催。
イタリアのリーヴァ社やグラス・イタリア社製品の新製品も披露されます。

Noriko Kawakami
ジャーナリスト
デザイン誌「AXIS」編集部を経て独立。デザイン、アートを中心に取材、執筆を行うほか、デザイン展覧会の企画、キュレーションも手がける。21_21 DESIGN SIGHTアソシエイトディレクターとして同館の展覧会企画も。
http://norikokawakami.jp
instagram: @noriko_kawakami