さまざまな関係をつなぐ"モンスター"。
赤羽美和さんのパターンデザイン。

「フィガロジャポン」8月号は北欧特集でしたね。今回のデザイン・ジャーナルではスウェーデンでも学んだデザイナーを紹介したいと思います。ストックホルム市内でのプロジェクトも進行中の赤羽美和さん。先日まで都内のギャラリーで「MÖNSTER / PATTERN 2015 ー赤羽美和のパターン大作戦ー」展が開催されていました。

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CASE gallery(渋谷区大山町)で開催された「MÖNSTER / PATTERN 2015 ー赤羽美和のパターン大作戦ー」展の様子。Photo: Isamu Uehara(続く会場写真も)

サントリー宣伝制作部や広告制作会社のサン・アドで10年ほどアートディレクター、グラフィックデザイナーとして所属した後、2010年にコンストファック(スウェーデン国立芸術工芸デザイン大学)に留学した赤羽さん。2012年に帰国した後は自身のデザインスタジオを設けてパターンデザインやグラフィックデザイン、イラストレーションで活躍中です。

今回の展覧会にはこれまでデザインしてきたパターンが勢揃い。ラグやファブリックボード等のコレクションとなっていて、それぞれ購入可能です。ちなみに展覧会名にある「MÖNSTER(モンスター)」とは、スウェーデン語で「パターン」の意味だそう!

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ファブリックボード。各25×25cm ¥3,000(税別、続く価格もすべて税別)。
問合せ先:CASE gallery https://www.facebook.com/case1823

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ラグコレクションより「aoi tori」140×200cm ¥51,000、50×80cm ¥8,000。
問合せ先:Prevell http://www.prevell.co.jp

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イルムスオリジナル「mori tori」ラグ。直径55cm、¥5,000。
問合せ先:ILLUMS http://www.illums.co.jp

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東京のヒノキ材を用いた床パネル「モリユカ09」に赤羽さんデザインを施した試作品。
問合せ先:CASE gallery https://www.facebook.com/case1823

グラフィックデザイナーの経験を生かしたテキスタイルのパターン(柄)を学んだスウェーデン。その滞在中、これまで思い描いていたパターンに対するイメージが明快になった、と語ってくれました。

「在籍した学科はTextile in the Expanded field(テキスタイル・イン・ザ・エクスパンデッド・フィールド)、拡張された分野でのテキスタイル、という名です。また私の教授はシッラ・ラムネック。ストックホルム市内でテキスタイルやデザイングッズを扱う老舗、スヴェンスクテンのデコレーションも手がける人物でした」

「この科にはグラフィックや建築、家具、ファインアートなど幅広い分野を背景に持った人々が自分の世界を広げるべく学ぼうと集まっていて、パターンメーカー、パターンデザイナーの肩書を持った人たちもたくさんいました。日本で『北欧のテキスタイル』と耳にしたときに私が思い描いていたパターンはマリメッコでしたが、パターンとひとことで言っても実に様々な表現があり、可能性があることを実感したんです」

パターンデザイン。それはテキスタイルや建築といった分野を超えて、幅広い世界に共通する大切な表現だったのです。

そのときに赤羽さんが試み、現在も用いているデザインの手法に、マスキングテープ(貼ったりはがしたりできる粘着テープ)を活用したものがあります。スウェーデンで開催される家具見本市「ストックホルム・ファニチャー・フェア2012」で初披露された「New trail」は代表作。テープをノートに貼ることからデザインが始まりました。

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「New trail」。写真は六角形のラグ(70×80cm)¥10,000。Photo: Tadakazu Sasano
問合せ先:Prevell http://www.prevell.co.jp

また先日の会場でも、その手法をより多くの人と一緒に楽しむという試みが! 丸や四角などの形にカットされた透明シートが用意されていて、そこから来場者が好きなものを選び、ギャラリーのガラス窓に貼る、というもの。展覧会会期中、日々変化しながら美しいパターンが生まれていきました。

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Photo: Miwa Akabane

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Photo: Isamu Uehara

「多くの人に参加してもらう」赤羽さんの活動には、スウェーデン中心部にある総合救急病院でのプロジェクトもあります。ホスピタルアートの公開デザインコンペでみごと選出された赤羽さんの提案は「対話」がコンセプト。病院のスタッフにもデザインに参加してもらうというものでした。

「病院に勤務する人々にも自分たちの作品として愛着をもってもらいたいと考え、希望者を募ったんです。25名ほどに参加してもらい、丸、三角、四角だけでドローイングするワークショップをしました」

こうして皆でつくりあげたドローイングから発想を広げ、赤羽さん自身がパターンを回転させてみたりリピートするなどして仕上げていったデザインは、日本でセラミックのパネルとなり、まずは病院の階段スペースに設置されています。このプロジェクトはひき続き今も進行中です。

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病院のスタッフ参加のワークショップの様子です。Photo: Miwa Akabane

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Photo: Hiroyuki Tsuneki

「参加者とパターンをつくるワークショップは今後も続けていきたい」と赤羽さん。「グラフィカルであることはもちろん、物語を生み、人と人をつなげることができるのもパターンの魅力。"ストーリーテリング・パターン"ともいえるかもしれません。その試みにさらにとりくんでいきたいと思います」

スウェーデンのホスピタルアートの今後も気になります。赤羽美和さんの活躍に注目を。

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赤羽さん。背景のラグは「TAPE」(140×200cm、¥51,000)。Photo: Isamu Uehara
ラグの問合せ先:Prevell http://www.prevell.co.jp


赤羽美和さんのホームページ。今後のワークショップ情報もこちらで
http://www.miwaakabane.com

Noriko Kawakami
ジャーナリスト

デザイン誌「AXIS」編集部を経て独立。デザイン、アートを中心に取材、執筆を行うほか、デザイン展覧会の企画、キュレーションも手がける。21_21 DESIGN SIGHTアソシエイトディレクターとして同館の展覧会企画も。

http://norikokawakami.jp
instagram: @noriko_kawakami

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