こどもとおとなで、おやつ。
「おやつどうぐてん」

「コド・モノ・コト」がスタートしたのは2005年。デザイナーやものづくりに関わる人々が中心となって、こどもと一緒の生活、日常の「もの」や「こと」を考える活動を続けています。たとえば、こどもと一緒のワークショップ、こどもとデザインについて考えるデザイナーたちの勉強会、そして展覧会も。

コド・モノ・コトの第6回目となる展覧会が、先週金曜日、神楽坂フラスコにて始まりました。その名は「おやつどうぐてん」。短い会期で、明日5月25日(火)までなのですが、初日の様子を紹介しましょう。

K1.JPG25日17時〜17時半、「おやつらくご会」も。落語家の金原亭馬吉さん出演。
Photo © Noriko Kawakami

K2.jpg会場構成を担当したのは、建築家の寺田尚樹さん。

今回の展覧会の企画は、コドモ・モノ・コトの中心メンバーでもある萩原 修さん、増田多未さんを始め、磯野梨影さん、のぐちようこさん、吉高晶子さん。会場では、34名のデザイナーが工夫をこらした「おやつのための道具」が展示、販売されています。スプーン、フォーク、お皿、コップ、エプロン、ノートなどなど。

まずは「おやつ」という題材が魅力たっぷりです。何歳になっても楽しみなのがおやつの時間、特別な気持にさせられる何かがあります。おやつ、という言葉を耳にするとき、自分のこども時代の思い出が、ふっと頭に浮かんできたりもして......。

K3.JPG参加者から、2列目左より、山口 諭さん、浅香秋也さん(ユニット「なかの」で中林鉄太郎氏と出展)、増田多未さん、のぐちようこさん、田口裕子さん。手前左より、磯野梨影さん、片山典子さん。この日、他の参加者と萩原さんにお会いできなかったのは残念。

出展作家の家族がさっそく作品を見にくるなど、天気のよい金曜日の初日会場。ほのぼのとした雰囲気の会場から、作品の一部を紹介しましょう。デザイナーたちの日常の視線、関心、こどもとの生活などが見えてきます。

K4.jpg右は石田和人さんデザインの「ポテ木」、ポテトチップスのスタンドです。左は、こどもの手でも持ちやすい「ぷちプチグラス」。よく考えられている。

K5.jpg「姪がみかんをひと房ずつきれいに並べて、もてなしてくれたことが嬉しかった。並べたり順番をつけたり、おやつを楽しむ皿」。田口裕子さんの「ならべるおさら」。

K6.jpgスプーンタイプとマドラータイプの2種類がある「こけしマドラー」。磯野梨影さんの作で、磯野さん自ら描いた顔は微妙に違います。この木の感触、こどもにも味わってほしい。

コド・モノ・コトの小冊子を手にとりました。デザイナーの考えが綴られ、ワークショップの様子も記録されています。自分のこども、友人や親戚のこどもを細かく観察しながら、「おとなの押しつけでないデザイン」をどう実現するのかを探る様子も、伝わってきます。なにより「こども一緒に考える、学ぶ」という姿勢を、いつも持っている。

またコド・モノ・コトから生まれた品はそれぞれに、素材や仕上がりの質に気が配られています。これまでの品々を見ても、小鹿田(おんた)焼、輪島の漆、旭川の木工、ガラス作家、浅草に代々続く木材屋さん。こどもにも素材、質感や手ざわりは大切。

K7.jpg片山典子さんの「おやつわくせい」。コンペイトウのようなトゲトゲを活かして斜め置もOK、斜めゼリー、プリンもつくれます。「わくせいにはまっすぐがない。むじゅうりょく。でこぼこ火山がもちやすい」と説明にありました。長崎、波佐見焼のうつわです。

K8.JPG「あんよクッキー・うまれたて」。しらいシー子さん。生まれたての赤ちゃんの足を、原寸大のクッキー型にしてしまう、というもの! 受注で職人さんが1点づつ制作します。会場では足形クッキーも販売に。こちら、しらいさんのお子さんの足形だそう。

K9.jpgおかしの大きさを計測できる、定規つきのおやつトレー。山口 諭さん作です。「娘が小さい頃、定規で大きさがわかることに大興奮だったのが印象的でした」と説明にありました。そのご本人、お嬢さんが会場に。写真のモデルになってくれて、ありがとう!

いずれも、こどもはもちろん、おとなにも嬉しいものばかり。気になる商品があった方はぜひ、コド・モノ・コト事務局に問い合わせを。これまでの展覧会をきっかけに生まれた品々は、「こぐ」で販売されています。

K10.jpg会場内ではセトキョウコさん、フルタヨウコさん、くれまつそのこさん、しらいシー子さん、横須賀雪枝さん、のぐちようこさん、谷田宏江さんの手づくりおやつも販売。

ところで、こどものための品々といえば、古今東西、デザイナーたちが様々なことを試みています。1970年代、こどもの創造性を伸ばすワークショップを始めたブルーノ・ムナーリ。エンツォ・マーリのすばらしい知育玩具、チャールズ&レイ・イームズのこども用家具......。最近では、世界の家具会社がキッズファニチャーの開発に熱心です。

デザインって、世の中のいろんな「誰か」が使う物を考えられた時間が実を結んだものであり、デザナーがいろんな「誰か」を幸せにできる行為。そしてこの展覧会に集まったデザイナーたちは、こどもたちと同じ目線で、楽しみながら、まじめに考えている。
「コド・モノ・コト」から生まれる品々、引き続き、要チェックです。

K11.jpg

K12.jpg大盛況だった土日の写真が届きました。速報です!
Photo © Yoko Noguchi

「コド・モノ・コト」 http://www.codomonocoto.jp/

Noriko Kawakami
ジャーナリスト

デザイン誌「AXIS」編集部を経て独立。デザイン、アートを中心に取材、執筆を行うほか、デザイン展覧会の企画、キュレーションも手がける。21_21 DESIGN SIGHTアソシエイトディレクターとして同館の展覧会企画も。

http://norikokawakami.jp
instagram: @noriko_kawakami

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