スペース_アンフラマンスで
肌、触れる、がテーマの展示

ひき続き今回も日本の若手クリエイターを紹介します。大阪の「space_ inframince(スペース_アンフラマンス)」で開かれている「t i l d e _ (チルダ)」展の参加作家たち。

スキンケア・ブランド「t i l d e _ 」のリリースを機に、1970年代〜1980年代生まれのデザイナーやアーティスト6名が、肌や触覚をテーマとする作品に取り組みました。

U1 kawakami1124.jpg会場風景。Photos: Courtesy of space_ inframince(会場写真すべて)

U2 kawakami1124.jpgアンフラマンスの「t i l d e _ 」。リリースされたばかりのスキンケア・ブランドで、環境や状況の変化などに応じて使い分けられます。テクスチャーと保湿度の異なる「water」と「milk」が5種ずつ用意され、「感じたままに選んで使う」がコンセプト。

U3 kawakami1124.jpgパッケージデザインはPANTALOON。商品詳細はhttp://tilde.inframince.jp/ で。

スペースからの情報と同時に、ファッション/テキスタイル・デザイナー、久米希実(のぞみ)さんからの案内も届きました。私が久米さんの作品を初めて見たのは2年前。アムステルダムのアートスクール、リートフェルトアカデミーの卒業制作展の会場です。

この「デザイン・ジャーナル」でも以前、オランダで学んだ日本人デザイナーの展覧会の記事で登場いただいたことがあります。このときの皆さんは、現在それぞれに活躍中。久米さんも、開館が来月に控え注目されているLLOYDホテル(アムステルダム)の新館、「Hotel The Exchange」のオープニング用の服を手がけているところ。

そうした久米さんが今回注目したのは、漆。

U4 kawakami1124.jpg 久米希実さん『ja patch』。ほころびの修復方法として、また装飾として気軽に楽しむための漆。5層の漆に磨きをかけたポケット、生地の柄が見える程度に漆を重ねた襟。

「漆とは、ウルシの木の表皮を傷つけ、そこに溢れる体液を集めたもの。ウルシオールの成分に人の肌はかぶれてしまいますが、漆で仕上げられる工芸品は塗りの層が重ねられることによって、しっとりと、生み出されるものは美しい肌になっていきます」

U5 kawakami1124.jpg 左から2着目、「金継ぎ服」の修復前は......。Photo: Courtesy Nozomi Kume

虫食いセーター(!)など「服のほころび」をテーマのひとつとする久米さんの試みが、「漆で服を修復」との考えに結びついたのです。以前にアムステルダムのPlatform21で目にした久米さん参加の展覧会名が「Reparing」だったことを思い出しました。

久米さんが漆の説明をしてくれました。「日本人と漆の歴史は縄文時代にさかのぼり、壊れた器は漆で継がれていたんです。こうしたプリミティブな接着の用途を服でも使えないかと試行錯誤した習作を、今回展示しています」

日本/漆を意味する「Japan」に、修繕/つぎはぎの「Patch」をあわせ、「Japatch(ジャパッチ)」。久米さんの造語ですが、あて布、または漆でつぎはぎをすること、「転じて、漆の装飾で豪華にするとの意味」だそう。さらに「Japatchism(ジャパッチズム)」は、つぎはぎ主義、漆の装飾を加えた豪華主義を示しています。

U6 kawakami1124.jpgせっかくなので、これまでの作品からも2点をご紹介。こちらは「Hole Chasing Game - Moth VS Human」。虫食いセーターの穴をうめる。虫と人との終わりなきゲーム......。Photo: Courtesy Nozomi Kume

U7 kawakami1124.jpg「FRAY」、セーターの毛を抜いていくと徐々にニットの編み目が現われていく。緊張したときや退屈なときの行動のトレース、とか。「Cast-off Skin/成長する服」のひとつで、服に現われるマイナス要素の修復を人の動作で異なる価値に置き換える方法。Photo: Courtesy Nozomi Kume

さて、今回の展示では他に5名が参加。繊細な触感、テクスチャーの違い、保湿(水分)の差といった側面に目を向けながらも、作品の切り口はさまざま......。

木材を中心としてプラスチックやセメント、紙なども扱う木工作家の西本良太さんや、写真家の高嶋清俊さん。2面体の同軸・無指向性スピーカーを製作している鶴林万平さん。

U8 kawakami1124.jpg 西本良太さん「0.3」。今回の化粧品の粘度差に着目し、「微細な差異」を木で表現。厚み0.5mmから2.0mmまで、0.3mm刻みで縁の厚みが異なる繊細なうつわたち。

U9 kawakami1124.jpg高嶋清俊さん「角度の再現 40° 50° 60° 70°」。「ピント面はレンズと感光面に対して平行にある」と、カメラの撮影角度と同一角度で写真作品を展示しています。

U10 kawakami1124.jpg鶴林万平さん(sonihouse)のスピーカー『111109_study for "tilde"』。

そして、京都市在住のアーティスト、大田高充さん。京都の「ドイツ菓子 フラウピルツ」は、触感の差を味わうお菓子での参加です。

U11 kawakami1124.jpgドイツ菓子 フラウピルツ(「無題」)。小麦粉や砂糖などの材料の配合を統一しながらも、バターの状態を変えることでつくられた触感の異なる3種のクッキー。会場で味わえます。

U12 kawakami1124.jpg大田高充さん「swimming curtain」。身体の水分、周囲の水分に目を向け、「大きなガラス窓にかけたカーテンをかけた」作品。

身体、肌、身体を包む環境や空気、触感の奥深さ。ちなみにこうした作品の軸となっているスキンケア・ブランドの名前「tilde(チルダ)」とは「〜」(波線符号)の意です。 静かに、そっと五感に訴えるこの展示、11月27日までの開催です。



「t i l d e _ 」展 11月27日まで
スペース_アンフラマンス(大阪)
http://inframince.jp/index.html

HPのある参加作家:西本良太 http://www.nishimotoryota.com
久米希実 http://kumenozomi.wordpress.com/
鶴林万平(sonihouse) http://www.sonihouse.net
ドイツ菓子フラウピルツ http://fraupilz.to/


Noriko Kawakami
ジャーナリスト

デザイン誌「AXIS」編集部を経て独立。デザイン、アートを中心に取材、執筆を行うほか、デザイン展覧会の企画、キュレーションも手がける。21_21 DESIGN SIGHTアソシエイトディレクターとして同館の展覧会企画も。

http://norikokawakami.jp
instagram: @noriko_kawakami

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