【医師監修】腰が痛いとがんの可能性があるって本当ですか?
ドクターに聞いてみよう。 2021.03.09
増富健吉
年をとるにつれ、身体の悩みは増えるばかり。人には聞きづらい&インターネットで調べてもはっきりとはよく分からない……そんな疑問に医師が答えます。
今回は、腰の悩みについて、国立がん研究センター研究所の医師、増富健吉先生に聞きました。
Q:最近腰が痛いです。腰が痛いとがんの可能性もあると聞きましたが本当ですか?
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文・増富健吉(国立がん研究センター研究所 がん幹細胞研究分野分野長)
これは、少し極端な話ではありますが、医学的にはあり得る話です。では、まず、なぜ「腰が痛いこと」と「がん」が結びつくのかを説明しようと思います。
「がん」が体のどこかにあったとしても、基本的にそれだけでは「痛み」はありません。しかし「がん」が転移したような場合には、転移した場所によっては「痛み」につながることがあります。とりわけ、がんが転移する場所が骨の場合に「痛み」が出たり、骨折したりすることがあります。骨に転移した場合、特に痛みが出やすいのが腰の骨に転移し、腰の骨が圧迫骨折した場合などが考えられます。ただし、がんといっても色々な臓器に発生するわけですが、骨に転移するまで全くなんの症状もないような事はほとんどありませんので、腰の骨に転移したことが原因の腰痛でがんが見つかったというような例は多くはありません。
腰痛がきっかけで膵臓がんが見つかったとか、乳がんの診断がついた時には既に骨に転移があったとか、あるいは、肺がんでも診断時には既に全身の骨への転移があった、というようなことは医師としては経験しますが、一般的に腰が痛いことから、いきなり「がん」を心配するようなことは極端な気がします。
腰痛でいきなりがんを心配するよりも、40代の女性が注意しておくべきことはむしろ、将来的に(とりわけ閉経後に)骨粗鬆症が原因で腰の骨に負担がかかるようなことからの腰痛などの予防対策をしておくことの方が圧倒的に健康維持には重要なポイントに思います。若い頃から、運動をして、骨に重力をかけてやることで将来的な骨粗鬆症のリスクを減らすことを意識してみるのもいいかもしれません。筋トレとかジョギング、歩き運動など結構いいかもしれません。
国立がん研究センター研究所 がん幹細胞研究分野分野長。1995年金沢大学医学部卒業。2000年医学博士。2001-2007年ハーバード大学医学部Dana-Farber癌研究所。2007年より現職。日本内科学会総合内科専門医、がん治療認定医、日本医師会認定産業医。専門は分子腫瘍学、内科学。東京医科歯科大学大学院連携教授、東京慈恵会医科大学連携大学院教授、順天堂大学大学院客員教授。
photo:istock, texte:KENKICHI MASUTOMI
増富健吉
国立がん研究センター研究所 がん幹細胞研究分野分野長。1995年金沢大学医学部卒業。2000年医学博士。2001-2007年ハーバード大学医学部Dana-Farber癌研究所。2007年より現職。日本内科学会総合内科専門医、がん治療認定医、日本医師会認定産業医。専門は分子腫瘍学、内科学。東京医科歯科大学大学院連携教授、東京慈恵会医科大学連携大学院教授、順天堂大学大学院客員教授。