寺西拓人、テラ盛りの輝きの理由。

フィガロオム 2025.11.27

地上波放送、SNS、動画配信に街角と、今年はありとあらゆる風景に寺西拓人の姿を見た。ギガを超えた「テラ」レベルの輝きを放つ人。彼の一挙手一投足に癒やされて、救われたファンも多いかもしれない。大人気アイドルグループデビューという限られた人にしか与えられない、人生の革命期を経たいまの気持ちを訊く。

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直前までインタビューに対応しながらも、俊敏かつ軽やかに撮影に対応する寺西拓人。ファーストカットで纏ったのは、1970年代のリリースからロングセラーを誇るアイコニックな時計とシンプルモダンなブレスレット。時計「ブルガリ・ブルガリ」(PG)¥2,068,000、ブレスレット「ビー・ゼロワン」(YG)、(PG)各¥907,500/以上ブルガリ(ブルガリ・ジャパン) パンツ¥170,500、ブーツ¥168,300/ともにジバンシィ by サラ・バートン(ジバンシィ ジャパン) Tシャツ/スタイリスト私物

寺西拓人は間違いなく、2025年を代表するひとりだ。彼はいま、偉業の渦の中にいる。アイドルグループtimelesz(タイムレス)のメンバーとしてリリースしたシングルやアルバムは、いずれもオリコン売上ランキングで初週1位を記録。民放テレビ局にて冠番組がスタート、全国アリーナツアーを終え、年末年始にはドーム公演を控えている。個人では3社とのCM契約、3作の舞台に出演、数多くのファッション雑誌の表紙を飾り続けている。年末には初主演映画が公開......と、華やかな話題は尽きることがない。ただ、寺西は昨年まで舞台を中心に活動している俳優のひとりだった。彼の生き方を一転させたのはNetflixの「timelesz project-AUDITI ON-」。略して「タイプロ」と呼ばれたグループの新規メンバーを決定するオーディション。各インタビューでも本人が話しているとおり「一生に一度あるかないかのチャンス」だと挑み、そして彼に変革をもたらした。そんな寺西拓人に訊く、現在と将来。気になるのはやはり怒涛の一年を経た、来年の道筋だ。彼の思い描く26年とは?

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初めてのツアーで見えた景色はまさに絶景そのもの。

「激動の一年でした」

寺西は開口一番、言葉を放った。

「特に変わったと思うのは、いままでの僕の活動にはなかった(CDリリースなどの)番宣でバラエティ番組への出演が増えたことでしょうか。デビューしたばかりで、冠番組ができるとは思っていなかったですし、ライブで地方を回ることもそうですし。周囲が本当にいろいろと変わったなあと、あらためて思います」

今年、寺西に起こった「確変」と表したくなる事態は予期せぬ多忙を引き起こした。彼は13歳で事務所に入所後、諸先輩グループのバックダンサーを経て、舞台俳優としてのキャリアを積んでいる。開演の数年前から舞台出演は決定しているため、突如グループ活動との並行生活が始まった。日本で舞台出演をしながら、ハワイと日本を往復してMV撮影に参加。福岡県で舞台出演中の中日に北海道のライブに出演するなど、移動を繰り返してきた25年。

「海外との往復は大変でしたけど、そのおかげなのか、国内の移動なら、とホッとするようになりました。今年の僕ら(timelesz)を見て、周囲のスタッフさんは『休めているのか?』とよく心配をしてくれます。意外とちゃんと休めていたんですよね。睡眠をとって、体力を回復していました」

一生に一度あるかないかのチャンスに挑み、人生が変わった

グループ内で彼を象徴する色=メンバーカラーは水色に決まった。この色を纏ってステージに立った、人生初のアリーナツアー「We're timelesz LIVE TOUR 2025 episode1〜FAM〜」。彼の瞳にはどんな景色が映ったのだろう。

「達成感は大きかったです。『タイプロ』を経てファンになってくださった方もたくさんいます。ライブという特別な空間でみなさんにお会いできたのは、とてもいい時間でした。見えた景色は......絶景でした」

来年はグループ活動に尽力する一年にすることが目標。

昨年までは少なかった仕事のひとつに、雑誌の撮影がある。フィガロジャポンには初めての登場。モデルとしてどんな風景が映ったのか。

「まず、ありがたいですよね。普段、こんなジュエリーを身に着けることも世界観ががっちりと決まったファッション撮影も、なかなか経験できないですし。限られた時間の中でプロフェッショナルのみなさんと一緒に過ごすことができて、本当に楽しいです」

彼のアイドルとしての一面は、まだリスタートしたばかり。26年はどんなベクトルを企てているのだろう。

「すべての仕事はご縁だと思っています。来年も、僕らを信用してお仕事をくださっている方々にきちんとお返しをしていきたいというのが、いちばんの気持ちです。今年は急に僕の環境が変わったせいで、イレギュラーなことが多い印象でした。もともと決まっていた僕の仕事にtimeleszの仕事が加わって、いろいろな方に迷惑をかけてしまったことが、気になっていて......。たとえば、ライブのリハーサルに僕だけが行けない。個人仕事の舞台の稽古に、僕だけが参加できない。そんなジレンマが続いても、踏ん張れている自分のバイタリティに感謝するところもあるんですけど、スタッフさんにはもっと感謝しています。彼らのサポートがなかったら絶対にできなかった。来年はもっとグループ活動にベットしていくのが、僕の希望です」

寺西は何度か「感謝」という言葉を口にしている。たった二文字の単語でも、容易い言葉ではない。それならその気持ちを感謝状にして贈ってみてはどうかと提案。

「誰に贈るんだろう......(笑)。ええ、誰かなあ......(考え込んで)。もちろんメンバーにも贈りたいですけど、正直なことを言うと、timeleszに加入する以前に、僕のことを見ていてくださったマネージャーさんです。結果的に離れることになってしまったんですけど、その方のおかげでいまの自分がいると感謝しています。ほかにも所属事務所のスタッフさんにも贈りたいですし。ひとりに絞るのは、なかなか難しいからたくさん贈りたいですよね。あ、そうだ。宝塚歌劇団の方が、お世話になった方に手書きでお礼状を書く習慣があるというのを聞いたことがあります。でも僕は全員に書けそうにはないので、手書き風印刷にします(笑)」

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働く女性を勇気づけられる存在でありたい。

今年、寺西の枠組みがさらに広がる。初主演映画『天文館探偵物語』が公開されるのだ。鹿児島県を舞台に、寺西演じる探偵の宇佐美蓮をはじめとする若者たちが、さまざまなヒューマンドラマを繰り広げる本作。「タイプロ」に挑む直前まで撮影していたと聞く。

「舞台出演には慣れているのですが、映画はまた違った表現を求められました。舞台は稽古をしてから、劇場に立つという時間軸を通して、ずっと役でいられるのが魅力。でも映像はシーンの流れで撮影するので、瞬発力が大事なんですよね。演劇とは違って、表情にすごく寄ってくるとか、ならではの魅力がありました」

もし去年の寺西ではなく、いまの寺西が演じたら、何か変わるだろうか。

「その時々でやれることは全部やってきているので、演技で変わることはありません。でも、いま鹿児島で撮影していたら、ちょっとは騒がれるかな、くらいです(笑)」

劇中には蓮と行動をともにするシングルマザーの橋口凪(大原優乃)が登場する。立場やタイムテーブルが各々に違っていても、働く女性にはまだ課題が多い。寺西も多くの女性に囲まれる存在として、働く女性たちをどう感じているのだろう。

「身近な存在でいうと母親もずっと働いていましたし、妹も出産してから、すぐに仕事復帰をしていました。今日の撮影現場でもたくさんの女性スタッフさんがいらっしゃる。女性が働く姿は僕にとって日常です。でもきっと男性には知らない苦労がある。そういう方たちを常に勇気づけられる存在でありたいと思っています」

気遣いに見えた、"アイドル"の可能性。

寺西を取材するにあたって、気になっていたことがある。それは「タイプロ」で見せた仲間への真摯な対応ぶりから滲み出ていた、優しさだ。優しい男なんていくらでもいるけれど、彼の優しさは一級品だった。画面から伝わる優しさは見る側を「ドキッ」とも「ほんわか」ともさせた。実際に会う当人はどんな男性なのだろう?

その答えは撮影現場にあった。

多忙な寺西の取材時間はとてもタイトなものだった。インタビューは撮影、着替え、メイク直しの合間......と細切れの時間を繋ぐように決行。答える側、訊く側に少なからず、やりにくさが生じた。その時に彼がこちらに示してくれた対応は、とても細やかなものだった。撮影の合間に話しかけることを詫びると、「全然。大丈夫です。よろしくお願いします」と疲れを感じさせない笑顔を見せる。衣装のイヤリングを自分で着けている際は「さすがにイヤリングを着けながらは話せなくて。どちらか(装着か取材)しかできないかも。ごめんなさい」

普段の撮影中、メイクルームへの入室は憚る。けれど時間に追われていた当日、話がしたいと彼に許諾を求めると、「遠慮せず、入ってください。(取材を)ありがとうございます」と室内に快く迎え入れてくれた。ギガより大きい単位「テラ」レベルのテラ盛りの自分自身の魅力とは何か尋ねた。それは優しさ?

「僕より優しい人なんて、いっぱいいますよ(笑)」

謙遜するけれど、撮影現場で見せた清濁併せ呑むような彼の振る舞いは、間違いなくテラ盛りの優しさだった。

"僕、人に勝てる武器をそんなに持っていないんですよ"

ああ、そうか。これだ。優しさの正体は謙遜だ。思い出すのはこの取材前に何本か見た、寺西がグループで出演するバラエティ番組。自分よりもメンバーをいつも前に押し出す態度が、「タイプロ」と同じだと気付いた。その理由をおそらく彼は自分が年長者であるからだと、くしゃっとした笑顔で答えそうだけど、謙遜由来の優しさとは誰しもが持てる成分ではない。人生の積集であり、矜持だ。

来年の彼のアイドル道は勝敗ではない、優しい答えを導き出す予感がした。

Takuto Teranishi
1994年12月31日生まれ。2008年事務所入所後、舞台を中心に活動。オーディションを経てtimeleszの一員となる。個人では初主演となる映画『天文館探偵物語』が12月5日に、声優を務めた映画『迷宮のしおり』が26年1月1日公開。

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映画『天文館探偵物語』諸江亮監督が見た、俳優・寺西拓人。

寺西拓人さんと初めてお会いしたのは映画『天文館探偵物語』の衣装合わせの時でした。僕は脚本も担当していたので、台本について「ラストの病院のシーンが腑に落ちていなくて、どうしたらいいラストに持っていけるのかわからないんですよね」と話してくださったんです。まだ撮影前なのに台本をよく読み込んでくれているんだと思いました。

実際に撮影に入ると現場をきちんと引っ張って、その場の空気を作ってくれる座長。メイク、空き時間もスタッフやキャストさんに自分から声をかけて、コミュニケーションを取っていました。だから僕も撮影に集中できました。

僕にも寺西さんから声をかけてきてくれて、港のシーンで「監督はどちらの出身ですか?」と。僕が石川県出身だと答えると「僕、金沢大好きなんですよね。地方公演で金沢が入っていると、すごくうれしくて」と。そうそう、いつもとても優しい笑顔だったことも印象的です。

映画の撮影後に「タイプロ」を受けて、寺西さんはtimeleszのメンバーとなって環境が変わられましたけど、撮影当時からいまと変わらず人間として魅力的な人でした。だからいま、人気者になったのは当然だと僕は思っています。

もしまた、俳優・寺西拓人とご一緒できるならコメディを撮ってみたいですね。撮影中の寺西さんが、演技の振り幅がとても広い人だと感じたんですよ。お芝居ってどうしても平坦になりがちなんですけど、彼は絶対になりませんでした。真面目なシーンもそのまましっかり演じられるし、そのシーンにちょっとしたニュアンスで、不自然ではない笑いを入れることができるんです。『天文館探偵物語』はそういった寺西さんの魅力が詰まった映画です。探偵モノ、ミステリーが好きな方はもちろん、人情をしっかり描いているので、何かを持ち帰ってもらえる作品になっています。ぜひ劇場でご覧ください。

Ryo Moroe
映画監督。1973年10月30日生まれ。石川県出身。20代の頃に助監督として工藤栄一、沖島勲らに師事し、人間描写や映画作りへの姿勢を学ぶ。2022年『うちのじいじは字が書けない』がキネコ国際映画祭にて短編グランプリを受賞。24年にはホラー作品『シンメトリア』が横浜国際映画祭にて公式招待作品として上映。主な映画監督作品に、『カーテンコール』(19年)ほか。26年には『シンメトリア』の劇場公開も控える。
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©2025「天文館探偵物語」製作委員会

『天文館探偵物語』
鹿児島県の繁華街にある「天文館」で、バーテンダー、探偵として働く宇佐美蓮(寺西)。この場所にはシングルマザーをはじめ、さまざまな事情を抱えた人間が集まってくる。そのうちのひとり、スリ事件を起こした橋口凪(大原優乃)に関わるうち、蓮やその仲間の山下健斗(肥後遼太郎)らは街の再開発を巡る大きな陰謀に巻き込まれてしまう。●監督・脚本/諸江亮 ●出演/寺西拓人、大原優乃、肥後遼太郎、室龍太、高田翔、原嘉孝、西岡德馬ほか 
● 2025 年、日本映画 ●80分 ●配給/アイエス・フィールド、S・D・P ●12月5日より、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国にて順次公開

フィガロジャポン1月号では、ウェブ未公開カットを掲載中。誌面もチェックして!

衣装協力:
ブルガリ・ジャパン 0120-030-142
ジバンシィ ジャパン 0120-218-025

*「フィガロジャポン」2026年1月号より抜粋

photography: Yusuke Miyazaki (Sept) styling: Mayu Yauchi  hair & makeup: Kiyoko Ninomiya text: Hisano Kobayashi  collaboration: Backgrounds Factory

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