時計とジュエリー、永遠のパートナーともなりうるこのふたつ。だからこそ、ブランドやそのモノの背景にあるストーリーに耳を傾けたい。いいモノこそ、いい物語があります。今回は、シャネルのジュエリーの話をお届けします。
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CHANEL
Ruban de Chanel
1932年発表の初のファインジュエリーコレクションでフィーチャーされた、アイコニックなリボンモチーフをモダンに再解釈。シルクのように高貴な趣を漂わせるリング「リュバン ドゥ シャネル」(WG×ダイヤモンド)¥979,000/シャネル
1932年にガブリエル シャネルが初めてのファインジュエリーコレクションを発表した時、封建的な宝石商たちは大反発。奔放なデザインも、私的なアパルトマンで開かれた展示会も、昔ながらのジュエリーの世界がやってきたこととは違っていたからだ。それでも展示会は大成功。ガブリエルシャネルのジュエリーは、宝石が存在感を主張するというより、それを身に着ける人が輝きを放つように作られていた。宝石ではなく、女性たち自身を主役にしたジュエリーの登場に、誰もが新時代の到来を感じ取っていたに違いない。
そのコレクションで取り上げられたモチーフのひとつが、リボン。
「ジュエリーが女性の指に柔らかなリボンのように結ばれる、これが私の望み。私のリボンはしなやかで自由」。
ガブリエル シャネルにとってリボンのモチーフは、束縛から解き放たれて自分らしく生きることのシンボルだったのだ。
現在によみがえった新作「リュバン ドゥ シャネル」も、まるで白いリボンを指に結んだかのよう。端を引けばふわりとほどけてしまいそうに軽やか。リボンは自由のシンボルでありながら、結びつきや絆も意味している。自由だけれど、孤独ではない─そんな生き方のエスプリが、このリングには秘められているのかもしれない。
*「フィガロジャポン」2017年10月号より抜粋
photo : SHINMEI (SEPT), stylisme : YUUKA MARUYAMA (MAKIURA OFFICE), texte : KEIKO HOMMA