時計とジュエリー、永遠のパートナーともなりうるこのふたつ。だからこそ、ブランドやそのモノの背景にあるストーリーに耳を傾けたい。いいモノこそ、いい物語があります。今回は、ブシュロンーのジュエリーの話をお届けします。
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BOUCHERON
Serpent Bohème
幸せを運ぶピンクゴールドがチャーミング。左から、「セルパンボエム」ペンダント(PG×ダイヤモンド)¥323,000、リング(PG×ダイヤモンド)¥459,000、ペンダント(PG×ピンクマザーオブパール)¥267,000/以上ブシュロン(ブシュロン クライアントサービス)
セルパンとは、フランス語で蛇のこと。苦手な人は少なくないだろうが、スネークモチーフのジュエリーは、意外にも紀元前からの定番だった。その理由は、蛇のシンボリズム。脱皮して成長するため永遠の若さの象徴とされたり、生命力の強さから癒やしの象徴とされたり、鳥のように卵から生まれるため空を飛べると信じられたり……。蛇には神秘的な意味がさまざまにある。ブシュロンの創業者、フレデリック・ブシュロンが旅に出る時妻へと贈ったのも、しなやかな蛇のネックレス。蛇は守護の象徴であり、悪いものを寄せつけないと彼は信じていたのだろう。以来このメゾンは、スネークジュエリーの名作をいくつも生み出してきた。
そのうちのひとつ「セルパンボエム」は、ドロップモチーフをあしらったアイコニックなコレクション。ゴールドビーズに囲まれたしずく形のモチーフは、実は蛇の頭部をイメージしたもの。ヴィンテージ感あふれるデザインは、1968年の誕生以来変わらない。
ジュエリーは肌に直接触れるものだからか、愛着や感傷、思い入れといった強いエモーションがこもる。意味のあるモチーフをあしらったジュエリーなら、いっそう深く心をかけて大切に愛用したくなる。さりげないデザインにシンボルのパワーを秘めた「セルパンボエム」。人々からずっと愛され、受け継がれてきたコレクションには、それだけの理由が隠されているのだ。
*「フィガロジャポン」2018年1月号より抜粋
photo : SHINMEI (SEPT), stylisme : YUUKA MARUYAMA (MAKIURA OFFICE), texte : KEIKO HOMMA