時計とジュエリー、永遠のパートナーともなりうるこのふたつ。だからこそ、ブランドやそのモノの背景にあるストーリーに耳を傾けたい。いいモノこそ、いい物語があります。今回は、ミキモトのジュエリーの話をお届けします。
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MIKIMOTO
Mikimoto Feather Collection
清楚な優雅さとはひと味違う、新感覚のあこや真珠に熱い視線。
エレガンスとフェミニニティ、そしてフォーマルなドレスアップの象徴であり続けたパールに、新しい波が打ち寄せている。アクターやクリエイター、ヒップホップのアーティストたちが、ストリートスタイルにパールを取り入れ始め、いま「パールネックレスが最高にクール」なムードが高まっているのだ。自他ともに認めるジュエリーラバー、マーク・ジェイコブスは自らミキモトのネックレスを買い求め、大のお気に入りアイテムとして毎日のファッションに取り入れている。パールはもう、結婚式など「ハレの日」のために宝石箱に眠らせておくジュエリーではなくなったのだ。
この「ミキモト フェザー コレクション」のネックレスも、いまの気分にフィットしたデザイン。羽根をかたどったシルバーのモチーフがアクセントになっていて、クラシカルというよりはスタイリッシュな雰囲気。フェザーのパーツは縦向きにしてペンダントトップとしても、横向きにして“見せるクラスプ”としても使えるし、パーツを外してしまえば、シンプルなネックレスに変身。6ミリ半から7ミリの上質な真珠がグラデーションになっているから、リッチなつやめきがデイリーな着こなしをクラスアップしてくれるのだ。
ここでちょっとお勉強。美しいあこや真珠が海からいくらでも採れると思っている人、それは間違いだということを知っておいてほしい。まず、生まれたばかりのあこや貝の小さな小さな貝を育てるのに約2年ほど。育った貝から大きく元気なものを選び抜き、ひとつひとつに手作業で“核”と呼ばれる白い玉(貝殻を丸く加工したもの)を入れ、しばらく貝を養生させてから沖合の海に移して、さらに半年から1年。ものによってはもう1年。
あこや貝は海に入れっぱなしではない。ひと月に何度も貝を引き揚げて、手作業で貝についた海藻やフジツボを掻き落とし、きれいに掃除してあげないと成長が妨げられてしまうからだ。パールを取り出すのは、光沢が最も美しくなる厳寒の冬。やはり手作業で貝を開けて、ひと粒ひと粒、丁寧に取り出していく。
パールは、海が私たちに贈ってくれた白い宝石。ミキモトのこのネックレスに使われているのは、何年もかけて大切に世話をされ、美しく育ったかけがえのないあこや真珠。そんなバックストーリーを知っていると、ただクールな最旬アイテムとしてだけでなく、心から大事にして愛用したくなるはず。
*「フィガロジャポン」2021年10月号より抜粋
photography: Ayumu Yoshida styling: Tomoko Iijima text: Keiko Homma editing: Mami Aiko