時計とジュエリー、永遠のパートナーともなりうるこのふたつ。だからこそ、ブランドやそのモノの背景にあるストーリーに耳を傾けたい。いいモノこそ、いい物語があります。今回は、ヴァシュロン・コンスタンタンの時計の話をお届けします。
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VACHERON CONSTANTIN
Égérie
腕時計「エジェリー・ムーンフェイズ」(SS×ダイヤモンド、φ37mm)¥3,168,000/ヴァシュロン・コンスタンタン
ハイエンドな時計と、オートクチュールのドレスは、実はよく似ている。どちらもため息を誘う美しさで輝き、熟練の職人技で繊細に仕立てられているのだから。スイス、ジュネーブのウォッチメゾン、ヴァシュロン・コンスタンタンの「エジェリー」も、ドレッシーな顔立ちにオートクチュールとの共通点を感じさせる時計。そのディテールを見ると、こだわりが隅々にまで行きわたっているのがわかる。
たとえばほっそりとした秒針は、刺繍針をイメージした形。文字盤を飾るのは、プリーツやパールの飾りを思わせるパターン。これらはオートクチュールにオマージュを捧げたデザインだ。
また、1時と2時の間にある小窓はムーンフェイズと呼ばれる機構。夜空をめぐる金色の月を隠す雲は、上質なマザーオブパール(真珠貝)で出来ている。艶めくリュウズはカボションカットのムーンストーンだ。
創業1755年という長い歴史を持つヴァシュロン・コンスタンタンは、淑女たちに寄り添い続けてきたメゾン。古くはルーマニア王妃エリーザベトや、リュシャプト伯爵夫人といった王侯貴族たちも、顧客名簿に名を連ねていた名門だ。そうした人々がオーダーした典雅な時計のDNAが、いまなお息づいているのが「エジェリー」。現代女性たちに似合うコンテンポラリーなスタイルで仕上げられているけれど、正統派の気品がふわりと薫り立ってくる。
このウォッチを身に着けると、背筋がピンと伸びるような気分になれるはず。プレスティージアスなメゾンのオーセンティックな逸品だから、そうしたオーラが備わっているのだ。
*「フィガロジャポン」2021年4月号より抜粋
photo : SHINMEI (SEPT), stylisme : YUUKA MARUYAMA (MAKIURA OFFICE), texte : KEIKO HOMMA