時計とジュエリー、永遠のパートナーともなりうるこのふたつ。だからこそ、ブランドやそのモノの背景にあるストーリーに耳を傾けたい。いいモノこそ、いい物語があります。今回は、ヴァン クリーフ&アーペルのジュエリーの話をお届けします。
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VAN CLEEF & ARPELS
Lucky Spring
「ラッキー スプリング」ネックレス¥2,019,600、クリップ¥858,000(ともに18KRG×カーネリアン×オニキス×ホワイト マザーオブパール)/ともにヴァン クリーフ&アーペル(ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク)
世の中を暗い影が覆うと、花柄が流行するという。たとえばアメリカ同時多発テロ事件やイラク戦争が起きた時、ファッションシーンでは色とりどりのフラワープリントが大流行。パンデミックが起きたいまも、明るいフラワーパターンの服や、花をかたどったアクセサリーが人気を集めている。
人々の心を明るく浮き立たせ、勇気づけてくれる花々。ヴァン クリーフ&アーペルから登場した「ラッキー スプリング」コレクションも、身に着けているだけで胸に希望が湧いてくるような新作。プラムやスズラン、てんとう虫をあしらったチャーミングなデザインは、ヴァン クリーフ&アーペルならでは。アーカイブにも、スズランのブローチを描いた1927年のデザイン画、小さな赤いてんとう虫のチャームを描いた1933年のデザイン画が残されているから、メゾンの伝統を受け継ぐモチーフたちなのだ。
デザインに秘められた意味も魅力的。プラムの花は春の、そしてスズランはエレガンスのシンボル。てんとう虫は、手や服にとまると幸運が訪れるというラッキーモチーフだ。古くからの言い伝えによれば、てんとう虫が手や服にとまったら、それをつかまえたり追い払ったりしてはいけないのだという。てんとう虫が羽を休め、飛び立つままにしておくと、その人に幸せをもたらしてくれるのだそう。
愛を伝え、心をときめかせるハッピーなジュエリーを生み出し続けてきたヴァン クリーフ&アーペル。新しい気持ちで新しい春を祝うのに、「ラッキースプリング」コレクションはこれ以上ないほどにぴったりだ。
*「フィガロジャポン」2021年5月号より抜粋
photo : SHINMEI (SEPT), stylisme : YUUKA MARUYAMA (MAKIURA OFFICE), texte : KEIKO HOMMA