時計とジュエリー、永遠のパートナーともなりうるこのふたつ。だからこそ、ブランドやそのモノの背景にあるストーリーに耳を傾けたい。いいモノこそ、いい物語があります。今回は、ティファニーのジュエリーの話をお届けします。
file : 055
TIFFANY & CO.
Tiffany Knot
なめらかさとシャープさなど、相反する要素を巧みに組み合わせた「ティファニー ノット」。上から、リング(YG×ダイヤモンド)¥797,500、バングル(YG)¥1,045,000、リング(YG)¥302,500/以上ティファニー(ティファニー・アンド・カンパニー・ジャパン・インク)
モダンな造形から伝わる、
大都市ニューヨークのエネルギー。
「そりゃダイヤも悪くないわ。でも、40にもならないのにダイヤなんか身につけるのってみっともないことよ。ダイヤなんて、ほんとうに年をとった人がつけないと、ぴったりしないもんよ」
こう言い切るのは小説『ティファニーで朝食を』の主人公、ホリー・ゴライトリー。シワだらけで骨ばって、白髪頭にならないと似合わないのよダイヤなんて、とさんざん言っておきながら、最後にはこうつぶやく。「あたし、そんなになるまで待てないわ!」(トルーマン・カポーティ著、龍口直太郎訳、新潮社刊)
ダイヤモンドが愛しくて、そんなになるまで待てない女性たちのために、ティファニーはスマートでみずみずしいジュエリーをさまざまに生み出している。その最新作が「ティファニー ノット」コレクション。創業の地ニューヨークに敬意を表し、この大都市をシンボライズする建築のエレメント、チェーンリンクフェンスからインスピレーションを得てデザインしたのだという。どこまでも発展していく大都市を支える、無機質でインダストリアルな素材。それがティファニーの手にかかると、こんなにもエレガントでスタイリッシュなジュエリーになるのだからおもしろい。
---fadeinpager---
なめらかで動きのあるブレスレットやリングのシルエットは、まるでワイヤーをくるくると曲げたよう。先端は尖っていて、そのシャープさが全体をクールに引き締める。シンプルなゴールドのラインに、きゅっと結んだノットがアクセントを添えている。
それこそが、強くしなやかに大都会で生きてゆくニューヨーカーたちのイメージ。自由奔放なホリー・ゴライトリーのような娘にもよく似合うモダンなダイヤモンドジュエリーだ。
そして品質にこだわり抜くティファニーは、このコレクションにもとびきり上質なダイヤモンドをあしらっている。ティファニーには宝石鑑定のエキスパートたちがいて、ダイヤモンドを厳しく選び抜いているのだ。光を受けて白く輝く無数のダイヤモンドは、サクセスを夢見て懸命に生きる若きニューヨーカーたちを思わせる。
映画『ティファニーで朝食を』で、ホリーがギターをつま弾きながら歌う「ムーン・リバー」。その甘く切ないメロディにも「ティファニー ノット」はリンクしているようだ。自我が強くて前向きなだけがニューヨーカーじゃない。心の中では大切な誰かとの絆を求めていて、時にセンチメンタルな気持ちになるのだから。
デザイナーとクラフトマン、ダイヤモンドのエキスパートたちが力を注いだコレクション。
photography: Ayumu Yoshida styling: Tomoko Iijima text: Keiko Homma editing: Mami Aiko