時計とジュエリー、永遠のパートナーともなりうるこのふたつ。だからこそ、ブランドやそのモノの背景にあるストーリーに耳を傾けたい。いいモノこそ、いい物語があります。今回は、ディオール ファイン ジュエリーのジュエリーの話をお届けします。
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DIOR
COLOR DIOR
ゴールドを贅沢に使ったネックレスは、手に取るととてもしなやか。肌にフィットする感触が心地よく、装いのアクセントカラーにもなってくれる。同じ色使いのイヤリングも揃う。新作「カラー ディオール」ネックレス(YG、ダイヤモンド、ラッカー)¥10,500,000/ディオール ファイン ジュエリー(クリスチャン ディオール)
ゴールドに新しいカラーを与えたラッカーの果てしない可能性。
ディオール ファイン ジュエリーから登場した新作「カラー ディオール」ネックレスは、イエローゴールドのリンクに12色のラッカーとダイヤモンドをあしらったデザイン。リンクを形づくっているのは、メゾンのシグネチャーでもあるグラフィカルなCDのレター。ハッピーな色づかいが何とも楽しげだ。
デザインを手がけたのは、ディオール ファイン ジュエリーのアーティスティック ディレクター、ヴィクトワール・ドゥ・カステラーヌ。彼女が今回フィーチャーしたのは、ペインターの手作業によるカラーラッカー。虹の7色のほか、ネオンを思わせるエレクトリックブルーとウォーターミントグリーン、シックなフレンチロイヤルブルーやグラスグリーン、パルマ(スミレ色)などの凝った配色を選んでいるのも特徴的。
「ある日思ったのです。ゴールドにもっと色が欲しいのに、イエロー、ピンク、ホワイトの3色だけでは残念すぎると。そこでラッカーやネオンカラーを取り入れ始めたら、無限に思える可能性が出始め、新たなる色合いが生まれました。ゴールドはフューシャピンクにさえもなり得ます。私からすれば、ラッカーはゴールドの4番めの色なのです」とヴィクトワール。宝石では出せない色でゴールドを彩って、これまでにないフェスティブなムードを演出したという。
それに加えてこのネックレスには、うれしい細工も施されている。「カラー ディオール」の長さは62センチ。コンバーチブルな仕立てによって、それを42センチのショートネックレスとブレスレットとに分けることができる。ウエアの襟の形によってロングネックレスとして着けたり、ショートネックレスにチェンジしたり。手元にアクセントが欲しい時はブレスレットに。ジュエリーを宝石箱にしまいっぱなしにしないで思いきり楽しんで、というヴィクトワールからのメッセージがこんなところに表れているのだ。
それにしてもこのネックレスは、熟練のクラフトマンシップによる仕立てがさすが。留め金になっているリンクをひねって回転させると簡単に開くようになっているのだが、いったん閉じてしまえば留め金のありかがわからなくなる。金具を目立たなくして、デザインの連続性を妨げないようにするための巧妙な配慮。オートクチュールドレスに多くのお針子たちが関わっているように、美しいジュエリーの背後にも、優れた職人たちの情熱がひそんでいるのだ。
*「フィガロジャポン」2022年12月号より抜粋
photography: Ayumu Yoshida styling: Tomoko Iijima text: Keiko Homma editing: Mami Aiko