時計とジュエリー、永遠のパートナーともなりうるこのふたつ。だからこそ、ブランドやそのモノの背景にあるストーリーに耳を傾けたい。いいモノこそ、いい物語があります。今回は、ピアジェのジュエリーの話をお届けします。
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PIAGET
POSSESSION
アイコニックなパレス装飾をあしらい、シルクを思わせる光沢で輝く最新作。繊細なデザインながらも存在感があり、ニュアンスのある手元を印象的に実現してくれる。ブレスレット「ポセション」(PG×ダイヤモンド)¥1,232,000/ピアジェ(ピアジェコンタクトセンター)
シンプルなデザインに秘められた冴え渡る職人技、伝統の美。
ピアジェの人気コレクション「ポセション」に新作ブレスレットが仲間入り。最もアイコニックなリングと同じように、このブレスレットもセンターのモチーフがくるくると軽やかに回転する。モチーフにあしらわれたダイヤモンドは、ふたつの半球状のゴールドで囲む「ポセションセッティング」で留められていて、存在感十分。温かみのあるピンクゴールドを素材としているので、肌の色にしっくりなじんでコーディネートしやすいのがうれしい。
このブレスレットの味わいを深めているのは「パレス装飾」と呼ばれるピアジェ独自の加工のテクニック。不規則に刻まれたゴールドのラインが、モダンなデザインに優しい温もりをプラスしている。パレス装飾は、古くから懐中時計や腕時計を飾ってきたギヨシェ彫りの技法にインスパイアされて、1961年に開発されたという。ピアジェのゴージャスなブレスレットウォッチは、表面にこの装飾が施されることでドラマティックな美しさが増し、多くの女性たちの心を惹きつけてきたのだ。そんなメゾンのシグネチャーでもある装飾が「ポセション」にもあしらわれることで、華やかな艶めきが一段とアップしたように感じられる。
さらに、熟練の職人技が必要とされる回転するモチーフも見逃せないポイント。モチーフを小気味よいほどスムースに回転させるには、小さなゴールドのパーツを高い精度で仕立て、誤差なく組み上げなければならないという。スイス屈指のウォッチメゾンとして長い歴史を持つピアジェだからこそ、パレス装飾や回転するモチーフといった、優れたジュエリーメイキングが可能なのだ。
表情豊かな「ポセション」ブレスレットを実際に身に着けてみると、回転するモチーフの部分に何度も指で触れて、くるくると回る感触を何気なく楽しんでしまう。その回転はぎくしゃくしていなくて、とてもなめらか。どこまでも自由で、束縛されていない。「ポセション」がポジティブなエネルギーを感じさせるのは、やはりこの動きがあるからだろう。運命を切り拓き、夢を実現させるための前向きなパワーを、このブレスレットは秘めているのだ。
メゾンが創業以来ずっと掲げてきたモットーは「常に必要以上によいものを作ること」なのだそう。身に着ける人の想像を超えたよいものを作り出すのが、ピアジェ。職人たちの誇りと情熱が、この洗練されたブレスレットからは確かに伝わってくる。
*「フィガロジャポン」2023年8月号より抜粋
photography: Ayumu Yoshida styling: Tomoko Iijima text: Keiko Homma editing: Mami Aiko