時計とジュエリー、永遠のパートナーともなりうるこのふたつ。だからこそ、ブランドやそのモノの背景にあるストーリーに耳を傾けたい。いいモノこそ、いい物語があります。今回は、ヴァン クリーフ&アーペルのジュエリーの話をお届けします。
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VAN CLEEF & ARPELS
FLEURETTE
いつまでも咲き誇る白い花冠を、胸元に優しく輝かせて。
ヴァン クリーフ&アーペルの人気コレクション、清楚なフラワーモチーフの「フルーレット」に新作が仲間入り。このコレクションでは初めてとなる、ローズゴールドとダイヤモンドの組み合わせが登場した。甘く艶めくローズゴールドと、ダイヤモンドの輝きとが織りなす優雅なアンサンブルが眩しいほどだ。
粒選りのラウンドブリリアントカットのダイヤモンドをあしらった「フルーレット」のデザインは、白い花冠を思わせる愛らしさが魅力。モチーフをひとつだけあしらったペンダントと、モチーフが5つ輝くネックレスは、どちらも胸元にフェミニンなニュアンスを添えてくれる。ハイジュエリーやエンゲージメントリングに使われる石と同じ最高品質のダイヤモンドを使用しているので、あふれるように豊かな光が楽しめるのがうれしい。
さらによく見てみると、ダイヤモンドはただフラットに並べたのではなく、センターのダイヤモンドはほんの少しだけ高く、周囲のダイヤモンドはやや角度をつけてセットされている。光の反射が肌の上に広がるように工夫された留め方になっているのだ。
そのセッティングも、V字形のプロング(爪)とビーズで花びらの形を表現しながら、高度な技でダイヤモンド同士を隙間なく密集させて留めている。シンプルでさりげなく着けられるけれど、実はとても手が込んでいて細部にまで注意が払われた、ラグジュアリーなデザインになっていることに気付かされる。
自然の美しさにオマージュを捧げるヴァン クリーフ&アーペルは、これまでにも花をモチーフにしたハイジュエリーを数多くデザイン。貴石に彩られた花冠のモチーフが誕生したのは、アールデコスタイルがパリを席巻した1920年代のこと。その後も繰り返しさまざまなバリエーションが生み出され、いまなおモダンに再解釈され続けて、メゾンの大切なアイコンのひとつになっている。7石のダイヤモンドで形作られた花冠のモチーフが「フルーレット」コレクションと名づけられたのは2000年。そんな歴史の中で、今回初のローズゴールドモデルが加わったのだという。
花々の美しさは心を明るくし、幸福感をもたらすもの。だからこそ、このメゾンは花をかたどったジュエリーをいくつも手がけてきたのだろう。「フルーレット」コレクションは胸元で咲き誇るだけでなく、永遠に枯れない花を心の中にも咲かせてくれるはず。
*「フィガロジャポン」2024年2月号より抜粋
photography: Ayumu Yoshida styling: Tomoko Iijima text: Keiko Homma editing: Mami Aiko