時計とジュエリー、永遠のパートナーともなりうるこのふたつ。だからこそ、ブランドやそのモノの背景にあるストーリーに耳を傾けたい。いいモノにある、いい物語を語る連載「いいモノ語り」。
今回は、シルバーウェアの名門クリストフルから登場したばかりの新作「バビロン」コレクションの話をお届けします。
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CHRISTOFLE
BABYLONE
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パリらしさへのこだわりに満ちた洗練のスターリングシルバー。
シルバーウェアの名門クリストフルから、新作「バビロン」コレクションが登場。ボールドな編み込みパターンをあしらったバングルブレスレットは、まるで身に着ける彫刻のよう。こうした大ぶりのバングルブレスレットはカフ(袖口)とも呼ばれ、手元に効かせるスパイシーなアクセントとして注目されるアイテム。ブリオッシュを思わせるふっくらしたパターンがチャーミングなこのカフは、上質なシルバーの魅力を存分に味わわせてくれる。
コレクション名「バビロン」の由来は、パリのセーヌ川左岸に延びるシックな通りの名前。パリの人々が大切にする"自分らしさ"がここバビロン通りにあると考えて、このネーミングになったのだそう。ジュエリーだけでなく、タンブラーやボウル、フラワーベース、磁器プレートなど、日常生活のさまざまなシーンを彩るダイニングとホームデコレーションアイテムが揃っていて、もちろんすべてに編み込みパターンが印象的にあしらわれている。
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デザインを手がけたのは、オレリー・ビダーマン。パリを代表するファインジュエリーの旗手だ。美術コレクターの両親のもとに生まれて美術史と宝石学を学び、いまではジュエリーだけでなくさまざまな分野で才能を発揮。各国のセレブリティの間でも人気の高いオレリーのデザインは、愛らしくありながらも大人びたエレガンスを感じさせ、いつまでも色褪せることのないタイムレスな美しさを備えているのが特徴だ。
クリストフルの創業は1830年。メゾンを興したシャルル・クリストフルは、もともとはジュエラーとして身を立てた人物だったという。彼は後に貴金属製品の製造に携わって、王侯や皇帝たちからテーブルウェアやカトラリーの注文を受けるまでに。メゾンが国際的に高い地位を確立した現在もなおシルバージュエリーを作り続けているのには、こんな歴史が関わっているのだ。
これまで著名なインダストリアルデザイナーのアンドレ・プットマンや、佐藤オオキのnendoなど、選りすぐりのクリエイターたちとコラボレーションしてきたクリストフル。今回、オレリーとの協働を果たしたのは、彼女がパリを体現するデザインを可能にする特別なジュエリーデザイナーだったからだろう。モダンだけれどどこか古典的でもあり、時に温かく、時にクールな「バビロン」には、パリの小粋なエッセンスがぎゅっと詰まっている。
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*「フィガロジャポン」2024年10月号より抜粋
photography: Ayumu Yoshida styling: Tomoko Iijima text: Keiko Homma editing: Mami Aiko