話題のアクション映画『アトミック・ブロンド』で主演・プロデューサーを務めるシャーリーズ・セロンに、映画ジャーナリスト立田敦子さんがインタビュー!
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連続殺人鬼を演じた『モンスター』(2003年)でオスカー女優となったシャーリーズ・セロン。アカデミー賞で10部門にノミネート、6部門で受賞したジョージ・ミラー監督の『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(15年)では、女戦士フュリオサ役をスキンヘッドで演じるという女優魂を見せつけ話題となった。
映画界で“革命”を起こし続けるシャーリーズが、プロデューサー&主演する新作が『アトミック・ブロンド』だ。東西冷戦末期のベルリンに送り込まれた、英国の秘密情報部MI6の敏腕エージェント、ロレーン・ブロートンに仕かけられた非情な罠と死闘を描く新感覚スパイ映画にかけた想いを、“史上最強の女スパイ”を演じたシャーリーズに直撃!
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——『アトミック・ブロンド』には、主演だけでなくプロデューサーとしても参加していますね。
「プロデューサーのひとりであるエリック・ギターは、原作のグラフィックノベル『The Coldest City』が出版される前に見つけてきたの。この原作に可能性を感じて、私の製作会社デンバー&デリラ社も早い段階でこのプロジェクトに参加することになったの。女優としては、脚本ができてからオファーを受け、出演することもあるけれど、プロデューサーとして関わるときには、基本的に雑誌や新聞、小説などさまざまなところからアイデアを発掘して、一から作り上げるようにしているの。この作品も脚本家を雇って、撮影に至るまで4年間かけて準備を進めてきたのよ」
——小説や実話ではなく、グラフィックノベルというジャンルの原作からインスパイアされた部分もありますか?
「グラフィックノベルも小説などと同じようにひとつのストーリーとして捉えているわ。もちろん、ビジュアルのインパクトがあるのでそれを強調するっていうところはあるかもしれないけど。今回の場合は、私たちが特に気に入ったのは、主人公ロレーン・ブロートンをはじめとするキャラクターなの。そこから想像力をフル活用して膨らませたの。映画として生かすために、自分たちの物語を作っていったの。だから、最終的にストーリーは原作と離れたものとなったわ」
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——ロレーン・ブロートンのどこにいちばん惹かれたのですか?
「男ばかりの世界でそのルールの中で生きている女性で、仕事、つまりスパイとして優秀であること。葛藤を抱えて、悩み苦しんでもいる深みのあるキャラクターだと思ったわ。情報員という、女性にとって特にキツイ世界にいるわけだけど、仕事が好きで、自分が選んだ世界にも納得しているのよ」
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——ブロンドに皮のコート。スタイリッシュで美しいだけでなく、ロレーンは本当にタフな女性。この役を作り上げるために、参考にしたのはどんなキャラクターですか?
「『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のフュリオサを演じたときもそうだけど、タフなヒロインを演じる時、私がいつもインスパイアされているのは、『エイリアン』のリプリーよ。勢いがあって、迫力があって。シガニー・ウィーバーが演じたあのタフなヒロインは、私にとってのハードルのようなものなの。
今回は、スパイとしての能力が優れている女性を演じたかった。皮肉なことにそうなると参考にできるのは、ほとんどが男性のキャラクターなの。闘うタフなヒロインがいたとしても、そこには必ず母親であることにアイデンティティがあるとか、そういう要素が入れこまれている。むしろ、男性のスパイと同じルールで闘っているヒロインを演じたかったのよ。アクション映画でこれだけ男性が楽しそうにいろんなことをやっているのに、女性が同じようにできないのは不公平だと思うわ」
——激しいアクションシーンのため、相当トレーニングを積んだとか。
「クランクインの2カ月半前からトレーニングを始め、撮影中もずっと続けていた。キツかったわ。でも、ファイトシーンに真実味を持たせたかったし、女にはできないとも言われたくなかった。私は、基本的にアクション映画を観るのが大好きだしね。女性はアクション映画をあまり観ないと思っている人がいるけれど、それは思い込みよ」
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——男優が自由にアクションを演じていていいな、と思うのはどんな作品ですか?
「たくさんあるけど、『ダイ・ハード』は大ファンよ。『アトミック・ブロンド』のデヴィッド・リーチが監督した『ジョン・ウィック』も大好きだわ。リーチ監督とは、アクションについての議論もたくさんしたわ。男性のキャラクターだったら、こういうことするけれど、女性に置き換えたら……というようにね」
——デヴィッド・リーチ監督は、『ジョン・ウィック』とこの作品の成功でいまは大人気の監督になりました。次作は『デッドプール2』。彼のどんな部分を買って、監督を依頼したのですか。
「彼は、スタントマンとして長いキャリアがあり、いろいろな映画でセカンド・ユニットの監督もやっている。そういう経験を生かしてほしかったし、実際に、自分でアクションができる監督だから、具体的な指示がとても参考になったわ。それに、経験値だけでなく、情熱もひと一倍あって素晴らしいの」
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——あなたも女優としても、プロデューサーとしても仕事にかける情熱はひと一倍ありますね。
「幸運なことに私はものすごく強い女性に育てられたの。自分の幸せの価値は、自分が信じることで決まるのだと教えられた。だから、もしいまのすべてを失っても、また違うことに価値や喜びを見いだせると思う。だから、情熱をかけられるものを見つけたら、とにかく徹底的にやる。それが成功への近道だと思うわ」
『アトミック・ブロンド』ベルリンプレミアにて、共演のソフィア・ブテラと。©2017 COLDEST CITY, LLC.ALL RIGHTS RESERVED.
●監督/デヴィッド・リーチ
●出演/シャーリーズ・セロン、ジェームズ・マカヴォイ、ソフィア・ブテラ、ジョン・グッドマン、トビー・ジョーンズ
●2017年、アメリカ映画
●115分
●配給/KADOKAWA
●TOHOシネマズ スカラ座ほか全国にて公開中
http://atomic-blonde.jp/
texte : ATSUKO TATSUTA