ファッションに命を懸ける「悪役」を演じて、柴咲コウが思ったこと。

インタビュー 2021.06.01

名作アニメーション『101匹わんちゃん』に登場するディズニー屈指のヴィラン(悪役)、クルエラ。その誕生の秘密を『ラ・ラ・ランド』のエマ・ストーン主演で描く話題の映画がいよいよ登場! 生まれながらに白と黒のツートンカラーという奇抜な髪のために世間から冷たい視線を浴び、最愛の母を亡くして天涯孤独の身になった少女エステラ。やがてヴィヴィアン・ウェストウッドらが活躍し、パンクの嵐が吹き荒れる70年代のロンドンで、ファッションデザイナーへの夢を追いかける少女は、運命の出会いによってエネルギッシュなヴィラン、クルエラへと変貌を遂げる。そんな主人公の日本版声優を担ったのは柴咲コウ。俳優、ミュージシャンとして活躍するほか、自らアパレルブランドを率いる彼女に、『クルエラ』での声の演技やファッション観、コロナ禍での想いを聞いた。

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過去を蔑ろにしていると、いまの変化のおもしろさにも気付けません

――もともと『101匹わんちゃん』や、グレン・クローズがクルエラを演じた『101』、『102』をはじめ、ディズニー映画をご覧になっていましたか?

『101匹わんちゃん』の存在は知っていた、というぐらいでした。今回の『クルエラ』は、声の出演が決まってから見せていただきました。「ダルメシアンのコートってどうなの!?」とは思いましたけれど(笑)、クルエラは白と黒の髪型もファッションもエッジが効いていますよね。また、ファンタジックで非日常的な体験を味わえるディズニー映画は、同時に現実の厳しさをも教えてくれる。その影の部分を担ってくれるのがヴィランで、主人公や物語が生きるために欠かせない存在だと思います。『クルエラ』は、そんな悪役にもそれぞれに背景があり、善悪で割り切れない部分をきっちり描いているところに惹かれました。

 

※トリミングNG※『クルエラ』サブ2画像.jpg

劇中で観られるクルエラのファッションをはじめ、古着屋や百貨店、クチュリエの工房など、ファッション好きにはたまらないシーンが満載。

――冒頭、エステラの誕生シーンで最初に流れる柴咲さんのナレーションはパンチが効いていて、これから始まる物語に期待を抱かせるものでした。

今回、声だけという点で、お芝居をする時以上に勉強になりました。完成している作品の中に、日本語として演技を落とし込んでいく作業は、自分のマイナスがとても目立つ気がして。すでに実写でお芝居されているし、BGMも流れている中で、声だけでどう映像にプラスしてゆくのか、難しさを感じましたね。それでも物語が進むにつれ、落ち込んでいる時はこれくらい、楽しい時はこれくらい、もうちょっと明るくてもいいのかな……など、振り幅も徐々に蓄積されていって。最終的に、冒頭はじめ、オフの声で語る部分は最後に吹替ました。

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――才能と反骨心にあふれるクルエラのどんな部分に共感しましたか。

クルエラは、自分をアピールすること、話題作りに長けています。ただ、幼少の頃から満たされない思いを感じながら、それを吐き出すこともできない、そして受け止めてくれる人もいないという葛藤を抱えています。そういうところに、自分自身の若い頃を振り返って共感しました。私も、ちょうど映画に出演し始めた頃の20年前は、もっと反骨心を持っていたじゃないかと。いまは40歳という、20年前の倍の年齢になって、相手に合わせたり、空気を読みすぎたり……。社会に生きる時間が長くなると、バランスがとれた方が効率的だしとか、ちょっといい子になろうとしていたというか、都合寄りになってきていて「カッコ悪!」と気付けた良いきっかけでしたね。

――70年代のパンキッシュなブームと伝統的なロンドンがせめぎ合う舞台からは、どんなインスピレーションを受けましたか。

伝統とアヴァンギャルド、クルエラの髪のように両極あるから、幅があって面白いんです。ファッションも、ファッション以外の表現でも、いままでの背景や文化、過去があり、それらと反発して変化していくことの楽しさがある。だから過去を蔑ろにすると、変化にも気付けない。時代を経て裕福になる人もいれば、取り残される人もいる。まさに現代も同じだなと、そんなことも考えさせられましたね。

――映画には舞台に因んで、70年代のヒットナンバーが散りばめられています。また柴咲さんは今回、エンディング曲も歌われています。

当時の曲はどれもリアルタイムで聴いたものではありませんが、やはり高揚しますよね。音楽は必要だなって。成長したクルエラが相棒ふたりと盗みを働くシーンでも音楽の効果でワクワクしちゃいました。エンディング曲の、強烈な「闇を支配する」という歌詞はその通りなんだけれど、物悲しさもあふれていて、白と黒を持ち合わせたクルエラをよく表現していると感じました。

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衣装を手がけたのは、2度のアカデミー衣装デザイン賞を誇るジェニー・ビーヴァン。『英国王のスピーチ』から『マッドマックス 怒りのデス・ロード』まで、幅広いジャンルを手がけてきた彼女がスクリーンに解き放つファッションに注目したい。

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――アパレルブランド「ミヴァコンス」を手がけて3年経った柴咲さんにとってファッションとは? またデザイナーという夢に突き進むクルエラに共感する点、ここは違うと感じた点はありますか?

今回、視覚的な喜びがファッションに不可欠だということを痛感し、とにかくおしゃれしたくなりました。コロナ禍で家にいる時間が多いので、ラクなのがいちばんと、メリハリのない服装になりがちでしたけど、服を着替えるのは誰かに見られるためでなく、自分自身を楽しませるため。いまの状況下で今日の気分を表現する服に着替えるというのは、ある種とても贅沢なこと。しばらく赤を着ていなかったけれど、クルエラがヴィンテージをリメイクして着る赤いドレスを見て、やっぱりファイトが湧いて。せっかくならもっとファッションを楽しまなきゃ損だなと思いました。

一方で着飾るために何かを犠牲にしていることが楽しいことじゃなくなってきているから、いくら可愛いと思っても、そこの背景が見えづらい、もしくは自分とはマッチしないと思うものなら買わないようにしています。ミヴァコンスに関して言えば、きらびやかなファッションとは相反するものがあって、さまざまな矛盾を抱えつつもアパレル業界から逃げずに、地球環境への課題解決に繋がるような製品を作り出していきたくて。その姿勢は変わらないんですが、今回、もう少し遊び心があってもいいなと思うようになって。今年の秋冬のコレクションでは差し色を施したりしていて、そういったヒントもいただきました。

――いま、コロナの先に、どんなことを楽しみにしていますか。

まだ発表はできませんが、3年越しでやっているアパレル以外の製品企画がリリースされることになっていて、それが楽しみです。そのほか、本来は今月と来月に葉加瀬太郎さんのフェスに参加する予定だったんですが、今月は中止になり、来月も怪しいところ。そういう中で、ミュージシャンたちはみなどうすればいいのかと頭を抱えています。でも終わりがないわけではないから、再開できる時が来たら、いつでも動けるよう準備しておきたい。そのためには、どういう支度ができるのか。考えることはたくさんあります。

ssk_0002.jpgポンチョ ¥129,800、ブラウス¥107,800、スカート¥162,800、ネクタイ¥41,800、ベルト¥98,000(全てShiatzy Chen)、右手中指指輪 指先から¥154,000、¥145,200、¥132,000(全て oeau)

 

『クルエラ』
●監督/クレイグ・ギレスビー
●出演/エマ・ストーン、エマ・トンプソン、マーク・ストロングほか
●吹き替え/柴咲コウ、塩田朋子、花江夏樹ほか
●2021年、アメリカ映画
●134分
●全国にて、ディズニープラス プレミアアクセスで公開中
https://disneyplus.disney.co.jp
© 2020 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.
●問い合わせ先:
oeau
Harumi Showroom
東京都渋谷区渋谷2-3-2 藤本ビル4F
TEL 03-3433-5395


Shiatzy Chen international limited
東京都千代田区有楽町1-8-1 ザ・ペニンシュラ東京1F
TEL 03-6212-2878

photos : DAISUKE YAMADA, interview et texte : REIKO KUBO, coiffure et maquillage: NOBORU TOMIZAWA, stylisme: KEI SHIBATA(tsujimanagement)

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