中谷美紀×原田マハ、決断する女性リーダーのリアル?

インタビュー 2021.09.24

原田マハによる同名ベストセラー小説を、田中圭と中谷美紀のW主演で映画化した『総理の夫』。日本初の女性総理となった凛子と、“ファーストジェントルマン”となった夫、日和の物語がコミカルに描かれる。この映画を通してふたりが感じた理想のリーダー像や、働く女性とパートナーとの関係について聞いた。

210916_a-236_min.jpg写真右から:「中谷さんが凛子さんを演じてくださって、この小説を書いてよかったと思いました」(原田マハ)、「男性にもぜひご覧いただきたいですね」(中谷美紀)。

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――『総理の夫』の凛子役のオファーを受けたときの中谷さんの心境から教えてください。

中谷 これをやらなくてはこの仕事をしている意味がない、というくらい本当にありがたい役だと思いました。私は育児と仕事の両立はできないと思ったので早くに子どもを産まない選択をしたんですね。周りには両立している方もいらっしゃいますが、スタッフの方でご出産を機に退かれたり、ご負担のないポジションに移られたりするのも見てきました。働く女性が子どもを産んで育てやすい社会ではないことに忸怩たる思いをずっと抱えてきましたが、なんとかしようと声高に叫んできたわけでもない。だから、(首相在任中に妊娠する)凛子という役は演じる醍醐味を感じさせてくれる作品になるのではないかと思いました。

原田 総理大臣は男性だという印象が日本ではまだまだ強いので、私は悔しいことにファンタジーとしてこの小説を書いたんです。でも美紀さんが演じることでグッと現実的になりましたよね。私の妄想キャスティングでは最初から凛子は美紀さんだったので、決まった時はとてもうれしかったですね。妄想をしてみるもんだな、って(笑)。

中谷 とても光栄です。

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組閣時に着ている黒いドレスなどエレガントな装いも見どころのひとつ。「とても素敵なものを用意していただきました。ひとつだけお話したのは、イブニングドレスにジャケットを合わせるのはやめましょう、ということです」(中谷)。「私もいつもニュースなどで見ておかしいな、と思っていたので胸のすく思いがしました」(原田)。

――今回の役を演じるにあたって、参考にした女性のリーダーはいますか?

中谷 最も勉強になったのはニュージーランドの首相、ジャシンダ・アーダーンでしょうか。事実婚をしているパートナーの方との子どもを、現職で出産なさっていますよね。

原田 30代の若さで首相に就任して、コロナ対策も素晴らしかった。

中谷 スウェット姿でご自宅からメッセージを送ったりもして。

原田 そうそう、「子どもを寝かしつけたところなんです」って。かわいらしかった。

中谷 ほかにはヨーロッパでは、EUの委員長が女性で7人の子どもの母親ですし、ECB(欧州中央銀行)の代表も女性です。身近なところではドイツのメルケル首相がコロナ政策に関して科学的な見地からきちんと対策をとられて、国民にもご自分の言葉で直接語りかけていました。エッセンシャルワーカーだけではなく、芸術に携わる者に対してもご配慮があったことが、すごく感動的で……。この話をしていると涙が出てきてしまいます。

210916_c-126_min.jpgトップス¥179,300、パンツ¥418,000/ジョルジオ アルマーニ(ジョルジオ アルマーニ ジャパン) イヤリング¥24,200/ケンゴ クマ プラス マユ(ヴァンドームヤマダ) ブレスレット(右)¥16,500、(左)¥17,600/ともにヴァンドームブティック(ヴァンドームブティック 伊勢丹新宿店) パンプス/スタイリスト私物

原田 国民に寄り添いながら、とても落ち着いた話しぶりでしたね。

中谷 そうなんです。常にアンガーマネージメントがしっかりしていて、物事を語る時にヒステリックにならないということを、メルケルさんをはじめとする女性リーダーから学ばせてもらいました。原田さんが書かれた本も理路整然としていて、凛子もいわゆる激情型のリーダーではないですよね。
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210916_DS2_2398_S.jpg鳥類研究所で働く鳥オタクであり、日本初の“ファーストジェントルマン”になった、凛子の夫・日和を演じるのは田中圭。「撮影中はいつも圭くんが日和として隣にいてくれて、とても楽な気持ちでいられました」と中谷。

――夫の日和が自然に凛子をサポートしている姿も印象的でした。おふたりが考える、パートナーとの理想の関係についてもお聞かせください。

中谷 私はお互いに自立していて、かつ自由を許容できる関係であることを望みます。ただ何かあったら頼れるし、本当のことを話せる相手であってほしい。原田さんはいかがですか?

原田 おっしゃる通りですね。美紀さんのお書きになったエッセイ(『オーストリア滞在記』幻冬舎刊)を読むと、実際にそういうご夫婦であると拝察いたしますけれども(笑)。エッセイに登場する夫ぎみは少年のようなところもあって、美紀さんが愛情を持って書かれていることが伝わってくるんですよね。おふたりの暮らしには毎日学びがあって、とても清々しい。素敵なご夫婦だな、と。

中谷 ぼちぼちやっています(笑)。

原田 何かあったら頼れる相手というのは、日和の人物像を造形する時に意識していたことのひとつでもありました。普段、言葉を尽くして支えて、愛してくれる人ではないけれど、本当にしんどい時には彼に打ち明けることによって気づきを得たり、心の拠りどころとすることができる。女性が活躍する社会で、彼のようなナイスサポーターは増えてくるんじゃないでしょうか。

210916_b-250_min.jpg『カフーを待ちわびて』『キネマの神様』など、映画化された小説も多数。
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――映画のエンディングでは、凛子の“決断”が描かれていますね。

原田 男性だから、女性だから……というふうには言わないほうがいい時代ですが、案外思い切った決断をするのはやっぱり女性なんじゃないかと思いますね。気分転換をするのも、現実を受け止めて次のステップにいくのもうまい気がします。以前、沖縄の離島に取材に行った時に会った合唱団のおばあちゃんたちも、おじいさんが亡くなってからさらに元気になって「人生これからよ!」って(笑)。私もフレキシブルに、軽やかに生きていきたいと思っています。国際結婚をしてオーストリアに移住された美紀さんの選択も、とても軽やかで素敵。語学は堪能でいらっしゃるけど、最初はドイツ語を話せなかったそうですね。

中谷 そうなんです。最初は英語で話していましたが、いまは簡単なことはドイツ語で、難しいことは英語に逃げています(笑)。どちらもたいして話せるわけではないんですけれど。

原田 母国語ではないところに移住するのは大きな決断だと思います。

中谷 私は何をするにしても、どちらかというとリスクをとるほうなのかな、と。

原田 安全なほうではなくて、リスキーだけどおもしろそうなほうにいくのね。

中谷 はい(笑)。すべてその延長線上です。

210916_DKP_0289_S.jpg凛子が和服で正月の挨拶に行くシーンで着用しているのは、中谷さん自前の着物。

中谷美紀

1976年、東京都生まれ。ビオラ奏者のティロ・フェヒナーと結婚し、現在は日本とオーストリアに拠点を持つ。近年の出演作に、ドラマ『病室で念仏を唱えないでください』、Netflixオリジナル『FOLLOWERS』など。初のエッセイ『オーストリア滞在記』(幻冬舎文庫刊)が好評発売中。インスタグラム: @mikinakatanioffiziell

原田マハ

1962年、東京都生まれ。キュレーターとして活躍した後、小説家、エッセイストとして執筆活動を開始。近著に『キネマの神様 ディレクターズ・カット』(文藝春秋刊)、『リボルバー』(幻冬舎刊)などがある。

 

『総理の夫』

●原作/原田マハ「総理の夫 First Gentleman」(実業之日本社文庫)
●監督/河合勇人
●出演/中谷美紀、田中圭、貫地谷しほり、工藤阿須賀、松井愛莉ほか
●2021年、日本映画
●121分
●配給/東映、日活
●2021年9月23日(祝)より、全国ロードショー
© 2021「総理の夫」製作委員会
https://first-gentleman.jp
●問い合わせ先:
ジョルジオ アルマーニ ジャパンtel: 03-6274-7070
ヴァンドームヤマダ tel: 03-3470-4061
ヴァンドームブティック 伊勢丹新宿店 tel: 03-3351-3521

interview & text: Mika Hosoya photography: Akinori Ito (aosora) Miki Nakatani /styling: Miho Okabe hair & makeup: Eri Shimoda manicuring: Michiko Kawamura(Nail House Akiko)  Maha harada / hair & makeup: Mizuho(Vitamins) 

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