クリエイターの言葉 「"本当の自分"の大切さを教えてくれる」『シラノ』ヒロインが語る普遍性とは。

インタビュー 2022.03.22

真実の愛の意味を、この作品で学んだ。

ヘイリー・ベネット|俳優

イギリスの若き名匠ジョー・ライト監督による新作は、17世紀フランスが舞台のラブストーリー『シラノ・ド・ベルジュラック』を映画化した『シラノ』だ。2018年、ロンドンでエリカ・シュミット脚本のミュージカル『シラノ』を観たライト監督は、この舞台のキャストごと映像化に踏み切った。ヒロインのロクサーヌを演じたのは、歌唱力にも定評のある新進俳優ヘイリー・ベネットである。

「このロマンティックな物語が時代を超えて愛されている理由は、愛を受け入れて表現することの難しさという誰もが共感できる内容だから。個人的には、真実の愛の意味を教えてもらいましたね」

シラノ役は、ミュージカルと同様にピーター・ディンクレイジ。現場で同時収録された歌唱シーンの素晴らしさは特筆すべきだろう。

「ミュージカルシーンでは、技術的な歌の上手さではなく、むしろ有機的なエッセンスというか、キャラクターの魂が曲に込められることが大事。だからパーフェクトな歌を目指すのではなく、声の重さや息遣い、時には短所と思われるような未熟さを表現すること、感情を歌にのせることに重点をおいたの。それによって、観客は心を動かされる。(音楽を手がけた)ザ・ナショナルのマット・バーニンガーの曲は渇望に満ちて、心の内側にそっと触れるような親密な感じがある。彼の曲のDNAだと思うし、その感覚が好きですね」

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詩人であり、優れた剣術の腕前を持つ騎士シラノ・ド・ベルジュラックは、仲間からの人望は厚いが外見に自信が持てず、想いを寄せるロクサーヌに告白できない。そんなシラノに、ロクサーヌはシラノの軍隊仲間であるクリスチャンへの恋心を打ち明け、仲立ちを依頼する。クリスチャンに代わり、シラノが書いた手紙にロクサーヌは思いを深めていくが……。19世紀に描かれたベストセラーの映画化。●『シラノ』は2月25日よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国にて公開。

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17世紀の物語だが、いまを生きる人々に訴えかける人物像を作りたかったという。これまで描かれてきた受け身の女性像とは違い、ヘイリーが演じたロクサーヌは意思を持った強い女性となった。

「勇敢な女性であるロクサーヌを演じるため、歴史上の人物や私がいまインスパイアされている女性を参考にしました。具体的な名前は秘密だけれど、男社会に甘んじることなく自分で声を上げることのできる人たち。でもこの作品の最も現代的な部分は、自分を表現することの大切さが描かれていることだと思います。いまの世代はソーシャルメディアでも匿名で、なかなか本当の姿を現さないでしょ。人には本当の自分と外向きの自分がいるものだけれど、親しい人にさえ本当の自分を見せることが難しくなってきている。撮影現場でも、このテーマについてみんなで議論したわ。ロクサーヌは“なりすまし”の被害者だったのかな、と冗談を言い合ったりして」

コロナ禍での製作の思わぬ副産物はスタッフの団結だったという。

「新しい世の中で、どう動いたらいいのか。みんな手探りで撮影を続けました。大変だったけれど、これまでにない素敵な繋がりが生まれた。その繋がりの豊かさが観客にも伝わったらうれしいですね」

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HALEY BENNETT/ヘイリー・ベネット
1988年、アメリカ・フロリダ州生まれ。2007年デビュー。『Swallow/ スワロウ』(19年)や『ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌』(20年)などで、歌手としても活動。19年、ジョー・ライト監督との間に1児を出産。

*「フィガロジャポン」2022年4月号より抜粋

text: Atsuko Tatsuta

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