クリエイターの言葉 「自分の弱さをさらけ出して、他者に正直であることが必要」カミラ・カベロが紡ぐ歌の魅力。

インタビュー 2024.08.07

本物の人間関係を築くため、自分の弱さをさらけ出す。

カミラ・カベロ|シンガー

カリビアン文化が放つ情熱的かつ濃密な空気と、現代のポップ性を華麗にミックスした曲を手がけ、ヒットチャートを席巻しているカミラ・カベロ。主演を務めたミュージカル映画『シンデレラ』(2021年)で俳優デビューを果たしたことでも、彼女の魅力は幅広い世代に認知され始めている。

「演技から多くのことを学びました。演技の最高地点とは、演じていることを忘れている状態。役の感情を実体験しているように感じなければならない。そんな演技の経験は音楽にもプラスとなり、今回のアルバム制作に大きな影響を与えてくれました。ネガティブな感情を含め、自分の実体験を楽曲にしようと思い立ったんです」

3作目のソロアルバム『ファミリア』は、さまざまな経験を通じて生まれた感情を、ラテンをベースにした音で表現する。

「私たちの文化では、自分ひとりで生きていくことに対してあまりにも美化しすぎていると思うのです。だからこのアルバムで、相互依存について称賛したかった。いま、私が肉体や精神的に幸せを感じていられるのは、素晴らしい仲間がいて、結束の固いコミュニティや熱い友情があるからこそ。そのためには自分の弱さをさらけ出して、他者に正直であることが必要です。つまり、包み隠さない本物の人間関係を築くことに焦点を置くことが私の人生にとって重要であり、このアルバムで伝えたいことでした」

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開放的なビートにのせて人生における英知を表現したという「バン・バン feat. エド・シーラン」、ポップパンク界で注目されるシンガーソングライターであるウィローが参加した「サイコフリーク feat. ウィロー」などを収録。爽快でポップなイメージを放つ英語の曲と、妖艶な雰囲気を纏ったスペイン語の曲など、言語によって変化する彼女のボーカルにも注目したい。●『ファミリア』(ソニー・ミュージックレーベルズ)¥2,640

自身の真実、そして支えてくれる人々への感謝の思いをより鮮明に表現するため、スペイン語の曲も多く収録しているという本作。しかし、このアルバムでは言葉や概念を超え、いまを幸福に過ごせることへの喜びを噛み締めることができるはずだ。

「実は、アルバムを制作する時、リスナーのことを意識することはあまりありません。自分本位と思われるかもしれませんが、包み隠さず人生や想像力を音楽に投影させることで、表現者としての可能性を広げたい。今回もエド・シーランをはじめ多くの人たちとコラボレーションし、いかに最高の音楽を生み出すかを追求した結果、ソングライターとして成長でき、また自分自身にリアルであることの大切さをあらためて知りました。私はラテン系を代表していること、女性であること、また、生きる答えを模索している若者であることを誇らしく感じています。そんなふうに生まれた音楽が、もし社会的にインパクトを与えるのならば、とてもありがたい話です」

自分の音楽を、人々が自身を投影して聴いてくれる。そんな喜びを力にして、世界観を広げていくカミラの今後が見逃せない。

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CAMILA CABELLO/カミラ・カベロ
1997年生まれ、キューバ・ハバナ出身。2013年に、フィフス・ハーモニーのメンバーとしてデビューし、17年よりソロ活動を開始。翌年発表した初アルバム『カミラ』は全米チャート初登場1位を獲得し、瞬く間に世界中にその名を知らしめた。

*「フィガロジャポン」2022年7月号より抜粋

text: Takahisa Matsunaga

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