ツイッター発！ 全米で話題を呼んだ破天荒な女子旅が映画に。

デトロイトのウェイトレス兼ストリッパーのゾラ（テイラー・ペイジ）は、偶然知り合ったダンサーのステファニ（ライリー・キーオ）に誘われ、フロリダへ“出稼ぎ”の旅に出るが、それは悪夢の始まりだった……。アザイア “ゾラ” キングが2015年に自らの体験を投稿した148のツイートをもとに、気鋭の女性監督ジャニクサ・ブラヴォーによって映画化された『Zola ゾラ』は、北米ではA24が配給し、大ヒットした話題作だ。日本公開に当たって、主演のテイラー・ペイジとライリー・キーオがインタビューに応じてくれた。

――アザイア・キングのツイッターは当時、話題になったそうですが、このプロジェクトのどこに興味を持ったのですか？

テイラー　当時はTwitterをほとんど使っていなかったので、リアルタイムでは見てなかったのだけれど、後から読んで「うわあ、びっくり！」という感じだった。どこに興味を持ったのかといえば、とにかくパワフルなキャラクターね。私は、一般的に俗っぽいものや下品といわれているものの中にある神聖さや善良さ、人間的なものに惹かれるのだけれど、このゾラは、いわゆる“ビッチ”で、自分のことをちゃんと理解していて、軸がしっかりある人間。いままでに見たことがないおもしろいキャラクターだと思ったの。それに、このストーリー自体が、私たちが生きているいまの時代をよく表している。

ライリー　私はリアルタイムでとてもおもしろく読んでいました。これまでに聞いたこともないような話だったから。なので、このツイートが映画になると聞いた時には、“天才的なアイデア！”と思いました。当時は、ツイートをストーリーに紡いでいくということがまだ流行っていなかったので、すごく革新的で斬新だと思いました。ゾラは書き手として素晴らしい。SNS時代になったことで、いままで自分の物語を世に出すことができなかった人たちがちゃんと語り、表現するチャンス得られるようになったことはとても素晴らしいことだと思います。

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――テイラーは“ビッチ”という形容詞を使われましたが、そういった人物を演じることは怖くなかったですか？

テイラー　確かに、観客がどのようにこのキャラクターや物語を受け取るのだろう、と緊張していました。でもひとりの俳優としては、いいストーリーや真実を語りたいというのがいつもモットーとしてあるんです。真実というのは、必ずしも善良で美しいもの、つまり都合よくパッケージングされたものとは限らない。だから、自分の人生とはまるで違っていたとしても、さまざまな“色”をした真実を語りたかった。それに、私自身だって、彼女たちのように生活が逼迫したり、にっちもさっちもいかないような状況に直面したこともありますから。だから、映画が出来上がって、好意的に受け取れられたことをうれしく思っていますよ。何も知らないハタチの女の子が旅をする危なっかしさに共感してもらえたり、セックスワーカーに対しても、理解のある視点が生まれたら私としては、うれしい。私たちは、お互いの中に人間性を見出していかなきゃいけないでしょう？ 私たちはみんな同じように迷える子羊のような存在なのですから。

ライリー　まず、ステファニは、ものすごいインパクトのあるやんちゃな女の子なので、これはギリギリまでやらなきゃ、と思いましたね。監督のジャニクサ（・ブラヴォー）とは、キャラクターをどう読み解いていくかという方向性は完全に一致していましたし。ジャニクサは、ステレオタイプに対してとても批判的で、だからこそ、この映画は奇を衒った破天荒な作品ではなく、ちゃんと意義のある深い作品になったんだと思います。それにテイラーとも相性がよかった。私は、映画の撮影に入ってもすぐに共演者と打ち解けたりすることはできないほうなんですけど、テイラーとはすぐ友達になれました。友達役を演じるにしても、敵同士を演じるにしても、仲良しになれるとお互いの助けになるんです。

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――ジャニクサ・ブラヴォー監督に絶大な信頼を寄せていたんですね？

ライリー　ジャニクサじゃなかったら、この役は演じなかったですね。ともすると、ステレオタイプのキャラクターにもなりかねない役ですから。ジャニクサはとてもスマートなんです。

――この作品は、ゾラとステファニによる“バディムービー”ともいえますが、撮影中のおふたりはどんな風に過ごしていたんですか？

テイラー　ライリーも先程言っていましたが、私たちはとても仲良くなって、宿泊していたホテルでお互いの部屋を行き来して、お泊まり会みたいなのをしょっちゅうやっていたんです。一緒にTVを観たり、ふざけあったり、人生について真面目に語りあったりしました。ライリーはフロリダで幼少期を過ごしたこともあったので友人や親戚がいて、彼女のフロリダの体験談はとてもためになりました。ライリーの演技は目を見張るものがあります。撮影現場では、それをひたすら憧れながら眺めていましたね。私は、彼女を世界でも有数の素晴らしい女優だと思っています。

監督もすごく楽しい現場にしてくれたので、私としてはこんなに優秀でピカイチな共演陣とやっていくには、自分のレベルアップを図らないといけないな、という思いで臨みました。でもみんなが真に迫る演技をやっているので、私としてはすごく演じやすかったです。この撮影当時は27歳から28歳になるあたりだったんですけど、辛い時期だったんです。友人の家を泊まり歩いたりして、ある意味、ゾラと似ていた。なので、そういった自分の体験を役に反映した部分も大きいですね。

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――青春映画であると当時に、女性の強さや連帯について語っている映画ですが、この作品の中の男性キャラクターについてはどんな風に解釈していますか？ ステファニのポン引きのような存在の“X”（コールマン・ドミンゴ）、なんでも言うなりのステファニの恋人デレク（ニコラス・ブラウン）は対称的な男性ですね。

テイラー　このふたりの男性は、ある種の社会の意識不足を体現しているのではないでしょうか。デレクは純粋にステファニを愛しているけれど、いっぽうXは女性を支配するのが当然という男性権威的な考えを持った人。女性に対する敬意がない典型的なミソジニストです。でも、そういう男性のネガティブなキャラクターを、私たちが一方的に攻撃すればいいかといえば、そうでもない。同じような無神経で不寛容な部分が私たち自身にもあるんです。なので、彼らの姿を見て、自分自身を振り返れればいいというか、ひとつの教訓になればいいと思っています。

ライリー　これらの男性キャラクターが何を象徴して、どういった意義がこの物語においてあるのか、監督の意見を聞いてみたいですね。私自身が演じたステファニというキャラクターを通して言うならば、このふたりの男性との相関関係は興味深いと思っています。Xは彼女の体を、生活と人生を支配していて、いっぽうでステファニはデレクという男性を完全に支配している。つまり、ステファニはかなり偽善者なんです。私は、彼女のそういうところもおもしろいと思っています。