誰かの心の支えになる曲を書きたい。
ナイル・ホーラン|歌手
英国の人気オーディション番組出演をきっかけに、ワン・ダイレクションのメンバーとしてデビュー。日本を含む世界各地で社会現象になるほどの人気を誇り、現在はソロとして活動しているナイル・ホーラン。最近はその経験を生かし、米国のオーディション番組「The Voice」のコーチに就任し、的確かつ物腰柔らかなアドバイスやエールを送り、話題を呼んでいる。
「番組への出演は、本当に興味深いものになったよ。デビュー以前の自分を思い出したりして、不思議な郷愁を味わったこともあるけれど、番組内ではオーディション参加者のバックグラウンドなどの情報は届かずに、スタジオで感じたことだけでどういう人なのかを判断しなくてはならない。そこで彼らはキャラクターや魅力、どういう人間になりたいのかがはっきり伝わるパフォーマンスをしていた。あの姿を見ていい刺激になったことは確かだね」
3年ぶりとなるアルバム『ザ・ショー』は、新型コロナによるロックダウンを経て、ミュージシャンとして、人として、ナイルが何を考え進化したのかがサウンドだけでも伝わってくる内容となった。
「ロックダウン中にニュースを観ていたら、人生は映画の『トゥルーマン・ショー』みたいだと思うようになった。やがて、現実で起こった不思議な出来事を掘り下げたところに見える景色を表現してみたいと思ったんだ。それが今回のアルバム制作の原動力になった」
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アルバムは、愛する人と一緒にこの世界を過ごすことの喜び、そして愛を信じる気持ちを壮大なコーラスを交えて綴った先行シングル「ヘヴン」や、人生どんなことが起こってもきっと大丈夫というメッセージを込めたポップチューン「メルトダウン」など、リスナーを優しく包むラブソングが占めている。
「誰かが不安な様子だと冷静にいるようにアドバイスできるけれど、いざ自分自身がその当事者になると恐れで心が押しつぶされそうになる。そんな状況でも大丈夫と支えたい気持ちを、どの楽曲においても表現できたような気がする」
アルバムを携えて、8月にはサマーソニック出演が決定した。来日に向けてどんな気持ちだろう。
「日本は世界で最も好きな場所。ここで暮らす人たちから僕の音楽に対する敬意を感じられるからね。今回はフェスという空間になるから、どんな空気が生まれるのか楽しみだよ」
フェス出演の翌月には30代を迎えるナイル。その先に見据える希望と愛にあふれる世界をアルバムやライブで体現していくだろう。
1993年、アイルランド生まれ。2010年にワン・ダイレクションのメンバーとしてデビューし、16年よりソロ活動をスタート。8月19日(東京)と8月20日(大阪)にSUMMER SONIC 2023への出演が決定している。
*「フィガロジャポン」2023年8月号より抜粋
photography: Zackery Michael text: Takahisa Matsunaga