落書きは呼吸と同じ。それなくしては生きられない!
ミスター・ドゥードゥル|アーティスト
「幼い頃から、落書きするのが大好きだった。ゲームやアニメなどのビジュアルメディアに囲まれていると自然と創作意欲が湧いてきてね。教科書から、家の家具、地元のファストフード店の壁までいたるところに落書きしていたんだ」
彼の名前、ミスター・ドゥードゥルは、"落書き"を意味する。洋服でも家具でも壁でも、すべてをキャンバスにするアーティスト、ミスター・ドゥードゥルは、マーカーを迷いなく動かし、下書きなしの即興で作品を完成させる。彼は、幼少期から熱中していたドゥードゥルがきっかけで、その楽しさに目覚め、美大へと進学。まるで余白を埋め尽くすようにくるくると曲がりくねった曲線で表現されるチャーミングなキャラクターなど、彼が描き出すハッピーがあふれる世界"ドゥードゥル・ランド"は、SNSで人気に火がついた。
これまでフェンディやプーマなどとタッグを組み、注目を集めてきたミスター・ドゥードゥルは、「共同作業はいつでも刺激的だし、制限や課題があるからこそ新しさが生まれることもある」と語る。そして今回、東京での展覧会では、日本を代表するビデオゲーム、パックマンとコラボレーションした作品を発表。
「パックマンは、僕が子どもの頃に夢中になったゲームのひとつで、僕なりにアレンジするのは本当に楽しかった。この展覧会は、幼かった僕にパックマンがくれた"絵が描きたい!"というひらめきと衝動から生まれた。シンプルでミニマム、でも強いスタイルがあるパックマンに僕の落書きを融合させて、よりダイナミックに仕上げていくのもおもしろかった。バンダイナムコエンターテインメントは僕の方向性を尊重してくれて、僕らしいキャラクターや迷路をもとに広げていったけど、大変だったのはアイデアの絞り込みだった」
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着想源に満ちあふれたミスター・ドゥードゥルの日々。いまは、今年生まれたばかりの長男と過ごす時間もヒントになるとか。さらに風呂場のくもった鏡や、移動中の飛行機で乗客皆が寝静まっている時......いつだってドゥードゥルするチャンスはあるんだよ、と笑う。その描きたい気持ちを行動に移すかどうかなんだ、とも。
「僕にとってドゥードゥルは呼吸と同じくらい大切で、それなしでは生きていけない。描いているとゾーンに入る時があって、アイデアが止めどなく湧いてくるんだ。その流れに身を任せ、ただ手を動かして作品を描き上げる感覚も好きだし、信じられないほど満ち足りた気持ちになる。僕はドゥードゥルに限らず、すべての人に何かに没頭し創作することに時間を費やすことを勧めたいね」
1994年、イギリス生まれ。幼少期からドゥードゥルに熱中し、いまの作風を確立。SNSのフォロワー数は295万人。2022年には2年を費やし、天井から床までをドゥードゥルで埋め尽した自邸を完成させ、話題に。
*「フィガロジャポン」2024年1月号より抜粋
photography: Mr Doodle Studio text : Tomoko Kawakami