クリエイターの言葉 NY出身の ポップアーティストC・ポラチェックが創る世界とは？

予測不可能を楽しみたい！ 時に矛盾さえも！

キャロライン・ポラチェック｜ミュージシャン

2023年は、フジロックフェスティバルにてソロとして初来日し、圧巻のパフォーマンスを見せ、SNSでも大きな話題を呼んだキャロライン・ポラチェック。2023年11月には日本でも単独公演を開催し、よりスケールを増したステージで観客を魅了した。

「今回は、できる限りミニマムなセットのなかで、いかにダイナミックに見せるか？ということにこだわった。ライブ会場の空間で予測不可能な雰囲気と現実をミックスして表現してみたかったの」

最新アルバムは、オペラやエレクトロ、さらにフラメンコやロックなど、楽曲ごとに異なる音色を奏でる。音楽に対する彼女の真摯な姿勢や知性を感じさせながらも、その奥に潜む狂気（欲望）も漂わせた魅力的な仕上がりだ。この作品は、第66回グラミー賞、最優秀アルバム技術賞（クラシック以外）にノミネートされている。

「ツアーを回りながらこのアルバムを作成したからか、全体のコンセプトを持たずに、曲それぞれが孤立していて断片的だった。でも、完成後にあらためて聴くと、パンデミックの影響で感じた自分でコントロールできない状況を表現できていたのだと気付いた。その後、世界各地でライブをするごとに、やはり一つひとつの楽曲が異なる輝きを放った集合体であることに気付いたの。それが、ツアーをやってみて何よりの収穫になったし、次の作品へのインスパイアに繋がったと思う」

---fadeinpager---

先日は、新曲「Dang」を発表。彼女の音楽的アイデアをコラージュさせた「集合体」のようなアヴァンギャルドポップに。

「実はこの楽曲は、アルバムを作る前から存在していて（笑）。ロックダウンの時に、自分のスキルを上げたくて、すべて自分で音楽を作ってみようという試みから生まれたの。プリミティブな衝動を描いた内容になったと感じている」

また、彼女は音楽だけでなく、ライブの演出やファッションアルバムのジャケットなど、総合芸術のように全体のクリエイティブをディレクションしている。

「音楽はもちろん、ミュージックビデオやアートワークを含め、それらが繋がることで広がる大きな世界を視野に入れて制作している。時には矛盾が起こることもあるけど、それも含めてどんな相乗効果が生まれるのかな？と思いながら作るのっておもしろいよね」

今後のビジョンを聞くと「決めてしまったら未来が限定されるような気がするから想像しない」と微笑んだ彼女。その瞳の奥には、私たちには想像できない世界が広がっていた。

＊「フィガロジャポン」2024年2月号より抜粋