『ストレンジャー・ザン・パラダイス』『コーヒー&シガレッツ』『ブロークン・フラワーズ』などの作品で各界からの熱いリスペクトを集めつつも、孤高のアウトサイダーを貫き続ける巨匠ジム・ジャームッシュ監督。そんな彼が手掛けた4年ぶりの最新作『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』は、現代を生きる吸血鬼たちのラブストーリー。本作で、何世紀も生き続けてきた吸血鬼・イヴを演じたティルダ・スウィントンに、作品の見どころや撮影にまつわるエピソードを伺った。
―"21世紀の吸血鬼"と、伝説的な吸血鬼との大きな違いは?
ティルダ・スウィントン(以下、T):「私(イヴ)は、3000歳なの。だから進化してる。もう人は殺さない。人を殺すのはもう若い頃に卒業したの。今は汚れていない血を飲んで生きている。世の中の血は汚染されてしまっているからね。それできれいな血を手に入れるようになった。誰も殺さずにね。私たちは奥の深い倫理的な吸血鬼なの。吸血鬼はお互いの行動を見て、自分がどうするか決めるの。人間とは違うのよ。3000年前の吸血鬼たちがどう思ってたかは分からないけれど」
―吸血鬼たちは、自己破滅的な人間たちとその歴史を、アウトサイダーの眼差しで見つめていますね。
T:「自分が3000歳って想像してみて。彼女には怖いものは何もないの。絶望することもない。すべてを乗り越えたから。中世やスペイン異端審問所、第一次 第二次世界大戦、大虐殺。彼女にとって怖いものとは、何があっても生き残るもの。人間とは限らない。彼女は人間が絶滅に近づいていると気づいてる。世界は終わらずにね。人間のいない世界が訪れるかも」
―不死身であるイヴのキャラクターについて、どのように解釈しましたか?
T:「イヴは不死身だけど、それは逆に寿命のある人間をテーマにしている気がするの。死なない人間の映画というのは、実は自然を撮っているのと同じなのかもしれない。彼女は本当に人間が好きで、共感してるんだと思うわ。正しいとは思っていないけど、人間を愛してるの。人間の本質が好きで、自然な存在だと思っているのね」
―撮影にまつわる思い出やエピソードは?
T:「私にとっては特別な撮影だったわ。当時、家族が病気で、生死の境をさまよっていたの。ちょうど撮影期間中にね。だから不死を描いた映画はまさにタイムリーだった。さらには愛や自然もテーマになっている。それから生き残るということや社会もね。重いかもしれないけど、つらい時期なのにこの映画の撮影があって毎朝うれしかったわ。この役を演じていることがね。3000年という時間から考えると、小さなことに思えたの。生きられたら素晴らしいってね」
『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』
【STORY】
吸血鬼のアダム(トム・ヒドルストン)はギターをはじめ弦楽器なら何でも自在に弾きこなすミュージシャンとしてアン ダーグラウンド・ミュージック・シーンで活躍している。しかしここ近年の自己破滅的な人間たちの振る舞いにアダムは 抑鬱を抱えていた。そんなとき恋人イヴ(ティルダ・スウィントン)がデトロイトに住む彼の元を訪れる。もちろん、彼女も吸血鬼で2人は何世紀も愛し合い、生き続けてきた。久々の再会もつかの間、イヴの破天荒な妹エヴァ(ミア・ワシコウスカ)が突然2人に会いにやってきて、3人の運命はゆっくりと変わり始める......。
監督・脚本:ジム・ジャームッシュ
出演:トム・ヒドルストン、ティルダ・スウィントン、ミア・ワシコウスカ、ジョン・ハート
原題:ONLY LOVERS LEFT ALIVE/2013 年/米・英・独/123 分
提供:東宝、ロングライド
配給:ロングライド
(C)2013 Wrongway Inc., Recorded Picture Company Ltd., Pandora Film, Le Pacte &Faliro House Productions Ltd. All Rights Reserved.
12 月20日(金)より TOHO シネマズ シャンテ、新宿武蔵野館、大阪ステーションシティシネマ ほか 全国公開
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