美しい投資術 vol.37 収支と保険を見直して、不動産以外の投資を始めたい。

フィガロジャポン2021年7月号から「美しい投資術」を連載する、個人投資家/資産運用アドバイザーの廣田里那さん。

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今回の相談者は、住居用とは別に投資目的で賃貸用のマンションを2軒購入し、老後に備えている40歳女性。株や投資信託などの運用商品への投資も始めたいけれど、まずは毎月の収支や加入している4つの保険を見直したいというご相談です。


今月の投資相談

収支と保険を見直して、不動産以外の投資を始めたい。

Y子さん(40歳・未婚) 会社員
年収 約1,000万円 貯金 約300万円

アパレル企業でバイヤーとして働いています。老後の資産形成のために2019年に投資用ワンルームマンションを2戸購入。ローンは家賃収入で返済しています。いずれは1戸を売却して、もう1戸のローン返済に充てるつもりです。今年収入が増え、毎月平均8万円の余剰金が出ており、銀行預金に回していますが、株や投資信託での資産運用も検討中。5,000万円の資産形成を目指しつつ、余剰金の一部は旅行資金にも充てたいです。会社が加入している企業型確定拠出年金では、インデックスファンドを運用中。外貨建て保険と医療保険にも加入していますが、これらの保険が不要であれば解約も考えています。

1カ月の収支

収入 ▶ 約580,000(手取り)/月
支出 ▶ 約¥446,400/月

  • ▼固定費
    約¥247,400
  • 居住費(住宅ローン+管理費)
    ¥140,000 
  • ※中古物件を購入してリノベーション
  • 光熱費
    ¥16,000
  • 通信費(自宅Wifi+携帯)
    ¥13,000
  • 医療保険(2社)
    ¥3,400
  • 年金保険
    500ドル(約¥75,000)
  • ※1ドル=150円で計算
  • ▼変動費
    約¥199,000
  • 食費
    ¥50,000
  • 交際費
    ¥15,000
  • 交通費
    ¥3,000
  • 趣味・娯楽
    ¥10,000
  • 日用品
    ¥15,000
  • 衣服・美容
    ¥90,000
  • ※仕事柄、出費は厭わず
  • 教養・教育
    ¥ 16,000
  • 貯蓄
  • 銀行貯金
    ¥80,000

資産と保険の内訳

*都内の新築マンション2戸

家賃収入でローンを返済中。税金対策にもなっている。
いずれ1戸は売却し、老後は1戸から家賃収入を得る予定。

*企業型確定拠出年金

(月47,000円)→約350万円(2024年4月現在)

*生命保険

A社 一時払い230万円×15年間→約250万円(2024年4月現在)

現在、返戻金が元本を上回っているので、解約して生活防衛費に回すか、再投資しても。同じ投資先である米国債券と先進国債券のインデックスファンドを検討してはどうか。
銘柄例: eMAXIS Slim 先進国債券インデックス 予想年利5.4%(5年平均リターン)

B社 年約6,000ドル×残り15年→年金として月70ドル×20年間


*医療保険

C社 補償内容 入院日額5,000円 手術給付金25,000円~ 先進医療給付金2,000万円ほか 払込終身

D社 補償内容 入院月額3,000円 先進医療保険1,000万円ほか 払込75歳まで

マンション購入の際の保険もあり、補償が重複している可能性もあるので内容を確認してひとつにまとめては。

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老後資産の目標が5,000万円と明確なY子さん。将来の不動産の価値を現金に換算して予想することは難しいですが、現状を踏まえて65歳時点の資産を計算してみたいと思います。

毎月8万円をそのまま貯金し、企業型確定拠出年金も継続した場合、手元には約5,810万円の資産があることになります。そこに、家賃収入と保険の満期返戻金が加わるので、現状の計画を継続することでY子さんの目標は達成できると考えられます。

もしさらに資産運用を検討されたい場合は、リスク分散の観点から不動産とは別の資産である株や投資信託を活用することをおすすめします。たとえば、NISAのつみたて投資枠を活用し、長期・分散投資に向いている全世界株式の投資信託などで、毎月8万円の貯金のうち一部を定額でつみたて投資すると良いでしょう。

ただし、ローン返済期間は生活防衛費を余分に用意しておいたほうが安心です。銀行預金を生活費の1年分ほど貯めてから、NISAを始めると良いかもしれません。外貨建て保険は元本を上回っているものは解約して、生活防衛費に回すか、より高い利回りを期待できる投資信託に再投資するのも手です。

医療保険に関しては、毎月の支払い額は安いものの、保障が重複している可能性がありますので、再度内容を確認し、ひとつに絞っても良さそうです。

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65歳までに資産5,000万円を目指すには?

※賃貸マンションを1軒売却し、1軒分の家賃収入が得られると想定。

毎月の貯蓄8万円と企業型確定拠出年金を継続した場合

現預金:300万円+(月8万円×25年=2,400万円)=2,700万円
企業型確定拠出年金:350万円+(月4万7,000円×年利5%×25年=約2,760万円)=約3,110万円
計 約5,810万円
このほかに毎月、不動産の家賃収入8万5,000円+年金保険約10万円=18万5,000円
➡︎現状維持でも三浦さんの目標は達成できます。が、この計算にはインフレや円安は加味していないため、対策を取るのであれば毎月の貯金の半分、4万円を資産運用に充ててみては。



毎月の貯蓄8万円のうち、4万円を運用に回した場合

現預金:300万円+(月4万円×25年=1,200万円)=1,500万円
企業型確定拠出年金:約3,110万円
+NISAつみたて投資枠 (全世界株式):月4万円×年利5%×25年=約2,353万円
計 約6,963万円
➡︎貯金の半分を投資することで、約1,153万円プラスになる可能性がある。

 企業型確定拠出年金とは?

企業型確定拠出年金(企業型DC)は、日本の退職金制度のひとつ。従業員が自分の退職金を自ら管理し、株式や債券などの投資商品に投資できます。

退職金の受け取り額は投資成果によって変わります。この制度では従業員と企業がともにお金を拠出し、従業員は自分の投資ポートフォリオを選択して管理します。任意加入では従業員が拠出するか否かを選べ、企業全額拠出では従業員の代わりに企業が拠出をすべて行います。Y子さんの場合は、企業が拠出を全額負担し、投資先は従業員が選ぶ、というスタイル。これらの制度の詳細は企業ごとに異なるため、企業の規定を確認しましょう

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text: Yoko Sueyoshi

個人投資家/資産運用アドバイザー。1990年、パリ生まれ。現地高校卒業後、お茶の水女子大学に進学し、東京に移住。日系商社に勤めた後、通訳、金融会社を経て、個人投資家に。

instagram:@lina_saint.germain

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