【逗子・北鎌倉】地図を片手にたどり着く、高台の秘密のお店。
鎌倉ウイークエンダー 2022.07.16
長谷川真弓
本当にこの道で合っているのかと不安になりながらも、地図を片手に向かうお目当てのお店。曲がり角の目印は古い井戸、長い石段など、宝探しのような気分で進んでいく。営業日も限られているので、何かのついでに行くというよりは、そのお店でゆったりと過ごすことが今日の一番の予定。そんな、誰かに教えたいけれど秘密にもしておきたいような、とっておきのお店を2軒紹介。
目的のお店、morozumi へと向かう道中。北鎌倉駅から徒歩8分ながら、山の中の小道は行くたびに探検気分に。
光る海を眺めながら、季節の美味しいものを
#01. Minamicho Terrace
風の抜けるテラス席。キラキラと光る海、ゆっくりと港に戻ってくる船を眺めながら心穏やかに過ごせる。
椰子の木の並ぶ外国のような雰囲気の逗子マリーナを抜け、すぐ横の小坪漁港へ歩を進めるととたんにのんびりとした空気が流れる。漁港の裏側、車も通れない細い急勾配の坂を民家の軒先をかすめるように上っていくとたどり着いたのは絶景のカフェ。テラス席からは逗子マリーナや相模湾を見下ろせる。
オープンからこの8月でちょうど10年。元は漁師さんのお宅だった家を、オーナーの日髙なおこさんが建築家のご主人とともに改装。2年かけて形になってきたところでカフェとしてオープンしたが、現在でも手を加え、変化し続けているのだとか。
メニューは、パンとスープのプレートと、デザートプレートの2種類。ほんの短い旬の果物やそのときに採れた野菜を使って手作りしているので、季節によってどころか、日によってメニューが変わる。
この日のデザートプレートはブラン・マンジェ、豆腐のクラシックショコラ、自家製酵母のスコーン(プラムのジャムと自家製蜂蜜添え)で、どれも卵、乳製品不使用。アイスコーヒーは自家焙煎した豆を使用。デザートプレート1800円。
はじめはパンをメインにしたお店だったが、そのパンに合うジャムを手作りして、コーヒーも自家焙煎を始めてと、お店を続けていく内に手作りの幅が広がっていった。なんと今では養蜂も行っているのだそう。デザートプレートのスコーンに添えられた蜂蜜は、なんともいえない美味しさ。
「美味しい果物が手に入ったときにお裾分けしたいという気持ちから作っている」という、季節の果物のジャム。マーマレードは、今年イギリスで開催されたマーマレードの世界大会にて金賞を受賞した。
「ただ自分の好きなことをやってきただけ」という日高さん。「自分が美味しいと思うもの、そしてなるべく体に良いものを」と、素材にこだわり、契約している農家は必ず畑まで足を運び、自らの目で見て安心できるものを選んでいる。「ここをコーヒー屋と言う人もいれば、ジャムを買いにいくお店と思っている人もいるし、建物を見に来る人も。目的は皆さんそれぞれですが、ここでのんびりした時間を過ごしていただけたらと思います」
テラスは2卓、室内の席もあり。この眺めから見る夕日は一際美しい。
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長く暮らしに寄り添う一品を求めて丘の上へ
#02. morozumi
店主の両角夫妻。店の前に広がる庭は訪れる者にとっての憩いの場で、季節によってさまざまな表情。夏はまぶしいほどの光と緑の勢いに目を奪われる。
鎌倉の隣駅、落ち着いた雰囲気の漂う北鎌倉駅を出発。源氏山公園ハイキングコースへとつながる山側の道を進む。鳥のさえずりや山道を覆う緑に癒されながら脇道に入り、さらに石段を上がった先の一軒家。ここは、両角さん夫妻が営む、衣服と生活道具の店だ。
物件探しをするもなかなかイメージと合う場所が見つけられず、お店を持たずに活動を続けていたところ、7年越しで出合ったのがここ。目に飛び込んでくる緑、そして山から運ばれてくる風、それはロゴのイメージそのままの場所だった。初めて訪れる客も、なんとも気持ちのよい空間についつい長居してしまう。
ポップアップイベントなども随時行っている。
店内に並ぶのは「自分たちが使い続けてきたもの」。今までの生活の中で大事に使っていたもの、人とのつながりから出合ったもの、そしてこれからも長い年月使い続けていきたいものを置いているのだそう。
お店を象徴するブランド、Suno & Morrison(スノ&モリソン)。ホテイアオイを原料にベトナムで作られているマットをはじめ、日本の伝統的なガラ紡のブランケットなど、使い続けることで経年変化を楽しめるアイテムがそろう。
営業日は誰でも行けるオープンデイもあるが、アポイントメントをとってゆっくりと過ごすのがおすすめ。店主とお喋りしながら商品のストーリーを聞いたり、庭に出てくつろいだり……。ただ物を買って帰るのではない、あとから何度も思い出してしまうような特別な時間が味わえるだろう。
飾られている台は江戸時代の長持ちでこちらも販売している。
夏時期はイグル氷菓のアイスがお出迎え。湘南・腰越で作られている人気のアイスは購入して、お庭でのんびりと食べながら涼む人が多いのだとか。
text&photo: Mayumi Hasegawa
長谷川真弓
エディター兼ライター。鎌倉在住、3児の母。大学卒業後、出版社に入社。女性ファッション誌の編集に携わり、2011年に独立。現在はフリーランスとして雑誌やwebなどで活動中。