秋の鎌倉さんぽの締めに、ワインを一杯。
鎌倉ウイークエンダー 2024.10.23
長谷川真弓
鎌倉散策といえば、午前中から寺社をお参りして、気になるお店でランチをしつつ、夕方まで街歩きを楽しむという人が多いが、夕方以降のぐっと落ち着いた雰囲気になる時間帯もまた良い。こぢんまりした居心地の良い店で、美味しいワイン片手にくつろぐことができる、おすすめのワインバーを紹介。
鎌倉で10年、地元の人に愛されるワインバー
#01.TRES
この秋10周年をむかえた、鎌倉のワイン好きに愛され続ける「TRES」。ソムリエのお二人、田沼さんご夫妻が営むワインバーで、新しいお店が次々と誕生してはいつの間にか姿を消していることも多い鎌倉において、10年続く店というのは本当に地元の人に支持されている証拠だ。
店の奥のセラーにそろっているのはフランスを中心にイタリア、スペインなどのヨーロッパのワインだが、日本ワインも充実している。どれも、自分たちが飲んで気に入ったもので、そのほとんどがナチュラルワイン。どのくらいの種類を扱っているか尋ねると「全然検討がつかない」と笑う。
グラスワインは、スパークリングも含めて12〜14種類から選べる。何を頼むか迷ったら、ワインに詳しくないから...と尻込みせずに相談してみよう。「ワインに必要なのは知識ではなくて、楽しむ気持ち! 何でも気軽に聞いてくださいね」
料理はワインに合う、旬の食材をつかった飾らない一品料理が好評。
特製水餃子は、全粒粉を使った手作りの皮がもちもちとしていて肉の旨味がギュッと詰まった人気のメニュー。中身は定番の豚、れんこん、しょうがのほかに、月替りの具材もあり、どちらも人気だ。
おつまみに欠かせないチーズは、千葉のいすみ市のチーズ工房イカガワのもの。放牧されているジャージー牛のミルクを使ってつくられるナチュラルなチーズで、素朴な旨味がワインの味を引き立ててくれる。
この夏には2週間、フランス、スペインを旅して、ワイナリーめぐりをしてきたというご夫妻。
「1本1本のワインに対する理解が深まったし、こういう場所で、こんな人がつくっているワインなんだという背景も含めてお客様にお話できるのがうれしいですね」。
「特別な日に行くのではなく、普段の生活の中に溶け込む店でありたい」と、田沼さん。休日の街歩きの締めに、もしくは普段の仕事帰りになど、1杯飲んで帰りたいというときにフラッと立ち寄りたいお店だ。
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美味しいワインと料理、良質の音楽に包まれる店
#02.時間
小町通りなど、東口がにぎわう鎌倉。対して西口は昼も夜も落ち着いた雰囲気が漂う。そんな西口を出て徒歩3分ほどの場所に、隠れ家のような雰囲気が心地いい店がある。
美味しいワインと料理、そして音楽。自分の好きなものを3つ並べてお店をつくったというのは、店主の梶丸基史さん。店名を、その3つに共通するものとして浮かんだ「時間」と名付け、昨年4月にオープンした。
10坪前後のこぢんまりとしたお店には、ジャズ、クラシック、ワールドミュージックなどの音楽がいつも流れている。温かみのあるレコードの音に包まれるのは至福の時間。
20代のころはレコードショップに勤務していたという梶丸さん。店内にあるレコードは400枚ほど。ご自宅にはその何倍もあるそうで、気が向くと少しずつ入れ替えているのだとか。
レコードショップでの勤務後は、鎌倉の人気のビストロで、サービスとキッチンを合わせて9年ほど腕を磨いた。そんな中から生まれた、ワインに寄り添う料理の数々には定評がある。
「女性お一人で来られて、静かに飲まれるお客さんも多いので、一人でも何品もつまめるように」と、ポーション自体は小さめで、フレンチのコースの一皿分くらいの量。その分、価格がおさえられていて、白レバームース¥480、鮮魚のポワレ¥1460など、あれこれ頼めるのがうれしい。
肝心のワインはというと、フランスなどヨーロッパのものが中心で、自然派ワインも豊富。グラスワインは常時10種類ほど用意されている。 手描きのワインリストには、それぞれ産地、ぶどうの品種、値段のほかに「スパイシーな香りはありつつ柔らかさも感じる味わい」「半年ほどセラーで寝かせて味わい深くなりました」といった店主による説明書きもあるので、「次はこれ飲んでみようかな」と、気軽に注文できるのが魅力。
グラスを傾けながら、日常から離れ、ゆるやかにすぎるちょっと特別な時間を過ごしてほしい。
text&photography:Mayumi Hasegawa
長谷川真弓
エディター兼ライター。鎌倉在住、3児の母。大学卒業後、出版社に入社。女性ファッション誌の編集に携わり、2011年に独立。現在はフリーランスとして雑誌やwebなどで活動中。