東京と鎌倉、二拠点生活の現実。

書きそびれていたけれど、この連載のタイトルに「ときどき」と入っているのは、東京と鎌倉を行ったり来たりの二拠点生活をしているからだ。

もともとは鎌倉にわたしひとりで暮らしていたところ、結婚をして二人暮らしに。その後、いくつかの事情で本拠地を鎌倉から東京へ移すことになった。それが約4年前。鎌倉での暮らしをとても気に入っていたので、借りていた一軒家はそのままにしておき、週末や長い休みのたびに鎌倉へ足を運ぶという生活スタイルになった。

そもそもモデルの撮影などの仕事は、基本的には東京で行われることが多い。以前は早朝集合の収録が定期的にあり、始発でも間に合わないので、東京の実家に前泊をしていた。夫は、朝はわりとゆっくりの出勤ではあるけれど、月に何度か仕事終わりが深夜に及び、深夜バスを利用したりビジネスホテルに泊まったりしていた。

ちなみに、この深夜バスというのが、新橋駅0:40発〜鎌倉の最寄り駅2:24着という運行スケジュールで、家には戻れるけれど、翌日は確実に使い物にならない。けれど、このバスを度々利用している鎌倉在住の友人を何人か知っていて、皆、強者だな!と感心していたりもする。優雅に思われる「鎌倉暮らし」だけれど、東京で仕事をしている人たちは、毎日ではないにしても、けっこう頑張っている。

わたしたち夫婦は、またいずれ鎌倉に戻るつもりで、東京に拠点を移した。けれど、その後、子どもを授かり、近くで暮らすわたしの両親に時折(いや、かなりの頻度で)面倒をみてもらったり、保育園も東京で通いはじめたりで、なかなか拠点を鎌倉に戻せずにいる。

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そんなわけでいまの鎌倉ライフは週末中心。ほぼ毎週行っているので慣れてはいるものの、移動はそれなりに大変だ。自分のことだけでなく、子どもたちの荷造りをしないとならない。3歳児の荷物の準備は楽になったけれど、0歳児は離乳食(冷凍してあるお粥とか、レトルト惣菜とか)とミルクと哺乳瓶、オムツもおしり拭き…。鎌倉にもストックはあるけれど、心配性のわたしは、道中で何かあったらと気になって、毎週ありとあらゆるものを用意してしまう。月曜日からの保育園の準備もしなければならないし、さらには冷蔵庫の中身をそのまま置いていくわけにもいかない(例えば、封を空けて間もない牛乳パックの扱いには、毎度悩まされる)。そして、柴犬の椿も、もちろん連れていくので、移動の際の車は常に荷物でぎゅうぎゅうだ。

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移動の相棒。第二子が生まれるタイミングで、以前より一回り大きなSUVに
乗り換えた。今春にはこの車で九州縦断旅行もした

たいてい金曜日の夜に、東京から鎌倉へ行く。夕食は簡単に済ませて、お風呂に入り、子どもたちには寝巻き(とオムツ)を着せて、いつも彼女たちがベッドに入る9時ぐらいに車に乗る。子どもたちはすぐに寝入ってくれて、約1時間の移動。鎌倉に着いて車を降りるときに一瞬起こしてしまうのが可哀想だけれど、またすぐに布団にくるまって寝てくれる。そして、月曜日の朝、東京に戻って、そのまま保育園に連れていく。

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車にはチャイルドシートとベビーシートと、犬用のキャリーを常に乗せていて、それだけで荷物はもういっぱいだ

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こんなふうに書いていると、よくこんな一家大移動を毎週やっているなと、呆れてしまう。けれど、とくに3歳の娘は鎌倉に行くのを楽しみにしていて、たまに仕事の都合で行けないとなると、ものすごくがっかりする。わたし自身、金曜日の夜は毎度なんでこんなことをしているのだろうと考えこんでしまうけれど、それでも、翌朝、鎌倉の家で目覚めると、なんだかいい気持ちで、来てよかったと思っている。

窓を開けた放ったときの、湿度とか匂いとか、音とか風とか。簡単な朝食を済ませて、海に行こうか、山へ行こうかと、天気を見ながら相談する。今時期なら、日除けの準備だけはしっかりして、水着を身につけて、自転車に乗って海に出かけることが多い。好きなだけ遊んで、お昼をまわったときは、海岸近くの弁当屋さんでお昼ご飯を買ってきたり、7月からは海の家で何かを食べたり。帰るときは、パパッと水着の上にシャツを羽織って、家に帰ってから庭のホースで足についた砂を落とす。帰り道に、やっぱり海岸近くに魚屋と八百屋があるので、そこで夕飯の食材を仕入れていくときもある。

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鎌倉の家の椿の実。夏になるとまるでりんごのように赤く色づく。リスの好物なのか、気づくと齧られているのだけど

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鎌倉では山だけでなく、住宅街にも現れる台湾リス。可愛いけれど、外来種。家庭菜園の野菜や木の実などを食い散らかすので、嫌われ者だ。

 

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ふと上空に気配を感じて見上げると、リスが電線を渡り歩いていた。一瞬、「猫バス」みたいと思った

前もって何か決めることはほとんどなく、その時の気分で動けるのが、本当に気楽でいい。過度でなく、とはいえ、必要最低限のものを揃えることができる環境があることが、この町の魅力だろう。広い鎌倉でも、観光客の多い地域から一歩出ると、のんびりとした生活があって、そんなゆったりとした時間をふだんは無意識に求めて、わたしは行ったり来たりを繰り返しているのかもしれない。

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長女が1歳のころ。ちょっと散歩へ、という感じで手ぶらで気軽に山へ来られる。日差しが強いこれからの時期も山は木陰がつづき、快適に過ごせる

photography & text: KIKI

KIKI

モデル。1978年生まれ、東京都出身。武蔵野美術大学造形学部建築学科卒。雑誌をはじめ広告、テレビ出演、映画などで活躍。エッセイなどの執筆も手がけ、旅や登山をテーマにしたフォトエッセイ『美しい山を旅して』(平凡社)など多数の著書がある。現在、文芸誌『小説幻冬』(幻冬舎)にて書評を連載中。インスタグラム:@campagne_premiere

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