私の好きなお花見スポット。
KIKI、ときどき鎌倉暮らし。 2023.04.10
KIKI
鎌倉の桜の見頃は、3月終わりから4月頭にかけて。でも、東京都内の中心部と比べると、すこし遅い気がしている。都内が満開になったといわれているとき、鎌倉の桜の枝の上の方はまだ蕾であることが多い。だから、鎌倉に暮らして、東京と行き来をしていたときは、長く桜を目にできるので、ちょっと徳をした気分になっていた。
そんな鎌倉で、わたしのお気に入りお花見スポットはふたつ。(あちこちで咲いているので、またあとで、あそこの桜も好きだったー!と思い出しそうだけれど。)ひとつは、久木ハイランドと呼ばれる住宅街の桜並木。ハイランドは逗子市と鎌倉市の狭間にあり(住所は逗子市になる)、縦横に走る何本かの道の街路樹が桜なのだ。満開時には道路を覆うように桜が咲きほこり、まさに桜のトンネルができる。
今年2023年の鎌倉大町の町内会広場の河津桜。昔の写真と見比べて、長女の成長におどろく。
住宅街なので、どこかに座ってお花見とはいかないかわりに、散歩の延長で桜を楽しみに出掛けている。以前に暮らしていた家からは、名越登山口を入り口に山道を抜けてハイランドへ行くことができた。また、ハイランドは、鎌倉から都内へアクセスするときの最寄りの朝比奈ICへの通り道にもなるので、時間にしてものの数分だけれど、春は毎年、桜のトンネルをくぐり抜けるドライブが楽しみになる。
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もうひとつのスポットは、町内会の広場だ。こちらも住宅街のなかなので、あくまでも静かに愛でたい場所。鎌倉で一番長く暮らした大町は6丁目まであって、それぞれに町内会の特色や活動があった。自分のところでは、町内の福祉施設の敷地を借りての餅つき大会が、毎年の楽しみだった。話を戻して、桜スポットの町内会広場は、隣町に当たる町内会のものだったが、上に書いた名越登山口への行きしなにあるので、よく横を通り過ぎていた。
桜の木は数本しかないのだけれど、周囲がひらけていて気持ちのいい町内会広場。横を電車が通っていくのも、子どもたちにはうれしいポイント。
広場には、早咲きの河津桜が植えられている。花の色味も濃いピンクなので、子どもたちもいつも可愛いと大喜び。上の娘が小さいときは、家から広場までふたつの踏切を越えるので、電車好きの彼女のお気に入り散歩コースにもなった。桜が散ったあともたびたび散歩に行ったので、その木に可愛らしい小さなサクランボがなることも、その実が意外にも甘いことを知ることができた。
5月になるとサクランボが色付く。奥に堆肥置場が見える。黒々とした健康そうな土が置かれている。
サクランボを黙々と食べる3年前の娘。黒っぽい方が甘くて、赤い実はまだまだ酸っぱい。
余談だけれど、その町内会広場のすみには、堆肥置場もある。鎌倉のごみ収集には、週に一回、剪定材回収の日があって、回収した剪定材を堆肥にしたものを各所で配布している。そもそも、週に一回も剪定材回収の日があることに、引っ越した当初は驚いたのだけれど、季節が巡ると、庭から出る雑草を含めた剪定材の量の多さに納得もした。そしてあらためて、町内に庭のある家や寺社が数多くあって、緑が多い場所なのだと実感した。
久木ハイランドの桜。こちらは並木道で、満開を越してからの散っていくタイミングも華々しくて好きだ。
今年は開花が早かったけれど、寒さが戻ってきたおかげで長く花を楽しめている気がする。こんどの週末もお弁当を持って、お花見に出かけようと思っている。ゆっくり過ごしたいときの行き先は、ふたつのお気に入りスポットとはまたまた違う場所。鎌倉にはお花見スポットがたくさんあるのだ。
photography & text: KIKI
KIKI
モデル。1978年生まれ、東京都出身。武蔵野美術大学造形学部建築学科卒。雑誌をはじめ広告、テレビ出演、映画などで活躍。エッセイなどの執筆も手がけ、旅や登山をテーマにしたフォトエッセイ『美しい山を旅して』(平凡社)など多数の著書がある。現在、文芸誌『小説幻冬』(幻冬舎)にて書評を連載中。インスタグラム:@campagne_premiere