逗子の花火大会、犬も娘も音に怖がる?

5月末、まだ梅雨入りもしていない時期に、逗子では毎年花火大会が行われる。

とはいえ、コロナ禍で中止が続いていており、今年こそ開催!?と年明けから囁かれて、地元の人たちの期待は高まっていた。資金不足でやっぱり今年もできないのではないかという噂もあったけれど、地元民の熱意が後押ししたのか、無事に4年ぶりに開催された。

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4年ぶり逗子花火大会は、第66回と歴史を重ねている。発数も7000発と、規模もわりと大きく、満喫できる。

私自身は、15年ほどまえに鎌倉に暮らしはじめてから、逗子の花火大会の存在を知った。けれど、5月の夜はまだ寒い。時期的に早過ぎないかと、当初は気が乗らなかった。けれど、どこよりも早い時期に行われる「一番」の花火大会が近所で行われるとなれば、それに乗らない手はないと、結局はいそいそと出かけていくことに。

逗子は、鎌倉の隣町とはいえ、まだ土地勘があまりなかったので地図と睨めっこ。そして、ここならよく見えそう!と逗子市内でも鎌倉寄りにある大崎公園へ足を運んだこともある。大崎公園は遊具があるような公園ではなく、自然の地形を生かしたつくり。小さな岬の突端で高台でもあるので、海上から打ち上げられる花火を見るにはもってこいの場所だった。とはいえ、風のあたりも強く、寒い寒いと震えた記憶がある。とてもビールを飲むような気分にはならなかった。

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まずは衣装から! 次女はおさがりの甚平で、長女は今年新調した浴衣を着せて(ユカタビラという商品で、裾広がりのワンピースのようなデザイン。動きやすそうだった)

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今年は4年ぶりの開催だったのだが、実はその間に週末を過ごす家を、鎌倉から逗子へと引越しをしている。鎌倉では庭のある一軒家を借りていたのだけれど、逗子はマンションの6階で、バルコニーからはものすごく近いわけではないけれど海を望むことができる。ちなみに海までは、歩くと7、8分ほどの距離(鎌倉の家から海までは15分ちょっとかかっていた)なので、朝夕の犬の散歩でも気楽に海に行けるようになった。

今年は、そのバルコニーから花火を見てみよう!となった。どの程度花火の全景が見えるのかわからないから、友人には声をかけず家族だけで見ることに。金曜日夜の開催だったので、夫婦で仕事を早めに切り上げて、娘たちと飼い犬の柴犬を連れて車で都内から移動。逗子に着いたのが夕方5時ごろ。その時間はまだそれほどの混雑ではなかったけれど、なんとなく、人も町も空気もそわそわしている感じがして、この高揚感こそ花火大会だなと早くも期待が高まった。

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花火の翌日は、友だちと一緒に、鎌倉の材木座の小川沿いで蛍鑑賞。

そして、夜7時。ドドォォーーーンッ!!と打ち上がった花火の大輪のその大きいこと。想像していたよりもバルコニーからずっと大きく近くに見えたのだ。わたしも長女もとにかくずっとキレイキレイと騒ぎっぱなしの大興奮だったのだけれど、柴犬は震えあがって部屋の隅っこに閉じこもり、花火大会初体験の次女は、見たいのだけれど音が怖いようで、わたしにぴたっと抱きつき、後の窓に映り込む花火を時々うっすらと目を開けて見ていた。そして、そのうちにしがみついたまま眠ってしまった。

あぁ、花火もいいけど、娘も可愛いと、親バカな夜を過ごしたのだった。

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海岸から見たらもっと迫力あるのかなと気になりつつも、娘たちが小さいうちは家からでも十分だろうと思う。

夏先取りの気分に浸ることができた逗子の花火大会。でも実は、どこよりも早い花火大会だからか、4年ぶりの開催だからか、打ちあがり始めの前後の逗子の街の混み具合は非常事態といっていいほどの人出。バルコニーから道を見下ろすと人の波ができており、海岸も駅ももっと混み合っていたのだろう。

それを考えると、うかつに人を誘えないな、などと、すでにもう来年のことを考えているのだった。

photography & text: KIKI

KIKI

モデル。1978年生まれ、東京都出身。武蔵野美術大学造形学部建築学科卒。雑誌をはじめ広告、テレビ出演、映画などで活躍。エッセイなどの執筆も手がけ、旅や登山をテーマにしたフォトエッセイ『美しい山を旅して』(平凡社)など多数の著書がある。現在、文芸誌『小説幻冬』(幻冬舎)にて書評を連載中。インスタグラム:@campagne_premiere

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