鎌倉の海とトトロと子育てと。

8月もお盆が過ぎると、そこかしこで秋の気配が漂いはじめる。それは、鎌倉もおなじ。困ったことに、海水浴場にクラゲが漂うようになる。「痛っ!」と声をあげたときには、すでにクラゲは周囲に見当たらない。なので、避けようにも避けられず、いつも突然に刺されて悔しい思いをする。

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夕暮れの材木座海岸。夕焼けがきれいそう!と思ったら海まで散歩に行く

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昨夏、わたしは次女の出産を控えて、大きなお腹を抱えながらも、度々、海水浴に行っていた。海の中にいると、お腹の重さが半減されて快適だったので、浸かっている時間は短いけれど、ゆらゆら〜と漂って心身ともにリラックスさせていた。

当時、長女は2歳半。陸では抱っこができなくて少し寂しい思いをさせていたけど、海の中なら娘の体重も軽く感じる。腰で抱っこをして、スキンシップをとれるのも、わたしとしてはうれしかった。

でも、ある日。ビリビリッ!とやっぱり突然に脚をクラゲに刺されてしまい、電気が走ったような刺激に驚いて、つい娘の前で「痛っ!痛〜っ!」と騒いでしまった。すると、「だいじょうぶ?」とわたしを心配しながらも、娘までしかめっ面をして、「もうこわいから海にはいらない〜!」とおびえてしまった。結局、その後はいくら誘っても海に入ろうとせず、その日が、出産前の最後の海水浴になってしまった。

思い返すと、お盆より前だったのに。年々、海水浴場にクラゲが漂う時期が、早くなってきている気がする。とはいえ、クラゲが怖いから遊ばない、というのはもったいない。気になる人は、なるべく肌を隠した格好で海に入るのをするのをおすすめする。

ところで、今年は鎌倉の材木材海岸で、3年ぶりに海水浴場がオープンした。7月と8月の2ヶ月、ライフセーバーがいたり、シャワーが使えたり。なにより海の家も建つので、昼食を取ったり休憩したり、ゆっくりと海で過ごせるのがいい。とはいえ、その期間が終わっても、海が好きな地元の人たちは、天気がよければ変わらず海にやってくる。海水浴場がオープンしている期間の昼間は、犬の散歩が禁止されているので、9月に入って、日差しが和らいだ日には、わたしも飼い犬を連れてくる。

材木座の海は遠浅だからか、秋に入ってもわりとしばらくは水が温い。そして浜辺に、水たまりのような、天然プチプールができるときが度々あって、小さな子連れとしては、遊ぶのにちょうどいいのだ。
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材木座海岸で作った砂のトトロ。形はなんとなくで、大きさで勝負。拾ってくる貝は、きれいな必要はなく、娘にまかせる

そういえばと、数年前の写真を見返すと、たくさん出てきたのが砂のトトロ。長女が喜ぶので、ひたすらトトロ(もどき)を作っていた年があったのを思い出した。ベースはわたしが作って、娘には貝殻を拾ってきてもらって、お腹の模様にと、たくさん乗せて楽しんだ。

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裾広がりで、可愛らしくなって、娘もご満悦。

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今年はまだ一度も作っていない。海の家も撤収作業に入り、もうすっかり秋モードだけれど、この週末、海に行ったら久しぶりに作ってみよう。子どのも成長とともに、反応は変わるだろうけれど、親が楽しんで作っていたら、一緒に遊んでくれるかな、なんて期待してしまう。1歳になったばかりの次女は、この頃、破壊魔なので(たとえば、姉の作った積み木を端からなぎ倒していく)どうなることやら。とはいえ、週末、鎌倉の海でやりたいことがひとつ増えた。

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トトロの周りに自然とできた水たまり。飼い犬の椿と。

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海の家がないときは、お昼ごはんにバニー弁当をよく利用した。(写真当時。今はラパンに店名を変えて再オープン)

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鎌倉の家の近くにある公衆電話に、散歩途中に寄るのがブームだったころ

photography & text: KIKI

KIKI

モデル。1978年生まれ、東京都出身。武蔵野美術大学造形学部建築学科卒。雑誌をはじめ広告、テレビ出演、映画などで活躍。エッセイなどの執筆も手がけ、旅や登山をテーマにしたフォトエッセイ『美しい山を旅して』(平凡社)など多数の著書がある。現在、文芸誌『小説幻冬』(幻冬舎)にて書評を連載中。インスタグラム:@campagne_premiere

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