鎌倉での七五三
KIKI、ときどき鎌倉暮らし。 2022.10.12
KIKI
一年前の秋。長女の七五三のお祝いを鎌倉でおこなった。わたしの両親も、義理の両親も、なぜかこれまで娘が生まれてから、行事ごとについて細々と言ってきたことがなく、お宮参りやお食い初めなどをしてこなかった。わたしも気にはなりつつも、やり過ごしてきた。七五三も、子どもに着物を着せたら可愛いだろうけれど、大変そうだしどうしようかな。とはじめは及び腰だったのだけれど、ある時、やっぱり七五三はやろう!と決めた。
それは、鎌倉に住んでいる、娘の1歳半上の友だちとそのお母さんの影響が大きい。彼女たちは、つねに娘とわたしの先を行く存在。お下がりのお洋服をもらうことも度々、遊ぶことも食べることも学ぶことも、つねに見本となる。母娘ともにお世話になりっぱなしである。
子どもの着物の着付けに初めて挑戦。聞いていたよりも難しくて、朝から冷や汗をかきながら、母のわたしも頑張りました。着物は、義姉とその娘(娘の従姉妹)が七五三で着た物を貸してもらって。
その友だち、Aちゃんの七五三の話を聞いて、それは素敵!と印象に残り、いろいろと参考にさせてもらった。鎌倉で七五三というと、鶴岡八幡宮でしたのかと、たいてい聞かれるのだけれど、ご祈祷をしてもらったのは八雲神社という小さな神社だ。
八雲神社でご祈祷を受けているとき、長女も抱っこ紐に入った0歳の次女も、始終大人しくしていた。
地元では「八雲さん」と呼ばれる、地域の氏神様だ。うちは湘南内で引っ越してしまって、今では氏神様ではないのだけれど、度々足を運んでいたので今でも親しみを持っている。八幡宮の境内やお宮と比べるとそれは小さいものだけれど、八雲さんにも歴史があり由緒もある。なによりうれしいのは、七五三のご祈祷の予約をすると、一組ずつ執りおこなってくれることだ。
娘も初めてのことばかりの一日。人力車に乗ってしばらくは、少し怖かったのか固まった表情。
話は戻るけれど、八雲さんへの道中もハイライトといってもいいくらい、楽しい時間だった。神社までの移動に、人力車を呼んだのだ。鎌倉の街でたびたび見かける人力車だけれど、暮らしていると恥ずかしさもあり、乗る機会がない。今回、家族で乗ることができて、わたしもちょっと興奮したくらいだ。それに、わずかな距離ながらも、着付けをさせてもらったAちゃんの家から神社まで、着物の着崩れ防止にもなり、また慣れない着物で娘が疲れることもなく、いい選択だったと思う。
神社へ行く途中、安国論寺というお寺の前でも記念撮影。小さい頃よく遊んでいた場所なので、表情の強張りも取れて楽しそうに。
写真を見返すと、娘はもちろん、皆がこころから笑っているものばかりだ。それは、娘が大好きなAちゃんが、朝からずっと付き添ってくれたことが大きいだろう。そのお母さんも、近所に住む他の友人も、娘の晴れ姿を見にきてお祝いしてくれた。そして、家族の写真を、子どもが生まれる前から時折撮ってくれているフォトグラファーの存在も。写真を見ての通り、彼にも彼のカメラにも、娘はすっかり打ち解けているのだ。
すべて終わって、すっかり緊張がとれた娘。こんなに楽しい七五三ができたのは、鎌倉の友人や写真を撮りに駆けつけてくれたフォトグラファーのおかげ。
原稿を書いていたら、横からパソコンを覗き込んだ娘は、着物また着たい!人力車にも乗りたい。と言っていた。「七五三」という言葉での記憶がなくても、楽しい思い出として残ってくれたらうれしい。
photography: Atsushi Kondo text: KIKI
KIKI
モデル。1978年生まれ、東京都出身。武蔵野美術大学造形学部建築学科卒。雑誌をはじめ広告、テレビ出演、映画などで活躍。エッセイなどの執筆も手がけ、旅や登山をテーマにしたフォトエッセイ『美しい山を旅して』(平凡社)など多数の著書がある。現在、文芸誌『小説幻冬』(幻冬舎)にて書評を連載中。インスタグラム:@campagne_premiere