芸舞妓さんが行き交い、風情ある街並みが残る花街・祇園は、京都の中でも特別な場所。ここに近頃、魅力的なお店が次々とオープンし、ますます街がパワーアップ。名料亭の味をテイクアウトできる惣菜とお菓子のお店、身体が喜ぶ朝食のお店、隠れ家のようなカフェ。祇園に誕生した新名店へ早速出かけよう。
白
京都屈指の名料亭の味を気軽にテイクアウトできるお店「白(はく)」が誕生。店名の由来は「一を乗せたら百。ひとつ幸せなものを口にすることで九十九の幸せに気づく」という心から。場所は、鍵善良房が手がけるZen Caféをはじめ、魅力的なお店が集まるビルの一角。銘木や和紙を基調とした店内に並ぶのは、その料亭の厨房でつくられたお寿司やサンドイッチ、おはぎといった惣菜とお菓子。利休麸のお寿司にはクミンが忍ばせてあったり、おはぎは和三盆を使った餡の透明感に驚いたりと、どれも発見や感動のある味わい。竹皮や朴葉を使った包装も贅沢で、大切な贈り物にも最適。数量限定のため、事前に電話で予約を!
花見小路と大和大路をつなぐ路地に建つビルの一角。
「1日ひとつの幸せをお届けする、おいしい小箱」がコンセプト。
建築はビル全体を手がけるIAT STUDIOの金澤富氏によるもの。土壁や和紙ですっきり仕上げられた、居心地のよい空間。
西側の窓際の栗のテーブルに並ぶ季節のお菓子。丹後の日本酒の粕を使った州浜「おみき」、揚げ昆布に砂糖がけした「霜がわら」など。
「三度いっち」の名前のとおり、3種のお惣菜を挟んだサンドイッチ。中身は季節に合わせてアレンジ。写真は左から、豆ペーストとすぐき、白和えといぶりがっこ、オイルサーディン。料亭ならではの和素材と洗練の味。パンはナカガワ小麦店の食パン、バゲット、ルヴァンの3種を使用。「三度いっち」¥1,620
白味噌餡をとちの実の餅で包んだ「とち餅」は、食感も味もふんわりやさしい。朴葉に包まれて3個入りで¥1,296。奥のお重もトチノキを使ったもの。
店長の近藤由紀さん。包装や会計を待つ間、欅のカウンターでお茶をいただける。
この日のお茶は徳島の白茶。天日干ししただけの優しい味わいにほっとひと息。
窓辺に飾られているのは「天上天下唯我独尊」を唱えたと伝わるお釈迦様の像。
白
京都市東山区祇園町南側570-210
tel:075-532-0910
営)11時〜18時
休)日曜
カード不可
>>祇園の真ん中の隠れ家カフェへ。
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万治カフェ
昔ながらのお茶屋建築が建ち並ぶ祇園の真ん中に、昨秋オープン。祇園の中でも格式高いお茶屋より分家し、代々この地に根ざした商家が、隠れ家のような居心地のいいカフェに生まれ変わった。「地元の人間がここで商売をすることが大切だと思ったんです。京都らしさ、祇園らしさを味わっていただければ」と、この家で生まれ育った女将の北尾貴代子さん。メニューに並ぶのは、作りたてのフレッシュなケーキやナチュラルプロセスで精製されたラオスのコーヒー、スペイン料理のシェフが手がけるランチプレートなど、こだわりの逸品ばかり。京都の建築家・木島徹氏による上質な空間で、庭を眺めながら和みのひとときを過ごしたい。
1861年よりこの地で石炭を扱っていた商家兼自宅がカフェに。
玄関をくぐると沓脱ぎが。取次の間の奥に広がるのがカフェの空間。
土壁や木をふんだんに使ったすっきりとモダンな内装。庭の草花が目に優しい。
広々とした空間にゆったりテーブルや椅子を配置。全部で24席。天井の寄木細工は、自宅として使っていた頃のまま。床暖房完備なのも京都の冬には嬉しい。
スイーツはすべて女将の北尾さんの嫁ぎ先である洋菓子店「カトレア」で、万治カフェのために材料から厳選して開発したオリジナル。大きなイチゴと小豆、求肥が入った「まんまるショート」、すっきりコクのある味わいのラオスコーヒー、セットで¥1,296。器には六兵衛窯の古い都をどりの皿が使われるなど、本流の花街文化を感じられる。
厳選素材を使って手間ひまかけて作られた「ランチプレート」は、身体が喜ぶおいしさ。シューサレ、野菜たっぷりのおばんざい、リンデンバームの手作りハム、スープがセットになった「ランチプレート」¥1,728
「受け継いだものを大切に生かしながら、この街らしいカフェを作りたい」と女将の北尾さん。
玄関を入った右手にはオリジナルのお菓子が並ぶ物販コーナーも。北尾さんの父が尽力した祇園の石畳をイメージした七味クッキーや、カフェでもいただける抹茶とほうじ茶のブラウニーなどが並ぶ。
中でもオススメがこちら。丹波産の実山椒とチョコレートの相性が抜群のチョコレートクッキー、濃厚な抹茶の風味が香るボルポロンなど、京都らしい和食材を使った6種のクッキーの詰め合わせ。ぼんぼりや千鳥のモチーフも愛らしく、京都土産にも最適。「京都 祇園クッキー 万治セレクション」¥2,808
万治カフェ
京都市東山区祇園町南側570-118
tel:075-551-1111
営)11時~19時
休)水曜
カード不可
www.manjicafe-gion.jp
>>朝食の専門店で、清々しい1日のスタートを。
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朝食喜心 kyoto
一飯一汁をベースにした極上の朝ごはんがいただけると評判のお店が、昨年春にオープンしたこちら。料理監修を手がけたのは、自然の滋味を堪能できる名店「草喰なかひがし」に生まれ、ニューヨークを拠点にフードプロデューサーとして活動する中東篤志さん。土鍋で炊き上げたツヤツヤのご飯、旬の食材と出汁の旨味が詰まったお椀に、「半升」の汲み上げ湯葉、炭火で焼いたうるめいわしの丸干しなどが付いたコース。品数が絞られたシンプルな構成ながら、丁寧に調理された一品一品は、いずれもしみじみと身体に染み入るようなおいしさ。おなかも心も温かく満たされ、心豊かな1日がスタートできるはず。
向付に出されるのが、京都のゆば工房「半升」の汲み上げ湯葉。上品かつ濃厚な風味を、静岡県産のおろしたてワサビとオリーブオイル、塩で。
滋賀の一志郎窯の土鍋で炊き上げるご飯は、みずみずしい煮えばなからふっくら蒸らしたもの、パリパリおこげまで、食感の違いを楽しめる立派な一品料理。
炭火で焼くうるめいわしの丸干しは錦市場の山市商店から。朝食用に苦味やエグみの少ないさっぱりした味のものをセレクト。
大ぶりのお椀に注がれた汁物は、京白味噌の豚汁、季節野菜の汁物、海鮮和風トマト汁の3種からセレクト。写真はいちばん人気の京白味噌の豚汁で、旬の新玉ねぎの甘みが溶け出した、白味噌のとろりとした舌触りが絶品。「喜心の朝食」¥2,700
サイドメニューから人気の2品をチョイス。大原にある山田農園の平飼いの卵(¥378)と、中はホクホク、外はカリッとした食感の揚げじゃが芋(¥324)
カウンター席をメインにしたモダンな空間。オープンキッチンで、目の前でご飯が炊けたり、うるめいわしの丸干しが焼ける様子を見るのは楽しい。
カウンター後ろのテーブル席には作家のめし椀をディスプレイ。
器の監修は、鎌倉の器店「うつわ祥見」の祥見知生さん。めし椀は、奈良の尾形アツシ、高知の小野哲平、静岡の村木雄児などが揃う。ご飯が炊けるのを待つ間、好きなめし碗を選べるのも、ここの楽しみのひとつ。
花見小路と大和大路を結ぶ道に立つホテルの1階。要予約で、7時30分から1時間半おきの5部制。早めや遅めの軽いランチにも使い勝手がよい。今年4月には鎌倉店が新しくオープンしたばかり。
朝食喜心 kyoto
京都市東山区小松町555
tel:075-525-8500
営)7時30分〜14時30分(13時30分L.O.)
休)月曜(7/1より木曜に変更)
カード:Amex、MASTER、VISA
要予約
www.kishin.world
photos : SADAHO NAITO, réalisation : NATSUKO KONAGAYA