フランス映画祭レポート③ 爆裂的におもしろい若手女性監督の登場。

こんにちは、編集KIMです。

映画祭の醍醐味といえば、憧れの映画人に会えること。
そしてもうひとつの楽しみは、いままで知らなかった新しい才能に出会うこと、ですよね!

まずは憧れの映画監督の新作から。
トラン・アン・ユン監督といえば、村上春樹原作・映画化された2010年の『ノルウェイの森』で記憶が止まってしまってますよね……。
ハルキストからは大ブーイングだった(と言われています)けれども、果たして、あの世界はトラン・アン・ユンの真骨頂だったのでしょうか?
そうとは思えない世界観なので、そこだけで責められてしまうのも……少しカワイソウ、なんて思ったりして、当時観ておりました。そのトラン・アン・ユン監督がフランスを舞台にして撮った作品が『エタニティ 永遠の花たちへ』。
こちらも女性の描き方に関して賛否両論あるものの、画面の美しさには溜息が出るほどでした。
『青いパパイヤの香り』(1993年)という映画の予告編を初めて観た時、心臓射抜かれるかと思うくらいすごい新進監督の予感がして、作品を観たら、まあほんとうに!と感激したことを懐かしく思い出します。限られた世界、「家」というものに縛られた世界、その中で、穏やかに時は流れていき、でも、何かが少しずつ変わり……という。スローだけどかすかに動く。そんな漂うようなニュアンスの映画でした。深く、人間の根本を鋭く、というタイプではないけれど、「あえて表面的」に描かれた「それ」は、さりげなく人の性(さが)を表現している、という気持ちを観る人に残すタイプの映画監督だなあ、とKIMは思います。
フランス映画祭で上映された『エタニティ~』も、トラン・アン・ユンの、「表層を描いて、さりげなく人間の性(さが)を漂わす」という得意とするところの演出で、出演者のメラニー・ロランといいオドレイ・トトゥといい、ジェレミー・レニエといい超一流のヨーロッパの俳優陣なのですが、彼らでさえも映画の中では、そこはかとなく存在しています。
映画は19世紀末のフランスの田舎町の邸宅で繰り広げられる家族の繋がりを、静かに静かに追っていきます。
女は子どもを生み育てていき、その間に命を失い――という連鎖が、緑豊かな田園風景、豊かな長い髪の女たちの美しいドレス姿に魅せられつつ、ゆるゆると進む。
こういう気だるさがなんとも心地いいのです。

1707043erniteフ.jpg
 ⒸNord-Ouest

『エタニティ 永遠の花たちへ』 
●監督/トラン・アン・ユン ●出演/オドレイ・トトゥ、メラニー・ロラン、ベレニス・ベジョ、ジェレミー・レニエ ●2016年、フランス・ベルギー映画 ●配給/キノフィルムズ ●115分 ●秋、シネスイッチ銀座ほか全国にて公開予定

>>『Raw』

---page---

そして新しい才能との出会いといえば、ジュリア・デュクルノー監督。
カニバリズムホラーという、なんともおぞましいジャンルなのですが、画面は美しいし、驚かせ方がわざとらしいのに、ハマってて、出演者はみんなキュート。青春ホラー映画を、若手の女性が監督するとこうなるんだ!という新鮮な驚きがありました。
姉と同じ獣医学部に入学し、寮生活をスタートするジュスティーヌが、新入学生に向けた、センパイたちからの若気のいたりいっぱいの「洗礼」を受け、彼女自身のなかの「ある性質」に気づく……
という物語。KIMも観ている間、吐き気をもよおしましたが、それでもスクリーンから目が離せない! 手で目を覆って、しかし指の隙間から観てる、っていうやつです。「指」も、この映画では大きなターニングポイントになる。人間の本質にある野生の目覚めみたいなものを、表現しています。
この主演女優は果たしてホラー映画で終わってしまうのか? そんな気がしないんですよね。すごくフレンチガールなルックスで、可愛い。
こういう女の子にホラー的なおののく演技をやらせても、女性監督だと、どこかしっくりときて、ピュアなエロスが感じられるのはなぜなんでしょう。
女の子の可愛らしさにもっともシンパシーを感じるのはやっぱり女性だから?なのでしょうか。そういうこと含めて、ぜひインタビューしてみたい新進監督です。ラストシーンの突飛でぶつっと切れる終わり方も、若さから生まれ出る斬新さが出ていると思いました。

17070412. Grave.jpg
©DR

『Raw』(英題) 
●監督/ジュリア・デュクルノー ●出演/ガランス・マリリエー ●2016年、フランス・ベルギー映画 ●98分 ●配給/パルコ ●2018年、日本公開予定

次回4回目でフランス映画祭関連は最後。ほかにも公開が待たれる注目作に触れます!

Share:
  • Twitter
  • Facebook
  • Pinterest

フィガロワインクラブ
Business with Attitude
キーワード別、2024年春夏ストリートスナップまとめ。
連載-パリジェンヌファイル

BRAND SPECIAL

Ranking

Find More Stories