イスタンブールの人たちは、猫に優しい。
編集KIMのシネマに片想い 2017.11.20
ごぶさたしてます、編集KIMです……。
最近、東京国際映画祭にてギレルモ・デル・トロ監督作『シェイプ・オブ・ウォーター』(2018年3月1日公開)の上映時に映画評論家の立田敦子さんとトークショーという大役をいただいたり、2018年2月号(12月20日発売号)の香港特集のために水原希子さんとウォン・カーウァイの映画のごとく、というモードストーリーを撮影に出張したり、映画と近い活動はしておりましたが、なかなかKIMブログを書く機会を失っておりましたっ!
今回は、「猫」を愛する人たちの心に寄り添う映画について。
実はKIMは、2013年6月号にて、トルコのイスタンブールに出張に行っておりました。イスタンブール特集だったのです。その時に、何度も目にしたのが、猫とイスタンブールの人々の、優しい関係。朝の光に包まれた風景写真を求めてカメラマンと街歩きをしていると、野良猫のアタマをなでてから出勤していくたくさんの人を見かけました。老若男女関係なく、誰もが猫を可愛がる。猫も慣れたもので、可愛がってもらっているので、とっても穏やかでよい子たちなのです。古道具屋の軒先でおじいさんが椅子に座っている横にちょこんと佇んでる猫がいたり。飼っているのかな、と思いきや、話してみれば「所有」している感覚はおじいさんにはなかった。ただ、居るだけ。でも、愛しい相棒みたいに、傍らに置いてました。これだけで、私にとっては「いい街だなあ」という感想。ペットブームとして猫を可愛がるのと、ちょっと違うんですよね、ともに暮らす感覚が。
こんな感じです、常に猫を愛しそうにしているイスタンブールの人々。
ドキュメンタリー映画『猫が教えてくれたこと』に登場する猫たちは、まさに私が訪れて見た、イスタンブールの猫と人との付き合い方をそのまま描いたものです。
映画のタイトルが出てくる冒頭が素晴らしい。イスタンブールは運河に囲まれたとてもユニークで美しい地形なのですが、上方からその街を捉えるカットに、「KEDI」と映画の原題(猫、というシンプルなタイトルですね)が浮かびます。このあたり、とってもおしゃれ。
そして猫の目線までカメラは降りて行きます。
軒先に猫、はフツウの風景だと映画は教えてくれます。
こんなに可愛がられたら、もう猫だって甘えますよ!
登場人物たちは、猫を束縛していません。「どこ行っちゃったんだろうな」とぼんやり探していたり、帰ってくればくるで受け入れるし、野良猫として付き合っていても、名前をつけて「アイツはこんな性格で」、なんていかにもうれしそうに語るわけです。
人々が猫社会の状況をあれこれ推測して、自由に物語を作っている。この作品の監督ジェイダ・トルンは女性なのですが、先に書いた、イスティクラル通りで猫のアタマをなでながら出勤していった2013年に見かけた若い女性ととても似ていて、もしかしてあの女性だったのかしら、などと思ってしまいました。
この作品は7匹の人生ならぬ「猫生」にフォーカスして作られています。そこに寄り添う人々の暮らしも。何匹かご紹介します。
この子はサリ。子猫を育てるメスで、泥棒ちゃんなんですが、母性に泣けます。
アスラン・パーチャシという魚料理レストランの用心棒。ネズミ捕りが得意。たそがれちゃってるところも愛しい。
KIMがいちばんルックスが好きなデュマン。デリカテッセンの軒先にいるのだが、決して店の中に入らない行儀のよさ。ただし、ウィンドーをカリカリする。ごはんはもちろんこの店から調達。
もちろん猫好きの人には観てほしい映画ですが、旅好きな人も満足できるはずです。イスタンブールの街の美しさ、人々の暮らしと目線。切り取られたひとつひとつのカットに、街の息吹があります。
イスタンブールの猫たちは、愛されているがゆえに、ルックスも毛並みも美しい。KIMもiPhoneが水没しなければ、2013年当時出会った美猫たちのマイショットを掲載できるのですが、いまはその記録は失せているので公開できないのが寂しいです……。

『猫が教えてくれたこと』
●監督・製作/ジェイダ・トルン ●出演/猫、そして街の人々 ●2016年、トルコ映画●79分 ●配給/アンプラグド ●シネスイッチ銀座ほか全国にて順次公開中