光を集めたような笑顔、三浦春馬の『キャッチ ア ウェーブ』

映画が始まって冒頭のシーン。江ノ電の車窓から目の前に真っ青な海が広がる――その時、だんだんと笑顔になっていく若き日の三浦春馬の表情が本当に素敵だ。

友人の両親が持つ別荘で過ごそうと3人の少年たちが湘南を訪れる、ひと夏の物語。三浦春馬演じる佐々木大洋、濱田岳(田口浩輔役)、木村了(小林誠人役)、3人とも日本の映画界やテレビ界で活躍する個性的な俳優になった。三浦春馬は声変わりもしきってなく、3人揃って初々しい姿を見せている。海とサーフィンと友情と初恋と……オーソドックスなテーマだけれど、実は海への愛情を奥深くから表現したい作り手の意図を感じる映画だ。

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竹中直人さんの「変わっていないぶり」に震えます。老いない。

両親の別荘の鍵を田口が失くしたことで家に入れず、竹中直人演じる伝説のサーファー、デュークのサーフショップ兼自宅にアルバイトとして居候する。サーフィンに興味をおぼえた3人は「教えてほしい」とせがむけれど、重労働の家事ばかりをやらされる。この家事が筋トレとなり、「サーフィンの基本」とデュークが言うパドリングに耐えうるカラダつくりが行われる。このあたりは、ジャッキー・チェンの『酔拳』(1978年)や『ベストキッド』(1984年)のごとくで、懐かしい。映画の途中で、デュークがサーフィンの極意として「Don’t think, feel」とブルース・リーの名セリフを言うが、アスリートスピリットとしての「道」のようにマリンスポーツを表現されていて、武道好き&海好きとしてはとてもうれしかった。やっと海での練習が始まると、3人は汚れたボードをきちんときれいにするなど、海とサーフィンへの敬意を自然と身につけていく。

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ひとりで店番をしている時に訪れてきたジュリア(加藤ローサ)にひとめ惚れした大洋は、少数のサーファーしか知らない秘密のスポットでジュリアがサーフする姿を動画に収めるサポートをすることに。ふたりは、米軍基地で上映される伝説のサーフィン映画『エンドレスサマー』(1964年)をデートで観に行き、そこで、大洋たちを海の新参者として嫌っている地元のアメリカ系の青年たちと決定的なケンカになって、曇天の荒波で対決をすることになる。

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加藤ローサさんも愛らしかった。ひとめ惚れのシーンはまだ恋を知らない三浦さん、という感じでしたが。

この対決で、三浦春馬の大洋は相手に勝つ。つまり荒波をメイクした。でも、そこに笑顔はなく、他者を負かすことへの戸惑いの表情で演じている。若さゆえの勢いで、危険な曇天の荒波に向かってしまったことの後悔も含めて、なんとも言えない表情。三浦春馬のこういう演技が、夏の海を舞台にした明るい青春映画に陰影をもたらしているのだと思った。

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荒波から生還した大洋。アミュレットのペンダントに祈る場面もマリンスポーツらしい。

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素直で、真っ直ぐに相手に対する大洋の役柄は、実際の三浦春馬のアティチュードとも似ているんじゃないだろうか、と感じた。きれいな凪の海の透明感ときらきらした輝きを宿した人。
三浦春馬はこの作品の準備からサーフィンを始めて、一生の趣味としていた。演じた大洋役と同じく、海に魅せられたのだ。
波に乗る爽快感、海を愛することによって、いままでと違う自分に出会う感覚は、個人的にも覚えがあって、とても共感する。

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三浦さんはプライベートで使っていたボードに馬の絵をいれていましたよね。ボードはグリーンを効かせたデザイン。

今夏、湘南の海ではないけれど、久しぶりに青い海に包まれる時間を過ごして、海が本当によく似合う三浦春馬のこの作品に触れたくなった。

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15年ぶりにスキューバダイビングをしに沖縄を訪れ、慶良間の海の美しいブルーを見てきました。『日本製』で、やちむんでもミンサー織や紅型などでもなく、無形文化財の組踊と出合うことを選んだ三浦春馬さん。国立劇場おきなわの圧倒的な大きさや建築デザインにも感動していたようですね。三浦さんが訪れたのは6月だったけれど空は晴れたそうです。資料室に、そっと『日本製』が置かれていました。

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『キャッチ ア ウェーブ』
●監督/髙橋伸之 
●出演/三浦春馬、加藤ローサ、木村了、濱田岳、竹中直人、坂口憲二ほか
●2006年、日本映画 
●本編116分 
●DVD 3,122 円 発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント 販売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメント
© 2006 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved.

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