1981年、映画『グロリア』が公開された時、まだ高校生だった。別の映画を観に国鉄の渋谷駅の改札を出て、ビルにかけられた広告を目にした時に度肝を抜かれた。片手に銃を構え、もう一方の手で小さな男の子を庇い、いまで言うところのミモレ丈のスカートをはいて大股広げて地面にハイヒールで立つブロンドの女性の映画ポスター。
『グロリア』とジーナ・ローランズとの出会いはこれが最初だった。衝撃的にカッコよかった。作品も、ティーンだった私の目には不思議に映った。アクションなのにどこか野暮。むしろ生活感がある。ニューヨークの街にはとても憧れていたけれど、人種のるつぼという表現がストレートに響いてきて、キラキラしたイメージだけを追いかけてた自分の心理にも気付かされた。
タバコを吸い、いつも機嫌の悪いグロリアに母性を見出すのは、フツーの論理や表現からかけ離れていて、若かったワタシは一回転脳を回さないと作り手のメッセージを理解できなかった。でも、憧れた......グロリアと、一重というか奥二重?のクールな女優ジーナ・ローランズに。
やがて、ニューヨークインディーズ映画が世界的にトレンドとして認められ、ジョン・カサヴェテスという映画作家が亡くなった後に、レトロスペクティヴ上映が東京のミニシアターでも行われるようになった。もちろん通い詰め、全作品を観て、劇場パンフレットを購入し、現在も大切に持っている。
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こういうレトロスペクティヴの場では、『グロリア』はあまり上映されず、それ以前に制作された『フェイシズ』(68年)、『こわれゆく女』(74年)、『オープニング・ナイト』(78年)、『ラヴ・ストリームス』(83年)などで構成されていた。ジーナ・ローランズの夫でもある『グロリア』のジョン・カサヴェテス監督は、本作があまり好きではなかったという説もある。ただし、どの作品でも女優ジーナ・ローランズは異様な存在感を放っていた。
『こわれゆく女』 ●監督・脚本/ジョン・カサヴェテス ●出演/ジーナ・ローランズ、ピーター・フォーク、マシュー・カッセルほか ●1974年、アメリカ映画 ●146分 ●Blu-ray ¥2,750 発売・販売:キングレコード
©1974 Faces International Films,Inc.
『フェイシズ』は人間の心の動きを追って追って絵にしていく作品。『こわれゆく女』は神経質な妻に手を焼きながらも夫婦の間に愛は続くみたいな作品。『オープニング・ナイト』は実生活で夫婦だったジョンとジーナが最初で最後の夫婦役を演じた舞台BTSもの。『ラヴ・ストリームス』はなんとベルリン国際映画祭で最高賞の金熊賞を受賞した、まさにタイトル同様、「愛とは流れゆくもの」という台詞が心に響く映画。
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