『ブリジット・ジョーンズの日記』の最新作は音楽も楽しい
Music Sketch 2016.11.04
この時期、フィガロ読者に絶対にオススメしたい映画は、『ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期』と『マイ・ベスト・フレンド』の2本。前者は既に大ヒットしているシリーズの第3弾。もう公開しているので観ている人も多いはず。後者は“ドリュー・バリモアが出演している映画にハズレなし!”と思っている私の中で、彼女の作品ベスト3に入るであろう名作。この2作に共通しているのは、勢いに任せて楽しく過ごしていた20代を終え、30代、40代を過ごしていく女性のリアルな心情を驚くほど克明に描いているところ。“これがもし自分だったら……”、と思いながら見る女性は少なくないと思う。
時代を反映し、ブリジットの日記はiPadに。
■人気者のエド・シーランがカメオで出演
その『ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期』。主演は整形疑惑で話題になっていたレニー・ゼルウィガー。その辺りの事情には詳しくないけれど、全然違和感を感じずに見てしまったし、歳の重ね方をそのまま体当たりで表現していて、さすがだなぁと感心してしまった。とにかく面白い!
『ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期』予告
原題が『BRIDGET JONES'S BABY』というように、最後までどっちの子供かということでハラハラさせられるが、いかにもイギリス人らしいコリン・ファースと、いかにもアメリカ人らしいパトリック・デンプシーという男優2人はもちろんのこと、ミランダ役のサラ・ソルマーニや、脚本にも参加したという名女優エマ・トンプソンもいい味を出している。
恋のライバルというより、互いに憎めないキャラの2人。
音楽ファンとしては世界的に有名な大規模な野外ロック・フェス、グラストンベリー・フェスティバルが恋人探しの場になっているのが“今風らしい”し、国民的大人気シンガー・ソングライターのエド・シーランがそのままカメオとして出演しているのも見どころ。しかも、レニーが大観衆の中でクラウドサーフィンするシーンまであって、ビックリしてしまう(実際は、別の場所で8万人も動員して撮影したらしい)。
■印象的なシーンに名曲を被せて、さらなる効果を生む巧さ
音楽の使い方で言えば、相変わらず「All By Myself」が彼女のテーマソングとなって始まるものの(エリック・カルメンが1975年に大ヒットさせた独り身を悲しむパワー・バラード。セリーヌ・ディオンなど多数がカヴァーした曲で、このベタな感じが、まず定番!)、このシリーズは毎回曲のセンスがいいとあって、今回もツボを得た曲が多く登場。何といっても「さすがイギリス映画!」と思わせてくれたのは、イギリスを代表する元祖お騒がせ嬢、リリー・アレンの2009年の大ヒット曲「Fuck You」を“ここぞ!”という場面で使っているところ。つい一緒に口ずさんでしまったほど。この歌はブッシュ元大統領に向けた過激なプロテスト・ソングと知られるが、このシーンで使うのはこの曲しかないでしょ、と思えるほどのドンピシャぶりだ(見ていない人はお楽しみに)。
Lily Allen 「Fuck You」2009年の大ヒット曲。
他にも名画『愛と青春の旅立ち(原題:An Officer and a Gentleman)』(1982年)で、ジョー・コッカーとジェニファー・ウォーンズがデュエットしてアカデミー歌曲賞を受賞したほどの大ヒット曲「Up Where We Belong」(軍服姿のリチャード・ギアがデブラ・ウィンガーを抱き上げた名シーンで流れた)を使うタイミングも見事。ロマンチックなはずなのに、クスッと笑えるドラマチックな演出に、過剰なほどに名曲を被せて、誰もが感情移入を超えてドッと笑える効果を生んでいる。
『ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期』オリジナル・サウンドトラック
音楽を担当するのは『ロミオとジュリエット』(1996年)、『ムーランルージュ』(2001年)など、印象的な音楽で映画の大ヒットに貢献してきたにクレイグ・アームストロング。サウンドトラックには、今のイギリスの音楽シーンを牽引するエリー・ゴールディングやイヤーズ&イヤーズといった若手によるストーリーに感情を重ねるような新曲をはじめ、映画に登場したモータウン世代やディスコ・ラバーが心躍らせる60年代や70年代を飾ったヒット曲も収録。
さらに、ノックス・ブラウン×ギャラント、ジェス・グリン、ティグス・ダ・オーサーといった新進気鋭の顔ぶれや、ブリジットの心情を描くように時代背景も想起させるアニー・レノックスやハウス・オブ・ペインの楽曲、そしてニュー・ジャック・スウィングとして1993年にアフターショックがヒットさせた「SLAVE TO THE VIBE」をビロンによるリメイクヴァージョンで起用するなど、さすがと思わせる選曲だ。彼が手がけた「WEDDING」を含め、サントラの曲順も聴きやすい流れになっていて気持ちが温かくなるので、ちょっとしたプレゼントにも適しているCDになっている。
『ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期』のHPはコチラ→http://bridget-jones.jp/
*To be continued

音楽&映画ジャーナリスト/編集者
これまで『フィガロジャポン』やモード誌などで取材、対談、原稿執筆、書籍の編集を担当。CD解説原稿や、選曲・番組構成、イベントや音楽プロデュースなども。また、デヴィッド・ボウイ、マドンナ、ビョーク、レディオヘッドはじめ、国内外のアーティストに多数取材。日本ポピュラー音楽学会会員。
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