風の星座ならでは? 二面性に着目したAAAMYYYの新作。

AAAMYYY(エイミー)の2枚目のソロフルアルバム『Annihilation(アナイアレイション)』が完成した。現在はテンパレイのメンバーとしても知られ、テンダーのサポートなどでも活動、ソロアルバム『BODY(ボディ)』(2019)ではコンピュータ・マジックとの共演も注目された。このほか、音楽アプリを使った曲制作でのクオリティの高さが評判となり、木村カエラに楽曲「clione」(2019)を提供、今年に入っては、Charaが音楽監督を担当した映画『ゾッキ』に楽曲「P.L.T」で参加、SUUMOのショートフィルムに「ホーム」を書きおろすなど、活躍の場は広がるばかりだ。

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幼少期からピアノを習っていたほか、多くの楽器に触れる機会が多かったというエイミー。ソロ活動の一方で、サポートを経て18年にテンパレイに正式加入。

彼女のライブを初めて観たのは16年の夏の終わり。まだeimieという男女ふたり組のユニットで活動していた時だ。当時すでにリトル・ブーツやコンピュータ・マジックなど、海外の女性ミュージシャンによるDTM系エレクトロポップミュージックの認知は広がっていて、日本でも原石のような輝きを放ちつつ、類を見ないエイミーのセンスに惹きつけられたのを、いまも強く記憶している。奇しくもその日はeimieの解散ライブであったのだけど。

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コロナ禍で落ちた気持ちを、引き上げてくれた楽曲。

今回の2ndアルバム『アナイアレイション』で特筆すべきことは、親和性に溢れたグルーヴのベースラインに水を得た魚のように心地よく歌うボーカル。そして、ためらいを超えて、自分に浴びせた言葉もあるという、痛烈な歌詞。トラックメイカーとしても活躍するエイミーは、演奏面は気心の知れた仲間たちと音作りを楽しむ一方で、歌詞ではどこまでも自分自身と対峙して完成させた秀作なのだ。アルバム一枚を通して聴く魅力をTV番組で語っていたこともあってか、全曲を通しての流れなどの完成度も高い。

自分に潜む二面性と真摯に向き合ったということで思い出すのは、エイミー(水瓶座)と同じ風の星座生まれのアラニス・モリセット(双子座)だ。アラニスは早くから自分の二面性にこだわり、デビューからしばらくの間は自意識と無意識、憎悪と愛情といった両極を行き来し、不安感や苦痛に苛まれながらも、自身のなかでバランスを取ることを課題として曲作りを行なっていた。実際、風の星座生まれに秀でたシンガー・ソングライターが多いのは、誰もが持っているであろうと思われる二面性を人一倍意識しがちということなのだろうか。

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写真上は今回のアルバムを制作した押入れを改造して作った自宅スタジオ(音楽制作室)。下は引っ越し後の現在の自宅スタジオ(音楽制作室)。photos: AAAMYYY

3月にテンパレイの取材で会った時に、コロナ禍で「相当気持ちが落ちた」と話していたエイミーを引き上げた原動力は、このアルバムに収録されているコロナ禍に生まれた楽曲だ。しかも友人が参加したことで、音楽という無限の宇宙の中で触発し合い、エイミーの歌の才能を開花させている。一方でその演奏には、トーク・トークやニュー・オーダーあたりを想起させるUKロック的ギターサウンドがあったり、M.I.A.のようなスポークンワーズ的な響きもあったり、演者の意識とは別の筆者個人の記憶を多々同調させながら、より豊かに聴ける楽しみが拡がる。それゆえ、読者も『アナイアレイション』を聴くことで、自分と対峙し、結果、気持ちを上げることができるのではないかと想像してしまう。

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内面の自分が外面の自分と対峙した歌詞、仲間と楽しんだ演奏。

――素晴らしいアルバムですね! どういうアルバムにしたいと思って制作していったのですか?

エイミー(以下A):ありがとうございます。今回はどうしても自分の内面にフォーカスするような内容が、曲を作るたびに増えているなぁと実感して。今年に入って2回目のレコーディングをする時には(以下に紹介する4曲)、内面的な要素、ちょっと恥ずかしいこともすべてさらけ出すような感覚でやるようになっていたので、それが必然的にアルバムの方向性になったのかなぁと思います。

――今までになかった強い言葉、たとえば「これぞ生き地獄 逃げ場のないレガシー」「自分の進む道くらいあの時決めてたら良かった」などがありますが、ためらいを超えた歌詞を書くようになったきっかけは?

A:いままでは、自分の発言や行動が原因で反発が起きたりしないように、人当たりのいい外面を作り上げていた感覚があったんです。でも、コロナ禍の最初の緊急事態宣言の頃、SNSに心無い言葉が飛び交うような時期があった時に、自分の発言を含めて、何が正しい悪いとか何が秀でていて劣っているとか、そもそも自分が持っている感覚が違うのでは?という考え方になっていって。そのことが、「パラドックス」の歌詞のように、自分を振り返って悪かったと思うことや、過去の隠したいようなことも受け入れる感覚に変わっていくひとつの要因だったのかなと思いました。

幼少期のエイミーを父親が8ミリで撮影した映像を使用。

――実は「パラドックス」は、サビの展開をはじめ、ベースと鍵盤と歌のコンビネーションの良さ、また全体を覆う乾いた金物の音、その1クリック前のめりにしたビート感や、最後のオチのひと言含め、いまいちばん気に入っている曲なんです。

A:ありがとうございます(笑)。この歌の中でいう“あなた”という一人称は、自分の中では私に対しての対象という。制作していたのが、内面の自分が外面の自分と対峙して素直に感情を伝えたりとか、そういうやりとりが自分の中であった時期だったので、そういう二面性も曲に落とし込みながら、セラピーのような感じでリリックも書けました。

――この曲をはじめ、どの曲もベースラインとの相性の良さをはじめ、演奏もすごく歌に合っていますよね。

A:トラックはshin sakiuraと一緒に共同で作っていて。ベースはテンダー、ギターはオドフットワークスのキイチ(Tondenhey)が弾いているんです。私とはちょっと違う考え方とか要素が今回のトラックに反映されていて、それが自分の中で新しくて、刺激的ですごく楽しくて。それもまた自分のセラピーになった感じがしました。友だちを呼んで楽しく遊ぶみたいな感じに近いかもしれません。

――「天狗」は、荘子itと一緒にやっているからこそ、いままでにないようなストレートなリリックなのかも。

A:そうですね、いちばんストレートかもしれないです。この曲もかなり自分への戒めのようなリリックなんですけど、最初はしっくり来ないというか、自分の中だけでは解決できないトピックなのかなと思って、荘子itくん(ドスモノス)はすごく欲しい言葉を言ってくれる人という印象が以前からあって、前から繋がりがあったので、好きに歌詞を書いてもらって、歌ってもらうことで完成したような曲です。

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コンプレックスのあった歌を、心から解放した。

――歌に関して言えば、「アフター・ライフ」では日本的なメロディで、しかも熱唱しているように感じます。前作の『ボディ』では、甘い声質をあえてサウンドに寄り添わせていたように感じたのですが、今回は自分の歌をどう活かしていこうと思いました?

A:これは、まわりからの影響が強くて、テンパレイの小原(綾斗)など、もともと歌をメインでやろうと思っていなかった人たちがもつ表現力みたいなものがすごくいいなって思う時期があって。私には“うまく歌ってないから”というコンプレックスがあって、うまくないからこそ声質を活かすところに固執してしまっていたのかもしれない。なので、今回はそういった邪念を捨て去って、好きなようにやろうとレコーディングしたので、曲に合わせた歌い方というか、“したいからそうした”という、心の解放というか、歌の解放がありました。

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キャビンアテンダントになることを目指しながら大学で通訳の勉強をしていたが、カナダ留学中にスケートボードを通して音楽に興味を持ち、帰国後に曲作りを開始したという。

――歌も本当にとてもいいですよね。そして、終盤の「テイクス・タイム」「アフター・ライフ」の2曲はセットのように感じました。

A:輪廻転生や死後の世界にフォーカスして書いている2曲なんですけど、確かに歌詞の内容も似てますね。輪廻観は日本人の中ですごく強いものなのかなと思って、でも別の角度から物事を見てみたかったし、当事者としても思うことがあったので、このタイミングでアルバムには落とし込んで行こうという感じで書きました。

――この2曲に「ヒトでいるのが馬鹿馬鹿しいのさ」「死ぬ間際にわかるなら何?」といった歌詞がありますが、死に際とか、考えるようになりました?

A:もうまさに。

――結構ヘヴィなことがあった、とか。

A:身近な人の死ですね。

――コロナ禍は続いているし、この2曲を書いたからと言って、心の整理は簡単にはできないとは思いますが、自分なりにどう生きて行こうというのは見えてきました?

A:そうですね。「大往生だったと言われる人生がいい」っていう人もいるんですけど、私は自分がよければいいかもって思える人生にしようと思うようになりました。

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今後は洋服の製作、将来の野望はシンセサイザー博物館の設立。

――このアルバムタイトルにしたのは?

A:直訳すると「対消滅」だったり、ふたつの物が合わさった時に大爆発を起こして、消滅してしまうという意味合い。2020年が、外面の自分より内面の自分を大切にしようとか、本来の自分を大切にしようという二面性の対峙が起きたので、この「アナイアレイション」という言葉がすごいしっくりしたと思い、このタイトルにしました。

―― ある意味、キメラと表裏一体かも。キメラはひとつの個体の中に遺伝子型の違う組織が互いに接触して存在していることを指すので。

A:なんか、キメラの方が近いような気がしてきました(笑)。

ビームスとスペースシャワーTVとの共同プログラム、「PLAN B」 AAAMYYY×Margtの動画から。

――エイミーを知るにあたって、オススメの映画や本があれば教えて下さい。

A:一番好きなSF作品は『インターステラー』(2014)。アポカリプスに向かうような、もう人が住めなくなるような地球になるよっていう状態で、人間が何をするのか、どういう判断をして生きるのかとか、そういう人間模様を描いている点が面白いという理由で好き。ネットフリックスのドラマでは『ガールボス』(2017)。古着を売って稼いでいた女の子が、起業していっぱい失敗しながら成功していく話なんですけど、自分が頑張ろうかなとか、何か新しいことをやってみようかなと思った時によく観ます。

――最後に、今年30歳を迎えたところで、今後さらにやっていきたいことはありますか?

A:近いところでは、洋服を作りたいというのがあって進行中です。最終的には、誰でもシンセサイザーに触れてレコーディングできてという、シンセ博物館みたいのを大自然の中に作りたいという野望があります。

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『Annihilation』ワーナー¥2,750

AAAMYYY公式サイト
https://aaamyyy.jp

Annihilation Tour
2021年9月10日(金)恵比寿リキッドルーム SOLD OUT
2021年9月15日(水)名古屋クアトロ
2021年9月16日(木)梅田クアトロ

*To Be Continued

音楽&映画ジャーナリスト/編集者
これまで『フィガロジャポン』やモード誌などで取材、対談、原稿執筆、書籍の編集を担当。CD解説原稿や、選曲・番組構成、イベントや音楽プロデュースなども。また、デヴィッド・ボウイ、マドンナ、ビョーク、レディオヘッドはじめ、国内外のアーティストに多数取材。日本ポピュラー音楽学会会員。
ブログ:MUSIC DIARY 24/7
連載:Music Sketch
Twitter:@natsumiitoh

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