AIに聞く、感動で毎回泣けてしまう最新アルバムの裏話。

最近、深く感動している1曲はAIの歌う「アルデバラン」だ。年が明けてから少しして、たまたま紅白歌合戦で彼女が「アルデバラン」を歌っている映像を見る機会があり、それを見ていたら不意に泣けてしまったのだ。しかも、その後も「アルデバラン」を聴くたびに何故か毎回泣けてしまう。そんな思いを伝えたく、また、本人にこの歌への思いなどを聞きたくなり、アルバム『DREAM』を発売するタイミングで久しぶりにAIにインタビューを行った。

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歌詞もメロディも完璧な「アルデバラン」。

――(最初に感想を伝えつつ)「アルデバラン」はNHKの連続ドラマ小説「カムカムエヴリバディ」の主題歌ですが、最初に曲作りを依頼された時はどんな条件があったのですか?

AI:お話が来たときは、もちろんドラマはできていないので、親子3代の物語で、途中までの展開を大まかに教えていただいて。それ以外にキーワードとして、平和とか日の当たる場所、太陽とかルイ・アームストロングとかジャズとか書いた紙をいただきました。それを見た時に自分の好きな方面とすごく合うと思ったんですけど、ドラマの設定が戦前からいまの現代までとかなり長いので、曲をいまっぽくしても最初の方に合わないかな、と思いながら書いていました。なかなかみんなの意見が揃わなくて、そこで森山直太朗さんにお願いしたところ、「AIちゃんにいいんじゃないかと思う曲がちょうどあって」と、渡された曲が「アルデバラン」だったんです。それがもうぴったりで。

――サビの“笑って笑って”のところから、“君と君の”の「と」の声が裏返る感じ、最後のゴスペルへ流れる自然な感じも、2019年に聖歌隊との共演したことが身体に染み込んでいるようで、細部にわたってAIさんでないと歌えない歌、すごいヴォーカリストだなと思って聴いています

AI:ありがとうございます。確かに、ゴスペルの感じは自然でしたね。

 

――歌いながら気になった部分はどのあたりでしょう?

AI:最初の歌詞“君と私は仲良くなれるかな/この世界が終わるその前に”を見ただけで、まずグッと来て。そこを「いつ平和になれるのか」というメッセージに受け止めて、“出来うるすべてを”のメロディの部分で「こっちに流れるんだ」とか思いながら、そこから“笑って笑って 愛しい人”の言葉と、“君と君の大切な人が幸せであるために”という言葉は、「その気持ち、私も言いたい」、泣こうと思えばいくらでも泣けると思いました。でも、泣いたら歌えないので(笑)。あと、“笑って〜”の歌い方から“不穏な未来に〜”と続く、プッシュしながら歌う、この変わり方が難しいですね。

――直太朗さんから指導があったの?

AI:歌をもらった時に直太朗さんのヴァージョンを聞いているじゃないですか。それが最高だったので、そう歌いたいと思ったんですけど、なかなか難しい。で、結局ちょっと自分の感情にまかせてやったらこういう感じになったという。

――それが最高だったんですよ。私は子どもの頃から赤い星の1等星アルデバランとか真っ白なシリウスとか、冬の星座の星が好きだったので、そこもピンポイントでした。

AI:知っている人は知っているんですね、赤い星。いつか自分の目で見てみたいな。
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私は「なにがDREAMだよ」っていうタイプ。

――AIさんは、『和と洋と』(2017年)、『It’s all me Vol.1 』『It’s all me Vol.2』(ともに19年)と、共演者もソングライターもボーダーレス、グローバルなアルバム、楽曲を発表してきています。今回の『DREAM』はそこから進化した内容で、歌詞を含めて曲そのものを自分以外の人に委ねたものが目立ちます。人の書いた曲を歌うにあたり、拘った点はありますか?

AI:洋楽だとカラオケみたいな感じで歌えるんですけど、日本語で歌うときは、少し前までは自分の言葉じゃないと不自然だったり、嘘っぽいなとか思っていたんです。でも「アルデバラン」は、直太朗さんの書いたメロディラインと言葉がばっちりで、この歌詞でないとダメという感じ。今回はほかにもらった曲も全部この感じがぴったりでいいと思ったので、そのまま歌いました。

――Nao’mytさん(安室奈美恵、三浦大知などに楽曲提供)の「Welcome Rain」は、歌うのが難しくなかったですか? 譜割りだったり、サビの部分の言葉の音の置き方だったり、すごく凝っていますよね。

AI:これがいちばん難しかった。この曲は、もちろんメッセージもいいんですけど、音楽の雰囲気からしておもしろくて、人に聞かせたいと思った1曲ですね。

――1曲目の「アルデバラン」、中盤の「Welcome Rain」、アルバムタイトルにも繋がる最後の「WE HAVE A DREAM」への流れ。このアルバム『DREAM』には包み込むグローバルな感じ、グローバルの上のユニバーサル、壮大な感じを受けました。

AI:ホントそうです、すごく壮大にしたという感じ。「WE HAVE A DREAM」はいままででこれでもかというくらい自分でコーラスを入れて、海外から人の声をもらって入れています。

――そこまでDREAMにこだわったのは?

AI:こんないまだからこそ、やっぱりDREAMを言わないといけない、「WE HAVE A DREAM」っていうタイトルも強いから、本当に人に信じさせないといけないという思いの強さからですね。DREAMというのをすごい信じ難い、私がそういう頭だったからかもしれないですけど。「なにがDREAMだよ」っていうタイプなんです、私、

――そうなの?

AI:「DREAM最高!」って思っている自分とは、別にそういう自分がいる。いままでそういう感じだったし、歌では気持ちを言えるけど恥ずかしくて自分からあんまり人に大好きだよとか言えるタイプではなくて。でも、「やっぱり素晴らしい言葉だな」とか、「いまこれが必要だな」と思うことがいっぱいあるので、今回余計なことを考えないで、思うようにやった感じですね。
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レコーディングで泣きそうになったらOK。

――東日本大震災の後のAIさんの歌はface to face、個人個人に語りかけているように感じる歌が多かったのですが、今回のアルバムは、歌がみんなに降り注いで共有できるというか、コロナウィルスという共通の枷があるからなのか、個々に収まらず、人間として受け入れるべきものとして深く入ってくる感じがします。

AI:年々、もっと伝えたいと、歌に気持ちをもっと入れるようになりました。レコーディングするときはひとりで強く思うことで、たまに歌う時に泣きそうになるんですけど、泣きそうになったら、自分の中で「OK」っていう感じなんです。これは誰にも言ってないですけど、そう思いながら歌うと違うんじゃないかな、と自分では思ってやっています。

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アメリカ合衆国ロサンゼルス生まれ。鹿児島県鹿児島市育ち。国内での活躍をはじめ、クリス・ブラウンやスヌープ・ドッグ、ザ・ジャクソンズ、チャカ・カーンなどレジェンド・アーティストとのコラボレーションも多数。

――それが伝わるから「アルデバラン」で泣けたんだと思います。あと、以前のAIさんはその気持ちが強すぎたのか、いまは大人になったのか、いろんな人と共演することになったからか、そこはわからないですが、その思いの強さが、すごく優しく響いてくる感じがあって。去年のライヴを見ていても、メアリー・J・ブライジを彷彿させるような闘うイメージが強い一方で、とてもピースフルな性格もずっと出ていて。その闘う姿勢と平和主義というのは、どのようにバランスをとっているの?

AI:うれしいですね、そういってもらえると。自分の曲でダメージを受けて欲しくないし、嫌な思いを持って欲しくないから、なるべく人を傷つけないようにとは思います。そこはもちろんチェックしていて、自分がいちばん嫌なお客さんのつもりで聞いてみたり、人に勘違いして受け止められて何か言われるかな?とか思う曲も、自分で納得してできるところまで考えてから自分でOKを出しています。

――いいアーティストや作家は、いい批評家でもあるそうです。

AI:そうなんですね。
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失敗や成功の中からの感じた感動を歌いたい。

――「First Time」もすごく好きで、今の冬季オリンピックの楽曲にぴったりだなぁと思って聴いています。RIEHATAさんが素敵な声で、AIちゃんとの相性も良く、これはミュージック・ビデオを作っていただきたいくらいです。

AI:うれしい。これまさしくその時(東京オリンピック)に作ったんです。オリンピックの時期っていっぱい人はくるし、メッセージはいっぱい出さないと、と思っていたのがきっかけで。いま、MVをどうするか練っているところ。やっぱり、映像で彼女の踊りと歌とが一緒になった時が、このメッセージの一番ヤバイものを見せられると思うから。

――この曲は前の「Expectation」を書いたフェリシアとファロンのキング姉妹とのコラボですが、前回と歌詞の世界観が全然違いますね。バーナード・ハーヴィー(ジャスティン・ビーバー等)のプロデュースも凄くいい。

AI:LAに行って一緒に作っている時に、彼女たちが「どういうのがいい?」って聞いてきて、自分が生まれて初めてこの仕事についた時の気持ちとか話していって、最初に失敗した時とか成功した時とか、みんなもそれがあるから話が盛り上がって、「そういった中に感動があるよね」というところからできていって。

 

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――「IN THE MIDDLE」も「THE MOMENT」も先にリリースされていたこともあって、すでに聴き込んでいますが、どの曲も好きです。全体にバックトラックの軽やかさがとても聴きやすいですね。

AI:そうですね、あんまりガッツリしていなくて緩やかな感じ。かなりレイドバックな感じで。結構癒し系が多いかもしれないですね。

――アルバムジャケットも「アルデバラン」のミュージック・ビデオの撮影時のカットだと思いますが、これまでのカラフルさから一転してモノトーンで驚きました。

AI:「アルデバラン」の時に、周りが「これまでと全然違うチームでミュージック・ビデオをやってみましょう」となって。あと、(メッセージを)しっかり伝えたい曲だったので、いろいろ化粧したり髪型や服に凝ったりというより、自然に近いものがいいんじゃないかということでやってみましたね。

――このイメチェンで、気持ち新たにAIさんの歌と向かい合えるし、心の奥まで音楽が染み渡っていくような気持ちになります。

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『DREAM』(通常盤)¥3,300/ユニバーサルミュージック。ライブ映像+MV集を収録した限定盤(CD+BD)もしくは(CD+DVD)ともに¥5,500もある。

『DREAM』スペシャルサイト
https://sp.universal-music.co.jp/ai/dream
AI“DREAM TOUR”
https://aimusic.tv/category/live

*To be continued

Interview & text: Natsumi Ito

音楽&映画ジャーナリスト/編集者
これまで『フィガロジャポン』やモード誌などで取材、対談、原稿執筆、書籍の編集を担当。CD解説原稿や、選曲・番組構成、イベントや音楽プロデュースなども。また、デヴィッド・ボウイ、マドンナ、ビョーク、レディオヘッドはじめ、国内外のアーティストに多数取材。日本ポピュラー音楽学会会員。
ブログ:MUSIC DIARY 24/7
連載:Music Sketch
Twitter:@natsumiitoh

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