実はこんなに料理好き! スヌープ・ドッグが熱く語る料理本。

 

スヌープ・ドッグによる『スヌープ・ドッグのお料理教室(原題:From Crook to Cook: Platinum Recipes from Tha Boss Dogg’s Kitchen)』が発売になった。表紙を開くと、この本を作るきっかけとなったマーサ・スチュワートの序文からはじまり、ブレックファーストからランチ、ディナー、デザート、ドリンクと、フルコースのメニューにも対応できるバリエーション豊富なレシピに、スポーツ観戦用だったり、パーティ用だったり、さらには選曲リストまで掲載されている。ハッピーモード全開の愉快な文体に、写真やデザインのセンスもよく、眺めているだけで空腹感と満腹感が同時に押し寄せてくる贅沢な内容だ。

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スヌープ・ドッグ。1971年アメリカ西海岸出身のヒップホップMC、俳優。

スヌープ・ドッグによる、おしゃれで楽しさ満載の料理本。

たとえば自宅でのスポーツ観戦に向けた[ゲーム・デイ:フットボールの時間だぜ]のページでは、スーパーボウルをスヌーパー・ボウルのビューイング・パーティと称して“チャンピオン級のスナック”のレシピを用意。フライドポテトを使ったスクワッドアップ・チリ・チーズフライ、「このレシピのトッピングを用意したら、ホイッスル吹きまくるレフリー、主導権はお前のもんさ」というコメント付きでホット・ライク・ア・スキレット・ピザなどが並ぶ。BGMの選曲はDJキャレドの「オール・アイ・ドゥ・ウィズ・ウィン」から始まり、自身の曲やガンズ・アンド・ローゼズ、クイーン、ブラック・アイド・ピーズなど、料理をする時や食する時の気分を盛り上げる曲を軽妙コメントと合わせて取り上げている。

スヌープ・ドッグとは、ウエストコーストを代表するヒップホップMC。この名前は母親が、彼の目がスヌーピーに似ているからとつけたあだ名だそうで、初期はスヌープ・ドギー・ドッグと名乗っていた。いろいろ悪さをし、そこからスヌープ・ライオンと改名してレゲエな音楽をやっていた時期もある。ブラック系やヒップホップ系の音楽を好きな人なら知らない人はいないほどの大御所だが、そこまでではない読者でも、ケイティ・ペリーの大ヒット曲「カリフォルニア・ガールズ」(2010年)に参加し、ミュージックビデオにも登場していたアノ人、といえば伝わるかと。

 

スヌープ・ドッグの曲で大ヒットした「ジン&ジュース」(1994年)をはじめ、歌詞(ライム)に料理の名前が頻繁に出てくるが、実はこんなに料理好きとは知らなかった。彼は2008年に元祖カリスマ主婦として知られるマーサ・スチュワートのTV番組にゲスト出演したことが縁で、それから一緒に番組だけでなく、ついには書籍まで作ってしまった。料理本の翻訳者のKANAさんはブラックミュージック系を得意とする通訳者としても活躍し、スヌープにも詳しいとあって、話を聞いた。

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料理でマーサ・スチュワートと意気投合したスヌープ。

――この料理本を読む前と後でスヌープ・ドッグに抱いていた印象は変わりましたか?

KANA:料理本の前にマーサ・スチュワートとの番組を少しだけ観ていたので、「やっぱり出すんだ」という印象がいちばん強かったです。彼自身、実は家庭的で家に仲間や家族、近所の子どもたちを集めてパーティをするのが好きなのだと聞いていたこともあり、料理をすることを知った時もさほど驚きませんでした。アメリカでは特に昔からBBQは男性が仕切るのは定番でしたし、実際、ラッパーの人たちは家庭的な人が多いんです。外ではヤンチャな人も多いのでそういう印象をあまり持たれていないかも知れませんが(笑)。

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いわゆる男の料理本かと思いきや、ヘルシーなものやスイーツもあり、女子腹にも優しい。

――マーサとの番組ではどのような雰囲気で一緒に作っていたのでしょう。

KANA:ふたりが素で会話し、一緒に料理しているのがよくわかるおもしろい番組だと思いました。彼はやっぱり“我が道を行く”タイプですが、新しいものへの好奇心も豊富な様子がすごくよくわかりますね。ふたりのやりとりはある意味シットコム感あふれています。ふたりとも“監房”に(短期間ではあっても)入ったことがあるので、どこか同志みたいな感情もあるのかもしれません。まったく釣り合わなそうなイメージのふたりですが、“厨房”の中ではソウルメイトではないかと思うほど息がぴったりだと感じました(笑)。

カリフォルニア・ロール好きなスヌープは、本書でカリフォルニア・ローリンというレシピを掲載。

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ブラックミュージック好きの翻訳者KANAオススメのレシピ。

――笑。 KANAさんは大学留学の頃からソウルフードに触れる機会が多かったと聞きました。この中から、読者も手軽に作れそうなレシピをいくつか教えてください。

KANA:まずは、「オレンジ(でも色はバーガンディ)チキン・ウィズ・ホワイトライス」。スヌープのレシピはわかりやすく作りやすくおいしいので、これは絶対お勧めします。白米は少し硬めに炊くとよりおいしいかと。

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「ロールスロイスPBチョコレートチップ・クッキー」もお勧め。ピーナッツバターなしのチョコチップ・クッキーはよく自分で焼いていたのですが、PB入りに感動しました。このクッキーだとトースターやエアフライヤー、またオーブンと違い直火なので、火加減の調整にさえ気をつければコンロのグリルでも焼くことも可能。なので、キッチンが狭い方などでもおいしく作れると思います。焼き立てを表面が固くなるくらいまでちょっと冷ましてから、牛乳にディップして食べるとまた最高です。

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ヒップホップはもっとコクがあるカルチャー。

――スヌープらしい軽妙な軽口で笑わせる言い回しだったり、料理のヒントだったり、また料理にうまく映画や音楽の話を挟んでいたり、読んでいるだけでも楽しいです。翻訳するのに注意した点はありますか?

KANA:アーティストが発する言葉はダブルミーニングやトリプルミーニングばかりなので、深読みすればするほど下ネタ炸裂となってしまう(笑)。どの辺りで丸く収めてあとは読んだ人に想像力を膨らませてもらうようにするかの線引きは要求されますよね。さらに今回最も注意したのは、「ヒップホップやスヌープファンが読んでも満足できて、料理にも興味を持ってもらえるように。そして、アメリカのソウルフードのレシピが知りたいからと、料理から入ってきた人たちが、スヌープやヒップホップに対してもしギャングスタだけの怖いイメージを持っていたら、それが少し和らいで“コク”があるカルチャーなのかもしれないと思ってもらえる機会になるように」ということでした。

――隅々からそのこだわりが感じられますし、KANAさんが作成した日本国内で見つかる代用食材リストにも感動しました。

ハウスパーティの様子が伝わるTLCのミュージックビデオ。スヌープも途中登場。

『スヌープ・ドッグのお料理教室』は、とにかく眺めているだけでも気分がアガる料理本だ。「このドッグさまのリード通りに作れば、これからはターキーの肉がバサバサになることもなく、サイドディッシュの味がないってこともなくなるぜ!」、「これから紹介するチャンピオン級のスナックに関しては部屋にいる全員が大満足するはずだぜ」といったスヌープさまの頼もしいお言葉に従って作れば、絶対に楽しい時間を過ごせそう!

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『スヌープ・ドッグのお料理教室』
スヌープ・ドッグ著、KANA翻訳 晶文社刊 ¥3,410

*To Be Continued

text: Natsumi Ito

音楽&映画ジャーナリスト/編集者
これまで『フィガロジャポン』やモード誌などで取材、対談、原稿執筆、書籍の編集を担当。CD解説原稿や、選曲・番組構成、イベントや音楽プロデュースなども。また、デヴィッド・ボウイ、マドンナ、ビョーク、レディオヘッドはじめ、国内外のアーティストに多数取材。日本ポピュラー音楽学会会員。
ブログ:MUSIC DIARY 24/7
連載:Music Sketch
Twitter:@natsumiitoh

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