阿部寛とCharaが初共演、ED曲まで見逃せないドラマとは?
Music Sketch 2022.09.21
9月14日(水)から独占配信された、動画配信サービスディズニープラス「スター」の日本発のオリジナルドラマ『すべて忘れてしまうから』。主演の阿部寛は、アメリカで開催された「ニューヨーク・アジアン映画祭」でスター・アジア賞を受賞し、世界へ向けた活躍がさらに期待され、ミュージシャンのCharaは、映画『スワロウテイル』(1996)以来の演技となるドラマ初出演で新境地を開く。
燃え殻のエッセイ集「すべて忘れてしまうから」を原作に、阿部は主人公の作家“M”、CharaはMが行きつけの「Bar 灯台」のオーナー、カオルを演じる。初共演となるふたりに話を聞いた。
――まず、おふたりが最初にご覧になったディズニー作品について教えてください。
Chara 私がはじめて有楽町の映画館に母親と観に行ったのは、記憶だと『ダンボ』か『白雪姫』。昔のアニメーションは、もっとゆっくりな動きで、それも結構好きでしたね。
印象に残っているのはダンボのママが歌う子守唄で、切なくて好きでした。
阿部 『ダンボ』、大好きでした。僕も幼少期の最初の記憶は『ダンボ』かな。そこからゾウが好きになって、よく見ていた記憶があります。
Chara 阿部さんが何歳くらいの時でした?
阿部 幼稚園ぐらいだったと思います。
Chara その頃から大きかったの?
阿部 幼稚園でも、後ろから3番目くらいでしたね(笑)。
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――今回「ディズニープラス」からの出演オファーがあった際、どのような印象を受けました?
阿部 配信ドラマは初めてで、いままでご一緒したことのない監督たちだったので、どんな新しいことができるんだろうという期待がありました。配信は、みなさんが自分の好きな時に好きな場所で楽しんで見てくださるわけだから、そういうのも面白いなぁと思うし、世界に配信された先の展開がどうなっていくのか楽しみです。

Chara 「ディズニープラス」は音楽系でもいいコンテンツがあって、それも独特な感じで楽しめるんですよね。阿部さんがおっしゃっていたように、忙しい中でも好きな時間に楽しむことができるから、配信作品は好きなんです。

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――おふたりの初共演の印象を聞かせてください。
阿部 Charaさんが喋っている言葉は、セリフなんだけどCharaさんの言葉なんですよね。普通の役者さんが持っているあたりまえに近い間では全然なかったですね。それが本当にすてきでおもしろかったし。

Chara おっ!褒められた(笑)。
阿部 監督が狙っているのもまさにそこ。ナレーションもそう。それを僕は楽しんでいました。
Chara あとから(Mのモノローグ的な)ナレーションをやらせてもらったんです。新しいことをやるのは好きなので、歳を重ねていって新しいことをできるのはすごく素敵なことだなと思って。
――Charaさんの阿部さんの印象は?

Chara 事前に女優の友達に阿部さんの印象をリサーチしたんです(笑)。そうしたらみんな口を揃えて「素晴らしい人だし、現場でのお心遣いも素敵で、すごくいい人だよ」って言っていて。実際にご一緒しても、阿部さんはそのまま阿部さんだったけど、やっぱりプロだなと思いました。経験だけの演技じゃなくて、その場の感性もあって。それに、私はミュージシャンなので耳で生きているので、声が素敵だと思いました(笑)。「声の倍音が素敵だな、歌わないのかな」って思いました。
阿部 無理です(笑)。
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――そのカオル役とナレーションとは、どのように取り組んだのですか?
Chara いろいろな人の日常を描いた燃え殻さんのエッセイがベースにあって、そのいろいろなところを爪弾いたストーリーがあるわけですけど、私がナレーションする阿部さんが演じた役の脳内は、普通は言葉にしないようなことですよね。でもそれって、私は普段からみんなが言葉にしないようなことをメロディに歌詞をつけて言っているし、「歌うように話す」ということは日頃から意識しなくてもやっているので、ナレーションもその類かもしれない。ただ、演技の邪魔はしたくないし、阿部さんの役柄と合体して、変に波長が合いすぎるのも面白くない気がしたので、そこは監督の指示に従ってわりと自然体でやりました。
阿部 本来なら僕がやるべき自分の声なんだけど、それを僕がやったら普通になっちゃうので、かといって他の人がやったらまた違うことになる。でも、Charaさんにやってもらうと不思議な感じになって(笑)。それがやはり監督の狙いです。最初台本を読んでいて、「このナレーション、僕がやるんじゃないのに誰がやるんだろう」って思っていた。けど、Charaさんがやるって聞いて、これはおもしろい、なるほどって納得しました。
――Charaさんは久しぶりの女優業はいかがですか?

Chara 私は「演じたんですかね?」くらいの感覚です(笑)。通常、ドラマには主題歌やエンディングテーマがあるけれど、このドラマは私が演じたカオルがオーナーをやっている「Bar 灯台」で、各話ごとに違うアーティストが演奏するんです。私も歌った回があって、カオルは音楽が好きという役柄で、自分と近い設定だったからできたのかな。これまで映画2本だけ出演して、それも26年前で、今回ドラマは初めてだから、撮影の合間は楽屋に戻るというのも知らなくて、最初はウロウロしていたり(笑)。「ドラマってこんなふうに作るんだね」っていう感覚で参加していたところもあります。
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――おふたりにとって、「Bar 灯台」のような居心地の良い場所があれば教えてください。
阿部 僕は車の中ですね。待ち時間とか長時間過ごすことが多いので、どれだけリラックスして過ごせるかを楽しんでいて、動けないけど、いつの間にか時間が過ぎていくような感じが好きです。そういう意味で、飛行機に12時間とか14時間とか乗っているのも大丈夫です。
Chara いろいろ置いているんですか? これがあるといいなといった匂いとか。
阿部 特にないんですけども、もうなんかね、どれだけやり残してることができるか、睡眠も時間を使うのが楽しいぐらい。飛行機は特にね。
Chara 私はおうちが好きです(笑)。長年住んでいるので植物と向き合っている時間も多いし、コロナ禍はいつ落ち着くのかというのがありますけど、家で気の知れた友達だけ呼んでBARをやりたいなと思っていて。その時は飲みに来てくださいね。
阿部 ぜひ(笑)。
――最後にドラマ『すべて忘れてしまうから』の見どころを教えてください。
阿部 Mの恋人 “F“がいなくなるという展開で、探すうちに彼女について自分の知らないことがいろいろ見えてきて、それによって自分自身や過去の自分をも発見していく。ミステリーでもあり、ラブストーリーでもある楽しめるドラマなので、ぜひ見ていただきたいですね。
Chara いままでにあったミステリーとはまた違って、大人のほろ苦いラブストーリーも加わった新しい形のドラマですよね。等身大で共感できると思うので、楽しんでほしいです。

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今作では、各話ごとにエンディングテーマを手がけるアーティストがすべて違うという新たな試みも見どころのひとつだ。本作を手がけたプロデューサーはこの試みに対して以下のようにコメントしている。
――本作は 10 話それぞれのアーティストが全て違うという、これまでのドラマ作品には無かった新しい試みだと思いますが、どのような経緯でこの形式で進めることになったのでしょうか。
これは燃え殻さんと監督の岨手由貴子さんと雑談している中で僕が思いついてしまったのですが、さまざまな日常を切り取ったエッセイを原作とした物語だったので、話ごとにテーマが違ってくると想定している中で、エンディングの味わいが違っていくのはおもしろいだろうし、この作品にマッチするのではないかと考えました。それと見たことがないものにしたかったんです。
――10 話ごとに曲やアーティストが違うだけでなく、ライブパフォーマンスという見せ方にこだわった理由を教えてください。
全10話、異なるアーティストにエンディングソングとも言うべきものを歌ってもらおうと決めた時に、同時に舞台のひとつを小さなライブスペースがあるBARにしようと岨手監督と話していたんです。だから必然的にライブパフォーマンスであるべきだと行き着いたのですが、同時に、このドラマを観ることで素晴らしいアーティストたちのここだけのライブを聴けるというのも、視聴者の満足度を上げると確信もしていました。
監督・脚本/岨手由貴子、沖田修一、大江崇允
原作/燃え殻『すべて忘れてしまうから』(扶桑社刊、新潮文庫刊)
出演/阿部寛、尾野真千子、宮藤官九郎、大島優子、酒井美紀、渡辺大知、青木柚、鳴海唯、見栄晴、渡辺いっけい、Chara
ディズニープラス「スター」で独占配信中
© Moegara, FUSOSHA 2020
https://disneyplus.disney.co.jp/program/subete.html
メゾン ミハラヤスヒロ Tel.03-5770-3291
photography: Kayoko Yamamoto styling(Chara): Kazuhito Sugita(POOL) hair & makeup(Chara): Mana Yamamoto

音楽&映画ジャーナリスト/編集者
これまで『フィガロジャポン』やモード誌などで取材、対談、原稿執筆、書籍の編集を担当。CD解説原稿や、選曲・番組構成、イベントや音楽プロデュースなども。また、デヴィッド・ボウイ、マドンナ、ビョーク、レディオヘッドはじめ、国内外のアーティストに多数取材。日本ポピュラー音楽学会会員。
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