人気プロデューサー/DJのラスマス・フェイバーにインタビュー 前編

1月20日に発売になるFIGARO本誌にも少し記事を書いたように、昨年最もアメリカのヒットチャートを賑わせていたのがEDM(Electronic Dance Music)。わかりやすいところでいえば、カルヴィン・ハリスが手掛けたリアーナの「ウィー・ファウンド・ラヴ」や、デヴィッド・ゲッタ feat. ニッキー・ミナージュの「ターン・ミー・オン」など。EDMとはDJ主導のエレクトロニックを駆使したダンス・ミュージックで、デヴィッド・ゲッタ(フランス)、カルヴィン・ハリス(イギリス)、スウェディッシュ・ハウス・マフィア(スウェーデン)、アフロジャック(オランダ)といったヨーロッパのDJたち、アメリカからはスティーヴ・アオキやスクリレックスといった若者のカリスマ的存在のDJが脚光を浴びている。観客を踊らせる選曲に長けている彼らだけに、プロデューサーとしての才能も秀でている。


そもそもヨーロッパでは大ブームメントとなったハウス・ミュージックを筆頭に、たとえばドイツだったらテクノだったり、イギリスはドラムンベース、フランスもフレンチエレクトロなど、80年代後半から電子楽器やコンピューター・ソフトから作られるエレクトロニックなクラブ・ミュージックが圧倒的な人気を誇ってきた。アメリカでは長い間R&B/ヒップホップの人気が高く、2000年代に入ってフレンチエレクトロを率先して取り入れてきたマドンナらの流れから火が付き、今やアメリカではそれらヨーロッパの産物をEDMとして括り、一気に大ブレイクした感がある。


しかし、そういった流れをチェックしつつも、独自のスタイルでダンス・ミュージックを開拓し続けているアーティストもいる。ジャズを基盤に活躍してきたスウェーデン人のラスマス・フェイバーの音楽は、ヨーロッパテイストを好むFIGARO読者に好まれそうなので、インタビューと合わせてご紹介したい。

130117_music_01.jpgスウェーデンのストックホルム出身の33歳。かなりきっちり喋るタイプのよう。


■ 今一番面白いことができるのはダンス・ミュージックだと思うんだよね。

----当初はジャズ・ミュージシャンだったのに、どのような経緯でDJやダンス・ミュージックのプロデュースをするようになったのですか?

「ピアノは7歳から始め、ジャズピアノは14歳からスタートしたんだ。でもその頃からジャズ以外の、いわゆる世の中で流行っている音楽も聴いてきた。17歳の頃からスタジオ・ミュージシャンや、セッション・ミュージシャンをやるようになり、ジャンルに関係なくキーボード奏者として活動したし、自分のバンドを結成してジャズやファンク、ソウルミュージックをミックスした音楽を演奏していたね。あと、いろんなシンガーのバックバンドにも参加したよ」


自分のオーケストラ、The RaFa Orchestraを率いてのライヴ演奏。「Your Beat Sounds Like」 。


----DJへの流れは?

「音楽業界で働くようになって、イベントのオーガナイザーと知り合い、クラブに出入りするようになると、DJでもありプロデューサーでもある人たちと親しくなった。僕のジャズピアノのトラックも使ってくれるうちに、セッションしたり、DJもやるようになったんだ。一方で、21歳の頃にライナス・ノーダとU2やコールドプレイみたなメロディックなバンドも結成した。アルバムもレコーディングしたんだけど、発売はされなかった。あの頃は本当にいろんなことをやったけど、それが今、いろんな形で役立っていると思うよ」


----そういった様々なジャンルを超えて共通している、自分が気に入っている音楽とはどういうものなのでしょうか?

「メロディやハーモニーかな。僕は一つのジャンルにもサウンドにもこだわって聴くことはない。ジャンル自体もこのサウンドだからこのテンポと決まるのだろうけど、いいと思ったメロディがあれば、どんなジャンルであっても聴くよ」


最新アルバム『We Laugh We Dance We Cry』から「Good Times Come Back feat. Beldina」。


----全米でブレイクしているEDMのプロデューサーは、音を聴いただけで誰がプロデュースしたかわかるくらい個性がはっきりしていますが、ラスマスはシンガーのスタイルに歩み寄って曲を作っている感じがしますね。

「できるだけ多くの人に受け入れてもらうようにということを考えて音楽を作るとなると、みんなが理解できないような部分をできるだけ排除しないといけない。ピットブル(アメリカはマイアミ出身のラッパー/プロデューサー。両親はキューバ人)などは、あえて自分たちが好きなことをやって、ああいう形になっているんじゃないかな。僕の場合はメロディが豊潤なものが好きだから、どうしてもそういう形になる。逆に言うと凄く複雑なコードを使った曲を作ると、スウェーデンの友人に、"これはラスマス・コードだよね"と言われる。ある意味、複雑なものをやればやるほどコマーシャルなものではなくなる部分ももちろんある。でも自分のやりたいようにやっていきたいからね」


----ダンス・ミュージックを意識しているけど、一番こだわっているのはメロディやコード感ということ?

「ダンス・ミュージックは枠組みに過ぎない。そこに自分は意味を持つものを詰め込んで、ということをしたいんだ。逆の言い方をすれば、今の音楽シーンを牽引しているだけではなく、今一番面白いことができるのはダンス・ミュージックだと思うんだよね」


次回は、音楽におけるラスマスの美意識について。

*To be continued

音楽&映画ジャーナリスト/編集者
これまで『フィガロジャポン』やモード誌などで取材、対談、原稿執筆、書籍の編集を担当。CD解説原稿や、選曲・番組構成、イベントや音楽プロデュースなども。また、デヴィッド・ボウイ、マドンナ、ビョーク、レディオヘッドはじめ、国内外のアーティストに多数取材。日本ポピュラー音楽学会会員。
ブログ:MUSIC DIARY 24/7
連載:Music Sketch
X:@natsumiitoh

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