気鋭のプロデューサー、kwes.(クウェズ) インタビュー②
Music Sketch 2012.06.26
4歳の時に祖父母のオルガンを演奏し始め、5歳で祖母から小型のキーボードを買ってもらったというKwes.。10歳の誕生日にはラジカセをもらい、すぐにマイクを立てて、自分の演奏などを録音していくことに興味を覚えていったそうです。
−−−いつ頃から曲を作り始め、自分なりのスタイルができあがってきたと思いますか?
「初めて自分の音楽を作ったのは、レコーディングした音をコンピューターに取り込むことを覚えた13か14歳の頃だね。自分のスタイルを確立させたのがいつだったかはわからない。僕はいつも自分が耳にしたことのない音楽を作ろうと努力している。そのオリジナリティが、どれくらいのレベルかということに関わらずね。それは聴く人の感じ方に委ねるよ」
「実は僕はとても気まぐれで、自分の経験や聞いた話に基づく歌詞を書くことから最初に取りかかる場合もあるし、ベースや鼻歌、もしくはレコーディングしたサウンドからメロディを見つけて、それが曲に発展する場合もある。偶然見つけたサウンドだったり、特定のサウンドだったり、もしくは組み合わさった複数のサウンドだったり、それは場合によるんだけどね」
「サウンドデザインは、間違いなくペインティングに近いと思う。どちらも表現するための形式だからね。ペイントの質が、自分の思い描くサウンドと相互関係にあると言えるんじゃないかな」
−−−「lgoyh.」も大好きです。この曲でのヴォーカルも好きですが、あなたにとって歌や歌詞は"音楽"という全体から見て、どのくらい重要視しているものなのでしょう? ちなみにジェイムス・ブレイクに取材した時に、彼は「僕の場合、歌詞は暗号化されているから、わかる人に通じればいい」と、話していました。
「本当にありがとう。それは音楽に何を語らせたいかよると思うんだ。時には、歌詞やヴォーカル、もしくは音楽さえも、その楽曲の中で表現したい事柄にとって、必ずしも必要でない場合もある。もちろん、大きな助けにはなるよ。そして自分次第で、そのどれよりも大きな重要性を持たせることができる。それって本当にアーティスト次第で、そのアーティストが彼らのアイディアや思い、感情をどう表現したいか次第だと思うんだ」
「ただ、何となくドットや省略記号が好きなんだ(笑)。だから自分の曲にもつけようって思った」
−−−最後に、スピーチ・デベルの作品に関わったことで、アメリカとUKのヒップ・ホップ・シーンの違いとして感じることがあれば語っていただけますか?
「僕はこの手のエキスパートじゃないけど、アメリカのヒップ・ホップ・シーンでは間違いなく、より大きなお金が動いているよね。そもそも場所が大きいし、彼らの企業家精神は世界に大きな影響を与えている。今じゃポピュラー・カルチャーの大部分を占めていると言ってもいいと思う。UKでは、ヒップホップはもう少し先鋭的なものだと思う。とはいえ、最先端のクリエイティヴィティについてはUKもUSも大差ないと思う。でも全体的に言えば、UKのヒップホップの方がエッジーだと思うよ。それにここでは音楽が全般的に分類不可能なものになっている」
kwes.はこれまで自身のシングルやEPに加え、THE XXとのデモ制作、MICACHUやGHOSTPOET、The Jealous Guysなど、さまざまなアーティストと仕事をしてきました。また昨年はスピーチ・デベルに続き、デーモン・アルバーン(ブラー、ゴリラズ、ロケット・ジュース・アンド・ザ・ムーンなどで活動)に誘われて、DRC Music(*注1)に参加しました。
そしてアーティストをサポートする場合は、自分の意見を積極的に押し出すのではなく、「まずは彼らが彼ら自身の創作作業に納得できるようにして、そこから次に彼らに僕が加えるアイデアを気に入ってもらうようにしている」と話し、一方で自分の音楽を、よく言われるような"R&B/ハウス"ではなく、シンプルに"フリー・ポップ"だと説明。「僕は、ポピュラー音楽における哲学というのは、境界を無くすということだと思っている。奇抜さを恐れず、ルールに縛られることなく創造性を大切にするんだ」と、話しています。
私は今回の『meantime ep.』がとても心地よくて、心にリラックスした風を吹き込みたい時に、必ずといって聴いています。今後もプロデュース作品に加え、次のフル・アルバムも楽しみにしていたいですね。
*注1)DRCミュージックとは、デーモン・アルバーンの声掛けで集められた気鋭のプロデューサー集団のこと。2011年7月にコンゴ民主共和国の首都キンシャサで5日間かけてレコーディングし、アルバム『キンシャサ・ワン・トゥ』を制作。このアルバムによって集められた利益は、現地のミュージシャン/パフォーマー、およびコンゴ民主共和国における民間支援団体オックスファムの活動支援に充てられた。
*To be continued
−−−いつ頃から曲を作り始め、自分なりのスタイルができあがってきたと思いますか?
「初めて自分の音楽を作ったのは、レコーディングした音をコンピューターに取り込むことを覚えた13か14歳の頃だね。自分のスタイルを確立させたのがいつだったかはわからない。僕はいつも自分が耳にしたことのない音楽を作ろうと努力している。そのオリジナリティが、どれくらいのレベルかということに関わらずね。それは聴く人の感じ方に委ねるよ」
日本では4月28日に発売されたEP『meantime ep.』は1,000円。
「実は僕はとても気まぐれで、自分の経験や聞いた話に基づく歌詞を書くことから最初に取りかかる場合もあるし、ベースや鼻歌、もしくはレコーディングしたサウンドからメロディを見つけて、それが曲に発展する場合もある。偶然見つけたサウンドだったり、特定のサウンドだったり、もしくは組み合わさった複数のサウンドだったり、それは場合によるんだけどね」
kwes.の楽曲「bashful.」(音のみ)。
−−−Vita Betaのインタビューで、「コードのCは、ブルーの色彩を感じる」といったsynesthesia(共感覚)の発言があったのですが、実際に絵(油絵と言うよりは水彩画?)を描くような感覚でサウンドデザインしているのでしょうか?「サウンドデザインは、間違いなくペインティングに近いと思う。どちらも表現するための形式だからね。ペイントの質が、自分の思い描くサウンドと相互関係にあると言えるんじゃないかな」
−−−「lgoyh.」も大好きです。この曲でのヴォーカルも好きですが、あなたにとって歌や歌詞は"音楽"という全体から見て、どのくらい重要視しているものなのでしょう? ちなみにジェイムス・ブレイクに取材した時に、彼は「僕の場合、歌詞は暗号化されているから、わかる人に通じればいい」と、話していました。
「本当にありがとう。それは音楽に何を語らせたいかよると思うんだ。時には、歌詞やヴォーカル、もしくは音楽さえも、その楽曲の中で表現したい事柄にとって、必ずしも必要でない場合もある。もちろん、大きな助けにはなるよ。そして自分次第で、そのどれよりも大きな重要性を持たせることができる。それって本当にアーティスト次第で、そのアーティストが彼らのアイディアや思い、感情をどう表現したいか次第だと思うんだ」
kwes.の楽曲「lgoyh.」(音のみ)。
−−−ちなみに、名前にも曲名にも「.」(ドット)をつけているのは何故?「ただ、何となくドットや省略記号が好きなんだ(笑)。だから自分の曲にもつけようって思った」
−−−最後に、スピーチ・デベルの作品に関わったことで、アメリカとUKのヒップ・ホップ・シーンの違いとして感じることがあれば語っていただけますか?
「僕はこの手のエキスパートじゃないけど、アメリカのヒップ・ホップ・シーンでは間違いなく、より大きなお金が動いているよね。そもそも場所が大きいし、彼らの企業家精神は世界に大きな影響を与えている。今じゃポピュラー・カルチャーの大部分を占めていると言ってもいいと思う。UKでは、ヒップホップはもう少し先鋭的なものだと思う。とはいえ、最先端のクリエイティヴィティについてはUKもUSも大差ないと思う。でも全体的に言えば、UKのヒップホップの方がエッジーだと思うよ。それにここでは音楽が全般的に分類不可能なものになっている」
kwes.はこれまで自身のシングルやEPに加え、THE XXとのデモ制作、MICACHUやGHOSTPOET、The Jealous Guysなど、さまざまなアーティストと仕事をしてきました。また昨年はスピーチ・デベルに続き、デーモン・アルバーン(ブラー、ゴリラズ、ロケット・ジュース・アンド・ザ・ムーンなどで活動)に誘われて、DRC Music(*注1)に参加しました。
そしてアーティストをサポートする場合は、自分の意見を積極的に押し出すのではなく、「まずは彼らが彼ら自身の創作作業に納得できるようにして、そこから次に彼らに僕が加えるアイデアを気に入ってもらうようにしている」と話し、一方で自分の音楽を、よく言われるような"R&B/ハウス"ではなく、シンプルに"フリー・ポップ"だと説明。「僕は、ポピュラー音楽における哲学というのは、境界を無くすということだと思っている。奇抜さを恐れず、ルールに縛られることなく創造性を大切にするんだ」と、話しています。
私は今回の『meantime ep.』がとても心地よくて、心にリラックスした風を吹き込みたい時に、必ずといって聴いています。今後もプロデュース作品に加え、次のフル・アルバムも楽しみにしていたいですね。
*注1)DRCミュージックとは、デーモン・アルバーンの声掛けで集められた気鋭のプロデューサー集団のこと。2011年7月にコンゴ民主共和国の首都キンシャサで5日間かけてレコーディングし、アルバム『キンシャサ・ワン・トゥ』を制作。このアルバムによって集められた利益は、現地のミュージシャン/パフォーマー、およびコンゴ民主共和国における民間支援団体オックスファムの活動支援に充てられた。
*To be continued

音楽&映画ジャーナリスト/編集者
これまで『フィガロジャポン』やモード誌などで取材、対談、原稿執筆、書籍の編集を担当。CD解説原稿や、選曲・番組構成、イベントや音楽プロデュースなども。また、デヴィッド・ボウイ、マドンナ、ビョーク、レディオヘッドはじめ、国内外のアーティストに多数取材。日本ポピュラー音楽学会会員。
ブログ:MUSIC DIARY 24/7
連載:Music Sketch
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