メトロノミー&デヴィッド・バーン

すみません、すっかりお休みしてしました。2009年ヒット予測の時に書いていたように、メトロノミーのインタヴュー記事をここに掲載する予定だったのですが、急遽本誌で取り上げることになり(現在発売中の3月20日号に掲載)、その代わりを考えているうちに予定が変わるなどして、時間がズルズルと経ってしまいました。

本誌に掲載したメトロノミーの写真は、カッコつけているような、でもふざけているようなポーズですが、実際の彼らはというと、知性派ながらこんな感じにフランクです。

ito1.jpgちょっと笑いすぎかも。

                  

ただ音楽はというと、ダンス・ミュージックともロック・サウンドとも違う独自の音楽世界を構築しようと、わざとチューニングを変えたり、曲作りの中のアクシデントを楽しんでいるため、最初はなんらかの違和感を覚えるかもしれません。その違和感が、彼らが狙うツボなんですけどね。ムーヴメントに便乗しがちな母国イギリスではなく、斬新さを求めるフランスのレーベルから新作リリースが決まったのも、こんなクセのある風変わりなスタイルがフランス人に好まれたからかもしれません。詳しくは本誌のインタヴューを読んでいただければ幸いです。

ヨーロッパのライヴでは、4人編成のダンスグループが登場するそうことが多いそうですが、今年1月に行った東京のライヴでは1ポンド・ショップ(100円ショップの英国版)で買ったという円形の照明を首から提げて登場。叩けば光るというライトで、ライヴをさらにユニークなものに演出していました。

ito2.jpg各自がキーボードの他にギター、ベースやサックスを演奏。

           

イギリス発のムーブメントということでは、フォールズ、フレンドリー・ファイアーズ、そしてこのメトロノミーなど、ジャンルを超えた音楽を創造するシーンを"ニュー・エキセントリック"というキー・ワードで括るそう。イギリスの『Observe』誌から生まれた言葉だそうですが、私は理解できていません。
たとえば80年代後期のマンチェスター・ムーヴメントやアシッド・ハウスから生まれた"レイヴ"があり、その後、 クラクソンズ主導で"ニュー・ウェイヴ"と"レイヴ"を文字って、もしくは"レイヴ"の進化系として"ニューレイヴ"が登場したのはわかるけれど、"エキセントリック"という音楽ムーヴメントってなかったのに、いきなりな感じがして。
メトロノミーとこの日同じステージに立ったレイト・オブ・ザ・ピアは、プリンス、クイーン、ホワイト・スネイク、テクノ・ミュージックなど、いろんな音楽をゴッタ煮にしていて、まさに"ニュー・エキセントリック"という言葉にふさわしい何が飛び出すかわからないエキセントリックな音楽を展開していたとは感じますが、少なくともメトロノミーは"ニュー・エキセントリック"ではないし、本人たちもこのネーミングには苦笑するしかない様子でした。

2月5日号のFIGAROに書きましたが、フォールズ、フレンドリー・ファイアーズ、NY出身のウィークエンド・ヴァンパイアなどは、どちらかというと"トーキング・ヘッズ・チルドレン"と呼ぶにふさわしいほど、70年代~80年代にかけて活躍したこのバンドの影響を強く受けています。

さて、1月の末には、このトーキング・ヘッズの中心人物であったデヴィッド・バーンが7年ぶりに来日しました。彼はソロ活動に加え、ザップ・ママ、ロス・アミーゴス・インヴィジブルズをはじめとする世界各地のミュージシャンを紹介してきたLuaka Bopレーベルの主宰者であり、昨年はブライアン・イーノと27年ぶりとなる新作『Everything That Happens Will Happen Today』を発表しました。

ito3.jpg56歳の今も鬼才衰えず。

彼のライヴは相変わらず独創的で、シャープなサウンドに知性とウィットを織り交ぜ、しかも3人のダンサーと一緒に、コーラス3人やバーン、ミュージシャンまで一緒に踊りだす展開。

ito4.jpgヴィジュアル面でも楽しめたライヴ。

ダンサーはモダン・ダンス、クラシック・バレエ、器械体操とそれぞれ異なったバックボーンを持ち、しかも聞くところによると、沖縄の舞踊などに詳しい人など3人も振り付け師がついていたらしく、予想のつかない踊りに魅了されてしまいました。もちろん、いつまでも最先端を走り続けるデヴィッド・バーンの凄さに非常に感銘を受けてしまい、ますます彼のチルドレン、グレートチルドレンは増えていくに違いないと確信しました。

今年に入って、既に素晴らしいライヴを何本も見せていただいていますが、特にデヴィッド・バーンは感涙ものでした。

PhotoB:Shoichi Kajino 
PhotoC&D:Masataka Ishida


*to be continued*


(※記事・写真の無断転載を禁じます) 

音楽&映画ジャーナリスト/編集者
これまで『フィガロジャポン』やモード誌などで取材、対談、原稿執筆、書籍の編集を担当。CD解説原稿や、選曲・番組構成、イベントや音楽プロデュースなども。また、デヴィッド・ボウイ、マドンナ、ビョーク、レディオヘッドはじめ、国内外のアーティストに多数取材。日本ポピュラー音楽学会会員。
ブログ:MUSIC DIARY 24/7
連載:Music Sketch
X:@natsumiitoh

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