映画『アリス・イン・ワンダーランド』とミュージシャン

大ヒット作『アバター』に続き、映画ファンの注目を集めているのが、ティム・バートン監督作品『アリス・イン・ワンダーランド』。熱狂的ファンをもつティム・バートン監督が、『シザー・ハンズ』(1990)、『チャーリーとチョコレート工場』(2005)などでコラボレーションしてきたジョニー・デップを迎えて制作した新作......というだけでも注目度は高いし、さらに誰もが知っているルイス・キャロルの不朽の名作、またディズニー映画『不思議の国のアリス』の続編として新たに作られたストーリーを、3D上映するとあって、世代を超えて話題になっています。

FIGARO#073A.jpg色彩の限りを尽くしたドリーミーな世界も魅力。

19歳に成長した主人公アリス・キングスレーが、求婚者から逃げ出す途中に誤って"うさぎ穴"に落ちてしまうところから、物語はスタート。かつて過ごしたワンダーランドは"赤の女王"の独裁下となっていて、そこでアリスはジョニー・デップ演じる帽子屋(マッドハッター)から救世主として迎えられ、最初は昔の記憶もないし、状況も把握できなかったけれど、次第に自分の中の"強さ"を認識し、戦う女性となってワンダーランドに棲む人々や動物のために赤の女王に挑んでいく、というストーリーです。登場するキャラクターの1つ1つに個性があって、ティム・バートンならではのメッセージやユーモア、シニカルな視点も盛り込まれているのですが、個人的にはワンダーランドとアンダーグラウンドの境界が微妙なこともあって、また、アリスが地上に戻ってきてからのシーンもしっかり続いていたので、まるで自分もアンダーグラウンドの世界に一緒にいたような錯覚に陥り、観終わった後もしばし想像を巡らすことができたのが楽しかったです。

FIGARO#073B.JPG19歳になったアリスを主人公に、新しい『アリス・イン・ワンダーランド』の世界が始まります。

アヴリル・ラヴィーンがエンディング・テーマ「アリス」を歌っていますが、当初、彼女の"アビー・ドーン"というブランドで『アリス・イン・ワンダーランド』のコレクションをデザインしていたところ、音楽も担当したくなってティム・バートンにお願いし、そして自ら作詞・作曲を手掛けることになったそう。ヴィデオには映画のシーンが使われ、"アヴリル・イン・ワンダーランド"になっています。

FIGARO#073C.jpgまさにイメージにぴったり!? アヴリル・ラヴィーンが歌う「アリス」。

アヴリルは当然ながらティム・バートンの大ファンなのですが、他にも多数のミュージシャンが大ファンであることを公言し、今回この作品にインスパイアされた楽曲を集めた『オールモスト・アリス』というCDも制作されました。アメリカでは3パターンの商品があり、iTunes用にはボーナストラックとしてゼイ・マイト・ビー・ジャイアンツの曲が収録されるなど、ターゲットに合わせて楽曲を収録するほど凝っています。4月14日に発売される日本盤では全19曲も入っていて、ゼイ・マイト・ビー・ジャイアンツ以外の曲をすべて収めています。

ito_d.jpgフランツ・フェルディナンドも参加。

ito_e.jpgマーク・ホッパスwith ピート・ウェンツ。「この映画の一端を担えて、アルバム『Almost Alice』に曲が収録されて、人生の目標のひとつを達成した気分さ!」と、マーク(写真後方)。

ito_f.jpgアウル・シティという名で活躍するアダム・ヤングは、「昔から『不思議な国のアリス』の奇妙で空想的な世界が大好きだった。とてもカラフルで、想像力を掻き立てられたよ。もちろん、このような傑作のリメイクに参加できて、本当に嬉しいね」と、コメント。

主な参加者はアヴリル・ラヴィーン、フランツ・フェルディナンド、ロバート・スミス(ザ・キュアー)、マーク・ホッパスwith ピート・ウェンツ(マークはblink-182、+44、ピートは現在活動休止中のフォール・アウト・ボーイのメンバー)、アウル・シティー、ウルフマザー、オール・アメリカン・リジェクツ、メトロ・ステーションほか多数。ロバート・スミスは、ジョニー・デップ演じる帽子屋を想起させる風貌で、おそらくティム・バートンが大ファンなのでは?ロバートのみディズニー映画『不思議の国のアリス』のサウンドトラックからの「Very Good Advice」をカヴァーしているのもポイントです。

それぞれのミュージシャンが、このインスパイア・アルバム『オールモスト・アリス』に参加できたことを光栄に感じていて、コメントを残してます。そのうちのいくつかを紹介すると......。

「(この曲を作るにあたって)アリスの頭の中に入っていくということが大事だったから、穴に落ちていき、ワンダーランドに入った彼女がどんなことを考えて、どんな風に感じたか、ということを表現していく必要があった。だから自分自身をそういった想像世界へもっていったの。それはとてもドラマチックな体験だったと思うのね。だから、それを歌詞の冒頭の部分でうまく表現できたと思うわ」(アヴリル・ラヴィーン)

「僕らに言わせると、ルイス・キャロルは『不思議の国のアリス』という史上最も創造的な文学作品を残した作家の一人。美とカオスの世界をナンセンスな物語へと仕立て上げ、しかもそれをきちんと成立させている。"ハー・ネーム・イズ・アリス"は、僕らがアリスの物語や映画にインスピレーションを受けてできた楽曲。そんな曲を書けて光栄に思うよ。想像力はとてもパワフルなものだから、みんなも少し夢を持ち、自分の鏡から世界を見るといいんじゃないかな、アリスたちみたいに」(ブレント・スミス/シャインダウン)

「僕らの曲"ペインティング・フラワーズ"は物語に登場する"盲信すること"に着想を得た曲。ハートのクィーンとトランプ達の関係性に最もよく表現されているコンセプト。トランプ達が彼女の怒りを恐れ絶対的に服従するのを描いたのが、ディズニー映画のオリジナルソング"ペインティング・ザ・ロージズ・レッド"。僕らはそのコンセプトに再び着目し、この曲を現実世界に当てはめてみた。物事を受け入れつつ、自分らしく在ることを歌っているんだ」(アレックス・ガズカース/オール・タイム・ロウ)

FIGARO#073G.jpg豪華なラインナップが揃ったインスパイア・アルバム『オールモスト・アリス』。


決してロック中心ではなく、意表を突くフランツ・フェルディナンドの曲をはじめ、それぞのミュージシャンが独自に『アリス・イン・ワンダーランド』の世界を解釈して歌っているので、全く飽きることがありません。映画鑑賞に合わせて、是非聴いてみてください。

© Disney Enterprises, Inc. All rights reserved.
2010年4月17日(土)より全国ロードショー
公式サイト http://www.disney.co.jp/movies/alice/

*to be continued

音楽&映画ジャーナリスト/編集者
これまで『フィガロジャポン』やモード誌などで取材、対談、原稿執筆、書籍の編集を担当。CD解説原稿や、選曲・番組構成、イベントや音楽プロデュースなども。また、デヴィッド・ボウイ、マドンナ、ビョーク、レディオヘッドはじめ、国内外のアーティストに多数取材。日本ポピュラー音楽学会会員。
ブログ:MUSIC DIARY 24/7
連載:Music Sketch
X:@natsumiitoh

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