オペラ『ルサルカ』@新国立劇場 ①
Music Sketch 2011.12.01
オペラは年に1、2回鑑賞するかしないか・・・・・・というレベルなので、恥ずかしいほど全く専門的なことは語れません。 しかし、「ノルウェーのオスロで初上演された時には、衣装やセットが美しいうえに、ファンタジーなのに社会性があり、若者にも多いに歓迎されたそう」と、すすめてくれた友人のお誘いを受けて、11月26日に観に行ってきた『ルサルカ』は、そんな私でもとてもとても面白いと感じた作品でした。
何しろ今回の演出家は、大ヒットした映画『ロミオとジュリエット』(1996年)や映画『ムーラン・ルージュ』(2001年)のバズ・ラーマン監督の助手を務めたことがあり、現在はノルウェー国立オペラ・バレエのオペラ芸術監督として活躍するポール・カラン。その彼が、「これは『リトル・マーメイド』の大人版。しかもおとぎ話の形で描こうということになり、それなら『不思議の国のアリス』を彷彿させるものにしようと思った。それゆえ、若い人たちやオペラ初心者にもぜひ観てほしいメッセージが込められている」と語っているほど。期待せずにはいられません。
第1幕は、ステージに家のセットが持ち込まれ、ルサルカが人形と遊ぶシーンから始まります。
わかりやすい作品というより、いろいろな角度から楽しめる要素が盛り込まれているといった方が正確でしょうか。たとえば昨今はサラ・ブライトマンやP!NKを筆頭に、シルク・ドゥ・ソレイユを参考としたアクロバティックなパフォーマンスを取り入れるシンガーが増えていますが、『ルサルカ』での幻想的な演出法は、この先カイリー・ミノーグのような美意識の高いアーティストも、ステージングの参考にしたくなると思います。しかも、『ルサルカ』は、何度も観に行きたくなるような作品に仕上がっているのです。
かなり傾斜のある舞台なのにも関わらず、ベッドをクルクル回しながら歌い踊る森の精たち。
ストーリーや音楽の話に進む前に、コンサートでも演劇でも、つい舞台セットや仕掛けに目が行ってしまう私は、まずそのセットに驚きました。オペラの舞台は、観客が見やすいようにとステージの後方を高くした傾斜面になっていることが多いのですが、そんな斜面にも関わらず、何台ものベッドをクルクル360度に回転させながら踊る森の精たち。見事です。映像を使った神秘的な森のシーンはもとより、魔法使いがマジックそのままに舞台から突然消えるなど、視覚的に魅了されるシーンが次々と繰り広げられます。新国立劇場ならではの最新装置も活用し、正直、字幕に気を取られ過ぎていたら、大事な瞬間を見逃してしまうのでは、と思ってしまうほどの展開の早さです。
水の流れを表現するのに映像を使いながら、神秘的な森の場面が展開されていきます。
オペラ『ルサルカ』の情報はこちら→http://www.atre.jp/11rusalka/
Photo:新国立劇場オペラ『ルサルカ』(2011年) 撮影:三枝近志
*To be continued

音楽&映画ジャーナリスト/編集者
これまで『フィガロジャポン』やモード誌などで取材、対談、原稿執筆、書籍の編集を担当。CD解説原稿や、選曲・番組構成、イベントや音楽プロデュースなども。また、デヴィッド・ボウイ、マドンナ、ビョーク、レディオヘッドはじめ、国内外のアーティストに多数取材。日本ポピュラー音楽学会会員。
ブログ:MUSIC DIARY 24/7
連載:Music Sketch
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