シャーデーの歌声と比較されている、Rhyeとは?

最近買ったCDの中でも愛聴しているのは、発売直後の3月6日に購入したRhye(ライ)のデビュー・アルバム『WOMAN』。本当に楽しみで店着日を確認していたほどなのに、近所のタワーレコードではクラブミュージックのコーナーに置かれていたため、クラブ系と思っていなかった当初はなかなか見つけられなくて(笑)。FIGARO読者はクラブミュージック=ダンスミュージックと思ってしまうかもしれないけど、これはヴォーカル・アルバムとも呼べる内容でオススメ。


Rhyeを最初に聴いたのは「The Fall」。ヒットしていた頃からシャーデーの歌声と比較されることの多い"男性ヴォーカル"で、確かにその柔和な美声には驚かされるほど。


このRhye(ライ)は、カナダ出身のシンガー/プロデューサーであるマイク・ミロシュと、デンマーク出身のエレクトロ系のプロデューサー/アレンジャー/ミュージシャンであるロビン・ハンニバル・ブラウンによる2人組。

130410_music_01.jpgあえて顔を出さないRhyeの2人。


マイク・ミロシュは、ミロシュ名義でソロ・アルバムを3枚ほど発表し、ロビンもユニットで活躍しながら、ロビン・ハンニバル名義でもEP『Bobby』(2011年)でソロ・デビュー。レコード会社やネットからの資料によれば、ロビンが参加していた男女ユニットQuadronのリミックスをミロシュが2010年に担当。そこで意気投合し、コペンハーゲンとLAを行き来しながら曲作りとレコーディングを2012年からスタート(ロビンはコペンハーゲン在住、ミロシュはベルリン在住らしいが・・・)。そして、ファースト・シングルにもなった1st EP『The Fall』を発表したところ、イギリスのThe Guardian紙やNME誌、Mojo誌で絶賛され、BBC Radio 1にてRecord Of The Weekに輝くなどして脚光を浴びるようになった。


余談ながらイギリスでは、クラブシーンを席巻しているSBTRKTのゲストヴォーカルとして注目され、ソロ・デビューも果たしたジェシー・ウェアの人気が変わらず高い。また、彼女と同じPMRレコーズから登場し、UKガラージやダブ・ステップなどを軽やかなサウンドでオシャレに展開する、ガイとハワード・ローレンス兄弟によるディスクロージャーや、彼らとのコラボでも注目されている、90 年代風R&Bと最新のUKクラブサウンドをミックスさせたアルーナジョージなど、R&Bとクラブミュージックの融合が目につく。RhyeのミロシュもロビンもR&Bが好きだったといい、こういったサウンドに辿り着くのも自然の成り行きだったのかもしれない。


「The Fall」の楽曲はこちら。映像は好きでないので、ここにはアップしません(笑)。本人たちもNPR newsでのインタビューで、次のように語っている。


「楽曲に集中してほしいから映像に入り込みたくなかった。(中略)有名人になることを目的とせずに、音楽を創ることに何か意味がある。これは僕たちにとって、より価値のあることだと思うんだ」(ミロシュ)


Rhyeのデビュー曲「The Fall」。
https://soundcloud.com/rhyemusic/02-the-fall

ミロシュは自分の声質が女性に間違えられることに関しては次のようにNPRで発言。
「個人的には、自分が女性のような声をしているとは思ってないよ。多くの人がそう思ったのは理解できる。たぶん声が柔らかいから、すぐに何か女性的なものと結びつけたんだろうね。それはそれで良いんだ。別に僕が非難されているとか、そういうことではないからね。でも、みんなが女性だと思ったというのは興味深い。本当は全く違うからね」


Rhyeの楽曲が魅力的なのは、ミロシュの繊細で官能的なヴォーカルに加え、それに合うようにオーガニックな生楽器が組み合わされていること。CDに記載されている参加ミュージシャンの楽器クレジットを見ると、フルート、サックス、クラリネット、トランペット、トロンボーン、フリューゲルホルン、ヴィオラ、ハープ、ギター、ベースといった楽器名が数多く並ぶし、もちろんそれ以外の楽器は2人が演奏している。とにかく実際に耳にしていて、その音色が優しい。


アルバム『WOMAN』のオープニングを飾る「Open」。
https://soundcloud.com/rhyemusic

「例えば 『Open』を聴いてみると、おそらく80から120ものトラックからオーケストラアレンジがなされているんだ。ハープでしょ、クラリネットもバスクラリネットがあったり、3種類のフルート、3種類のサックス、それにヴィオラ、ギターなど。(散らかって聴こえないのは)、すべてはアレンジだから。本当のアレンジというのは対位旋律の場所を選んで、ダイナミクスを作り上げて、緊張感を演出するもの。そして、それをまた解放させるというふうにね」(ロビン)

名曲「Open」には既にリミックスが多く出ていて、その中でもRyan Hemsworth Remixは好きなひとつ。


夜明けを告げるような、優美で爽やかなオーケストレーションで幕を開ける「Open」は、ミロシュのシルキーな歌声とどこまでも溶け合い、実に美しい楽曲になっている。2曲目の「The Fall」では軽快なピアノの伴奏が心を弾ませ、ディスコのファンキーなテイストを含んだ「Last Dance」や「Hunger」、イントロのハープの旋律から鮮やかにダンスビートへと導いていく「3 Days」など、70、80年代を想起させるような懐かしさの中に、選び抜かれた音のレイヤーと今の時代ならではのビーツが息づいている。終盤はミロシュの美声を重ねて最大限にその魅力を引き出した「Major Minor Love」や、ホーンセクションと響きあう「Woman」など、心を洗ってくれるようなナンバーが印象的。シンプルで、直情的ながら詩篇のように響く歌詞も心に残り、全10曲というコンパクトな長さからか、何度も繰り返し聴きたくなるアルバムになっている。

130410_music_02.jpgヴォーカルとオーガニックな音色に惹き込まれるデビュー・アルバム『WOMAN』(輸入盤)。


このRhyeのデビュー・アルバム『WOMAN』は輸入盤としてCD店などで購入可能。iTunesでも試聴できるので、ぜひチェックしてみて下さい。

*文中のRhyeの発言はすべてNPR news(2013年3月)から引用しています。

*To Be Continued

音楽&映画ジャーナリスト/編集者
これまで『フィガロジャポン』やモード誌などで取材、対談、原稿執筆、書籍の編集を担当。CD解説原稿や、選曲・番組構成、イベントや音楽プロデュースなども。また、デヴィッド・ボウイ、マドンナ、ビョーク、レディオヘッドはじめ、国内外のアーティストに多数取材。日本ポピュラー音楽学会会員。
ブログ:MUSIC DIARY 24/7
連載:Music Sketch
X:@natsumiitoh

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